第83話 理想の恋人を作ろう! その1
そんな訳で俺は動画撮影の為、二人のゲストを事務所の一室に呼んでいた。そのメンバーとは……。
「それじゃあ二人とも、自己紹介お願いしまーす」
「はい! 皆さんのハートを癒します! カレン・ストーリーです!」
「どうも、基山伊吹です。お願いします」
カレンさんといぶっきーである。意外な組み合わせかもしれないが、俺はこの企画を思いついた時から、絶対に二人を呼びたいと考えていたんだ。
「そしてルイです。いやぁ……二人とも忙しいだろうに、集まってくれて本当にありがとう! 助かったよ!」
最初に俺は、左右に座っている二人にお礼を言った。そしたら俺の右隣に座っているメルヘンな格好のカレンさんは、大げさに首を振ってみせて。
「いえいえ! 私、久しぶりにルイさんと会えて嬉しいです!」
「そう言ってくれて嬉しいよ……そしていぶっきー。こうやって対面で会うのは初めてっすよね?」
次は左にいる彼女に視線を向ける。そこには黒髪ショートで、白のシャツにネクタイを付けた、クール系美少女が座っていたんだ。何を隠そう、この方がいぶっきーの中の人である。童顔だったのは少し意外だったけど、それ以外は本当にキャラのイメージ通りの人なんだよな……そして俺の言葉に、いぶっきーは口を開いて。
「ですね。シュプラで組んだチームルイで焼肉行こうみたいな話になってましたけど、結局行けませんでしたから……」
そう。彩花とのゲーム対決の後、チームのみんなでご飯行こうみたいな話にはなっていたけど、全員が集まれるタイミングが中々無くて……あやふやになってしまっていたのだ。
「まぁー、あの時はライブの練習とかあって、みんな忙しかったそうだったから……また全員が落ち着いた時、集まって行きましょう!」
「はい、そうですね。ルイさんの奢りで食べるの楽しみにしてます」
「あ、覚えてたんすか……多分いぶっきーの方が稼いでると思うんですけど」
「あははっ。面白いこと言うじゃないですか」
いぶっきーは上品に口元を押さえて笑うが、目は全く笑ってなかった……こわ。
「……じゃあ早速本題に入りますけど。今回は冒頭で言った通り、レイが募集してるお便りコーナーに俺らがこっそりと応募して、配信内で採用された人が勝ちって企画をやりたいと思います!」
「おおー! 面白い企画ですね!」
「初っ端から濃い企画ですね……ルイさん、動画撮るの初めてですよね?」
いぶっきーは驚きと呆れと関心が混ざったような表情を見せる。一応事前には動画の撮影に協力して欲しいとだけ言っていたが、その内容までは深く話していなかったのだ……万が一、彩花に伝わったらいけないからね。
「そっすね……まだ、歌の動画とか出す勇気は無くて。あとこの企画は配信でやったら、成立しなくなると思ったから、こうやって動画でやろうって思ったんですよ!」
「確かに、配信だと出来なさそうな企画です」
「でも、最初の動画にレイさんを選ぶなんて、本当にお二人は仲が良いんですね!」
カレンさんは笑顔で俺に言う。そんな悪意0パーセントのカレンさんの言葉に、俺はどう答えたら良いか分からなくなって……言葉に詰まってしまうのだった……。
「…………あ、うん、そうだね……?」
「……動画だと変な空気になってもカット出来るから便利ですよね」
「だね、いぶっきー……これに慣れたら、配信出来なくなるかもしれないや……」
「ふふっ! じゃあ、もっとレイさんについて聞いても良いんですか?」
「それはやめてぇ!」
──
「……で、なんでこの二人をこの企画で呼んだのかって言うと……理由は単純。レイのことが好きそうだったからですね。だからレイの好みとか知ってそうだから、お便りに採用されやすい文章を書いてくれるんじゃないかって思って……」
……そこまで言うと、二人は何だかモジモジした様子で言葉を発して。
「ま、まぁ……レイさんのことは大好きですけど!? ライバー1詳しい自信はありますけど!?」
「……とりあえず。よくぞ私を呼んでくれた、とだけは伝えておきます」
……まぁ。俺の目に狂いは無かったらしい。
「良かったっす……で、今回レイは架空の恋人とのエピソードを読んでいくって配信をするらしくて、そのエピソードの内容をリスナーから募集してるらしいんだ。お便りの条件はただ一つ……創作であること」
「まーたレイは変な企画してますね……?」
「じゃあ私達が理想のエピソードを作って、応募すればいいってことですね!」
「そう! あとレイが好きそうな恋人のキャラも作り上げれば、尚グッドだね!」
言いながら俺は、二人にお便りの下書き用のスケッチブックとペンを渡していった。そこでいぶっきーはこんな疑問を投げかけてきて。
「ちなみにどうしてレイはそんな企画を?」
「バレンタインが近いかららしいです。あと独り身の人でも楽しめるようにって」
「流石レイさん、優しいですね!」
「そうか……?」
若干……というか相当、カレンさんはレイに対して評価が甘い気がする。本当にアイツのこと好きなんだろうな……つーか何で俺はアイツが好かれていることを知って、ちょっと嬉しくなってるんだ? だいぶキモいぞ俺、撮影に集中しろ……。
……そして俺らは軽い雑談をしながら、理想の恋人とエピソードを書き連ねていった。まぁ俺は前から時間があったから、大雑把には考えていたけど……それでも綺麗にストーリーに落とし込むのは、かなりの時間を要すことが予想出来た。
「……でも、いざ考えるとなると難しいですね。理想の恋人だなんて、今まで考えたことありませんでしたから……」
いぶっきーは独り言のように言う。確かに恋愛とかには全く興味なさそうだもんな。まぁオタクを安心させる為の言葉かもしれないが……いぶっきーって正直な人だし、その可能性は限りなく低いだろう。
「まぁ、そうっすね……理想の恋人もイケメンとか金持ちとかの要素が入るだろうけど、現実を追求し過ぎると話がつまらなくなりますもんね……」
……とここで俺の言葉を遮るように、カレンさんがスケッチブックを机に置いて。元気良く手を上げて。
「……はい、出来ました!!」
「早っ!」
「凄いです、カレンさん。参考までに見せていただけませんか?」
「もちろんです!」
カレンさんは笑顔で頷いて、俺らにスケッチブックを見せてくれた。そこにはデフォルメされたショタキャラのイラストと、横に設定とエピソードが書かれてあって……。
「まずですね……この恋人の名前は
「犬光シャイニー!!??」
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