第81話 ルイレイてぇてぇw

 ──


「の、残り800ポイント……もうだめぽ……」


『ラーメン取ってんじゃネーヨはげ!!』

『だいぶ減ったなぁ』

『とりあえず落ち着け……いや、もちつけ』

『ぽまえらおちけつ!!!!』

『コメントがおっさん臭くなってきたなww』

『現在の戦利品……ルイのアクスタ、以上』


 それから頭がぶっ壊れた俺は、スカサンとは全く関係のないラーメンセットを狙ってみたりしたものの、当然取れるはずもなく……ただいたずらにポイントを消費するだけであった。


「しかしどうしようか……このまま終わる訳にもいかないし……」


 案件をやる前の打ち合わせでは、本当に自由にやってもらっていい、時間も多少なら早く終わってもいい、景品もコラボじゃないやつも狙っていいよとは言われていたが……流石にこのまま終わるのはダサすぎるよな……。


「やっぱり……もう一度。レイのフィギュアに挑戦するべきだよな?」


『そうだよ』

『レイから逃げるな』

『今度はこっちが漁夫ればええんや!』

『呂布だぞ』

『劉備ね』

『曹操な?』

『カルマな』


「久々に見たわそのテンプレ……とにかく、俺は漁夫もしない。最初から自分の力だけでゲットするんだ!」


『おお~w』

『かっこいい』

『でもそのポイントじゃあなぁ……』

『なら運ゲー行こう』


「運ゲー? もしかしてたこ焼きのことを言ってるのか? 確かに俺、初心者向きの設定みたいなことは言ったけど……あれって沼ったらマジでポイント溶けるからな」


『草』

『詳しいですね』

『初心者にそんなもの進めようとしたんですか!?』

『たこ焼きはハイエナ多いぞ』


「詳しいですねって……コソ練してた時、散々溶かされたからな」


 そんなことを言いながら、俺はたこ焼き設定のレイのフィギュアをクリックした……そこは今までの画面とは打って変わって、たこ焼き器と大量のピンポン玉が入った箱が置かれていたんだ。この設定を知らない人が見たら、相当異質な空間に見えるだろう。


「……でもまぁ。このポイントで取るのなら、やるしかないよな」


 そして配信でこの設定をやるのは初めてなので、俺はみんなに軽く説明をしていくことにした。


「このたこ焼きって設定は、ピンポン玉を取って、それをたこ焼き器の当たりの穴に入れたらゲットになる設定だ。穴が18個あるから18分の1の確率に思えるけど……ピンポン玉が取れなかったり、穴と穴の間にハマったりすることもあるから、全然そんなことないんだよなぁ……」


『草』

『ネガキャンか?』

『案件やぞ』

『でも一発で取れるチャンスがある設定はこれだけだぞ!』


「そうだな。ワンチャンがあるのはこの設定だけだし。それにたこやきでもアシストはあるからやる価値は十分にあるよ……よし、じゃあ行くぞ? まずはピンポン玉を取って……」


 そして俺はポイントを入れ、クレーンを操作し、ピンポン玉を一つすくい取った。


「よし。これがあそこの赤い穴に入れば景品がゲットになって………………あっ」


 ……とルイ民に説明している間にアームは開き、落下したピンポン玉は、跳ねて跳ねて……綺麗にその赤いマークの付けられた穴にすっぽりとハマったんだ。そして画面には景品ゲットの表示が現れて……。


『あ』

『あっ』

『え』

『は????』

『草』

『うそだろ』

『やっぱ持ってるわお前wwww』

『ええええええええええええ!!!??』

『チートだろ!!!』


 そして異常なほど高速で流れてくるコメントを見て、自分が一発で取ったことを自覚した俺は……目を見開いて。


「…………や、やったぁー!!!! レイ取ったぞー!!??」


『ヤバすぎwww』

『おめ!!!!!』

『おめでとう!!』

『ホント配信の神に愛されてるよお前はwww』

『8888888888888』

『レイ:凄い!! 嬉しそうで何よりだよ~!』


 そこでレイのコメントが目に入ってきた俺は、少し正気を取り戻して。


「なっ……別に!? そこまで嬉しくねぇし!?」


『草』

『そんな嬉しそうな声出しといてそれは無いだろww』

『もう誰が聞いてもバレバレの嘘やめろよ!』

『それ聞いてレイちゃんが悲しんだらどうするの?』

『いい加減素直になれって』


 更にそんなコメント達が目に入ってきた。まぁ……こんな神展開引けたのは、レイのお陰でもあるし。たまには配信上でも、素直に感謝するべきかな……そう思った俺は小さな声で、レイにお礼を言ったんだ。


「…………でもまぁ。レイも配信見に来て、応援してくれてありがとな?」


『言えたじゃねぇか……』

『デレがあるからツンデレなんだよなぁ……!』

『てぇてぇなぁ……』

『レイ:w』

『レイちゃん単芝生やしてて草』

『急に裏切られてて草』


「……っておい!! 単芝生やすな!!!! やっぱレイ嫌い!!!! 転売してやる!!!!」


『w』

『w』

『w』

『w』

『きっとレイちゃんも照れてるんだよw』

『お似合いカップルですねw』

『ルイレイてぇてぇw』


「だあああああああああああ!!!!」


 ──


 ……そしてエンディング。トップページに戻った俺は、締めの言葉を発していた。


「じゃあ、キリもいいのでこの辺で放送は終わりだ! えっと最後に……現在めちゃとれはスカイサンライバーと絶賛コラボ中で、限定グッズも当たるキャンペーンも実施中! 詳しくは概要欄のURLをチェックだ!」


『ゴリゴリ台本読んでて草』

『視線が下ですよ』

『公式のルイ出たわね』

『まだちょっと興奮気味で草』 


「じゃ、以上、ルイの放送でした! おつルイ!! ふへへへへっ!」


『乙』

『おつ!』

『笑い方よwww』

『おつかれ!』

『届いたら教えろよ?』

『レイ:おつルイ!』

『おつルイ』

『おつルイ!』

『今日はみんな素直で草』

『いつも通り神回だったな』

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