第79話 ルイのアクスタ、ゲットじゃぞ

 そして迎えた当日。俺は台本を片手に案件配信を始めていた。


「どうも皆さんこんルイ、スカイサンライバー所属のルイ・アスティカだ。今日はめちゃとれ様の案件ということで、オンラインクレーンゲームをプレイしていくぞ!」


『きちゃー!』

『よぉ』

『こんルイ~!』

『こんレイ!!』

『今日は何時にも増して元気だな』

『案件来たんだね~』

『案件おめでとう!』


 とりあえずオープニングということで、俺は適当にコメントを拾っていく。


「今日は元気だなって、思ってても言うんじゃありません……これでも俺緊張して、背筋ピーンってなってるんだからな? 案件おめでとう……おお、ありがとな。思った以上に来てくれる人が多くて嬉しいぞ!」


 案件ということで、いつもより来てくれる人が少なかったらどうしようと、ちょっとだけ心配していたが……それも杞憂に終わったようだ。現在配信には2000人近くの人が集まっていた。


『お前の配信なら全部見るよ』

『あのルイが案件とはね……』

『放送事故常連のルイがなぁ』

『驚きだわぁ』


「まぁ俺も驚いてるよ。まさか案件を頂ける立場になるなんてな。ホント全ての人に感謝してるよ……もちろん、ここまで大きくしてくれたお前らにもな?」


『感謝します』

『えへへ』

『ツンデレ助かる』

『は? 仕事貰ったのはお前の実力あってこそだろ』

『謙遜すんな、お前が面白いから見てるだけだっての』


「……言うてお前らの方が何倍もツンデレなんだよなぁ……」


 言いながら俺はサイトに飛んで、オンラインクレーンゲームのトップページを表示させる。そこにはピックアップされた景品がズラーっと並んでいたんだ。


「ほい、ここがめちゃとれ様のサイトだ。テンション上がってきたな……で、ここに見える通り、俺は事前に2万ポイントを貰っていたんだ。そして取れたやつはマジでくれるみたいだから、本気で狙っていくぞ?」


 そして俺は画面をスクロールさせて、様々な景品を見ていった。


「さて、じゃあまずはラーメンセットでも狙っていこうか……おっとこれはぁ!? なんと、スカサンコラボ特設エリアが出来てるじゃないか!!」


『草』

『草』

『うるさい』

『白々しいなぁw』

『テンションどうした』

『案件テンション』

『慣れてなくてかわいい♡』


 続けて俺はわざとらしい声を上げながら、カーソルを荒ぶらせて。


「さて、どんなグッズがあるのか……なっ! なんと、ルイのアクリルスタンドがあるじゃないか!! これは取らない理由が無いだろ!?」


『端にあるのによく見つけたな』

『知ってたんでしょ』

『ルイは入念にリハーサルやってそう』

『何気にルイの初グッズでは?』

『えー、正直買いです』

『買えねぇんだってば』


「そうそう、これらグッズは全てめちゃとれ限定の商品となっているから、欲しい人は今すぐ……いや、俺がプレイ出来なくなるかもしれないから、俺の放送後にやってくれよな!」


『草』

『スナイプしていいの?』

『ルイの台をハイエナしても良いんですか!?』

『まぁルイは上手いらしいから、ルイ民に奪われることはないだろ』

『フラグじゃん』


「勝手にフラグ立てるんじゃない。じゃ、早速プレイしていきたいと思うぞ……おお、色々な台が選べるんだな。横ずらし、前落とし、橋渡し、ペラ輪、たこ焼き……たこ焼きは運ゲーだからクレーンゲーム苦手な人にはありがたい設定かもな!」


 事前に確認していたため、様々な遊び方でプレイが出来ることは知っていた。クレーンゲームが苦手な人でも楽しめることをアピールしつつ、俺はこう宣言する。


「だが俺は運ゲーには頼らない……コソ練していたからな!」


『草』

『自分で言うのか……』

『頼れよ』

『実力のルイ・アスティカを見せてくれ』


「……おっ、ルイ調べで一番取りやすいとされる、缶バッチの設定があるじゃないか!」 


 そして缶バッチ設定のルイのアクスタを見つけた俺はクリックして、クレーンゲームの画面に遷移した。そこには缶バッチの山……奥にはサンプルであろう俺のアクリルスタンドの画像が貼られていたんだ。


「おっ……俺だ!」


『草』

『草』

『もう一人のボク!』

『ルイとルイが見つめてる』

『ここ哲学』


 それから俺のアバターを移動させて、背景と重ねる小ボケをかました後……俺は『予約する』ボタンを押して、その台をプレイすることにしたんだ。


「で、この設定はバッチを一個でも取れたら景品ゲット扱いになるらしいぞ……こんなのボーナスステージだな。こんなのは山のてっぺんをすくってやって、ナイアガラ落とししてやれば良いんだ!」


『データキャラになったのか?』

『ほーらすぐフラグ立てる』

『口だけならなんとでも言える』

『じゃあやってくれ』


「信じられないならやってやるよ。ほら、まずはここの重なっている部分を狙ってだな……」


 言いながら俺はボタンをクリックしてアームを動かし、キャッチボタンを押した。するとクレーンは狙った場所に下降していき、盛り上がった場所を上手くすくい取ったのだが……どうやら落下する手前に反り立った壁があったようで、その流れてきた缶バッチをせき止めたんだ。


「……なるほど。ストッパーがあるのか、気づかなかった……小癪だな!」


『草』

『草』

『ボクのデータに無いぞ!?』

『データキャラやめちまえ』

『※案件中です』


 案件ということを思い出した俺は、再度言葉遣いに気を付けて……。


「ああ、ごめん取り乱した……だけどストッパーがあるのなら、手前にあるバッチを持ち上げて、はみ出した所を押せばいい……つまり押せばおkってことだ!」


『草』

『KYM!?』

『誰が伝わるんだよそのネタはww』

『おっさんホイホイ』


「じゃあまずは持ち上げて、だ……」


 そして俺は手前にある缶バッチに狙いを定め、アームを下ろす……が、上手く掴めずそのまま上昇して、元の位置に戻っていった。


「持ち上げて……」


 もう一度狙ってみるが、さっきと同じように掴めずに戻っていく……そんな展開が何回も続いていったんだ。俺はポツリとこう口にしていて……。


「……あんまり言わないようにしてたけど、ちょっとアームが…………アレかもな」


『どれだよ』

『貧弱貧弱ゥ!』

『作戦を変えてみるんだ』

『お金返して~や~!』


 言いながら何度もプレイ続けるが、未だ一度も掴めずにいたんだ。このままじゃヤバいと、ちょっと焦りかけてたその時……。


「なっ……アシスト!?」


 画面にカットインが入った後、『アシストします!』と書かれたプラカードを持った店員さんが画面に映ってきて。台に缶バッチを追加して、盛り上げてくれたんだ。ちょ、こんなに盛ったら触れただけで落ちるんじゃ……!?


『ブチッ』

『神の手キタアアア!!!!!!!』

『ゴッドハンド!!』

『やさしい』

『盛り過ぎだろwww』

『ルイルイ盛るカー』


「あ、ありがとうございます、マジ神……!!」


 お礼を言いながらそのままアームを下ろす。その下ろしている最中の振動で、積まれた缶バッチは落ちていき……そして画面には景品ゲットの表示が現れたんだ。しばらく俺は何も言わずに画面を見つめて……。


『草』

『シュール』

『おいゲットしたぞ、喜べよ』

『なんか言え』

『お上手ですね。』


「…………えー。めちゃとれ様は、こんなイキったカスにも優しくアシストしてくれるのでマジでオススメです。それじゃあみんなも……ルイのアクスタ、ゲットじゃぞ」


『草』

『草』

『オーキド!?』

『なんで終わろうとしてるんですか?』

『締めに入るな』

『よし、次行こう!』

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