3章

第78話 初めての案件!

 ──

 

 年も明けて1月。やっとライバー生活にも慣れてきた俺に、嬉しいお知らせが。


『なんと……ルイ君に案件が来ました!』


「えっ……本当ですか!? ドッキリじゃないですよね!?」


 俺の言葉に、電話越しのネモさんは『本当ですよ! やりましたね!』と一緒に喜んでくれたんだ。いやぁ……ついに俺にもお仕事が来るとは、感激だなぁ……! 続けて俺は、ネモさんに内容を尋ねていって。


「それでどんな案件なんですか? ソシャゲか、食べ物か、それともコラボカフェとか……! もしかしてルイの特製ラーメンとか出たり……!?」


『落ち着いてくださいルイ君、まだ何も言ってないじゃないですか……なんか最近もこの流れやりましたね。ルイ君は話を最後まで聞くことを覚えましょう』


「あっ、ハイ。すみません……」


『あと私もラーメン系来るかなーって思ってましたけど、まだ来てませんね? ルイ君の信用が足りてないんでしょうか?』


「そ、そうかもですね……」


 悪意のないネモさんの言葉に、俺はグサァっとダメージを受ける。確かに食品系はイメージが大事だと聞いたことがあるが……ま、まぁ。一旦それは置いといてだ。俺はネモさんの次の言葉を待った……。


『えー、それで今回来た案件はですね、オンラインクレーンゲームの案件です』


「オンクレ……!」


『はい、いわゆる家で出来るUFOキャッチャーのことですね。そこでコラボとしてスカサンのグッズが置かれるそうなので、誰かクレーンゲーム上手なライバーに頼みたい……という訳でルイ君の元にお誘いが来ました』


「本当ですか! まぁ……めちゃくちゃ得意って訳でもないんですけどね?」


 ゲーセン通ってた頃は、ちょくちょくやってたけれど……どっちかと言うとゲーセンでは、音ゲーとかメダルゲームで時間潰してた人だからさ。……まぁでも。


「でも、抜擢されたからには頑張りたいです! 練習しときますね!」


『はい、頑張ってください。あと……これは勝手な私の憶測ですけど、今回ルイ君が抜擢されたのは、レイちゃんの力もあるんじゃないかなーって思ってるんですよ?』


「えっ、どういうことですか?」


『ちょっと前にレイちゃんが配信で言ってたんです。「ルイはクレーンゲームがとても上手で、私の分のフィギュアも取ってくれた」って。それを耳にした案件先の方が、ルイ君を選んだって可能性は十分に考えられると思いますよ?』


「へぇ……マジですか」


 それが本当にその通りだったら、彩花からチャンスを与えられたことになるぞ。まぁその審議はともかく……アイツに感謝をしなきゃいけないかもな。


「……でも、下手くそなレイがやって、全然景品が取れないってのも、美味しい展開だと思いますけどね?」


『それも分かりますが……やっぱり取れた所を見せたいんじゃないんですか? その配信を見て、やってみようと思う人が多いほうが、案件としては成功ですし』


「なるほど……」


 案件は面白いだけではいけないのか……勉強になるよ。そしてネモさんは資料か何かを見ながら電話をしているのか、何回かのマウスクリックの音の後に。


『あー、それとですね、スカサングッズの中にレイちゃんのフィギュアがあるそうですよ? ちなみにこれ、目玉商品らしいです』


「ええっ!?」


 つ、ついに出るのかよ……アイツのフィギュア……!! ……これ絶対配信で取る流れになるよなぁ。一瞬でも美味しい展開だと思ってしまった自分が憎いぜ……。


『しかもオンクレ限定だそうですから、結構価値があると思いますよ』


「ああ、えっと……一応聞きますけど、俺のグッズって……?」


『んーと……見当たりませんね?』


 ……ズコーーっ! そんな、コラボグッズも出ないライバーに案件させるって言うのかよ……!? いや、正直それはそれですげぇ面白いけども……!!


『……あ、ごめんなさい。嘘つきました、ルイ君はアクリルスタンドが出るみたいですよ。あの立たせて飾るやつですね』


「あ、ホントですか、良かった……ちなみに何種類ですか?」


『一種類です』


 うん……知ってた。でも一つでも俺のグッズがあったのは良かったよ。俺の景品を取りまくって、視聴者プレゼントとか企画してみようか……それともロビンとか安藤先生とか、彩花にも送ってあげようかな……迷惑かな?


『……それでちゃんと聞いてませんでしたけど、ルイ君はこの案件を受けてくれますか?』


「あっ、はい! それはもちろんですよ! 俺はどんな仕事でもやりますから!」


『良かったです。では詳しい話は後日にしますので、よろしくお願いしますね』


「はい、ありがとうございます! 失礼いたします!」


 ……そして電話を切ろうとした直前に、ネモさんの返事が聞こえてきて。


『はい、失礼します。あと……今年もよろしくお願いしますね! ルイ君!』


「……はいっ! 今年もクソ迷惑掛けると思いますけど、よろしくお願いします!!」


 俺の言葉にネモさんは『ふふっ』っと可愛らしい笑い声を上げて、通話は切れるのだった。そのまま俺はパソコンの前に座って……。 


「せっかくお仕事貰ったんだし……今から自主練でもしようかな?」


 そして検索して、オンラインクレーンゲームのサイトに飛ぶのだった。一時間後、数万の貯金が消えるとも知らずにね……。


 ──

 ──


 ルイとレイがダンジョンを探索する番外編を書き始めました。興味のある方はこちらからどうぞ~! https://kakuyomu.jp/works/16817330653939809856

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