第70話 ルイのクリスマス配信 その1
──あれから何日か経って、迎えたクリスマス当日。俺は『新衣装のお披露目すっぞ、クリスマス配信』とタイトルを付けた配信を開始させていた。コメントに目を通しながら、マイクに向かって挨拶をする。
「よーっす。みんなメリクリー」
『よお』
『こんるい』
『こんルイ!!』
『寂しそうだから来てやったぞ』
『待ってたぞ!! 早くデート結果報告してくれ!!』
『レイちゃんとどうなったんですか!!!!!!』
『キスしましたか????』
そしたら挨拶に混じって『レイとのデート』結果について聞いてくるコメントが大量に流れてきた。これをスルーしたままだと、ずっと似たようなコメントが流れてくるだろうと判断した俺は……まぁ、拾わざるを得なかった訳で。
「……だぁーっ!! うるせぇー!! そんなに気になってたのかよ、お前ら?」
『うん』
『うん』
『待ってた』
『答えようによっては同人誌行きやぞ?』
『ルイレイはガチ感あって一番面白いんだよなぁ』
「ああ、そうかよ……じゃあお前らに軽く報告するけど、本当に俺らは買い物に行って、ちょっと遊んだだけだぞ。それ以上のことは無い」
そう報告すると、コメントは疑いの目を向けてきたようで……。
『審議中……審議中……』
『ペロッ……これは嘘を付いている味や!!』
『ほんとぉ?』
『遊ぶ(意味深)』
『何も無かったら無かったで悲しいなぁ……』
『レイちゃんも言うだろうから、そこで答え合わせしよう』
「どうして疑うんだっての……まぁ。プレゼントは貰ったけどな?」
そしたらコメントは一気に食い付いてきて。
『なにっ!?』
『どんなの??』
『おせーて』
『見せてくれ!!』
言ってもいいのかなぁ……でも、ここで黙ったら面倒そうだし。彩花もあまり隠さなくていいって言ってたから、貰った物を言うくらいなら許してくれるだろうか? ……そう思った俺はこう口にした。
「ああ……貰ったのはクローバー型のネックレスってか、ペンダントってやつだ。結構高そうな物貰ったから、お返しも用意しなきゃって思ってるんだよ」
言うと案の定、コメントでは考察が始まったようで……。
『ほう……』
『ペンダントですか……たいしたものですね』
『輪になってる贈り物は永遠を意味するんだぞ!!』
『ネックレスは独占したいって気持ちが現れてる証拠じゃない?』
『クローバーなら幸運ってことか?』
『希望、幸福、信仰、愛情って意味らしいぞ』
『愛!?!?!???!?!?』
「ほーら、お前らの悪いとこ出たぞ。すぐにネットで調べて、その情報を鵜呑みにするのは、浅はかだと言わざるを……」
……と、ここで一つ気になるコメントが目に入ってきて。
『ちなみに四葉のクローバーの花言葉は『私を思って』とか『私のものになって』とかやぞ』
「……」
……それマジ? だったら凄いことになるけど……ま、まさかな……?
『おーい』
『あれ?』
『起きろー』
『喋らなくなっちゃった』
『図星ですか(メガネくいっ)』
「……ああいや、ちょっと気になるコメント読んでた。まぁ……プレゼントのことはもう置いといていいんだって。別にレイもなんとなくで選んだと思うしさ」
『高いものをなんとなくで選ばないだろ!?』
『ルイが思ってる数十倍はレイ考えてると思う』
『まーたラノベ主人公やってんのか?』
『愛してるって言え』
『レイちゃんは策士やぞ』
確かに……アイツが策士なのは俺も知ってるけど、花言葉とかまで考えて選んだとは思わないんだよな……本人に聞いてみるのは、流石に無粋だろうか? まぁ……この世には謎にしておいたままの方が良いこともある……ってね。
「……とりあえずこの話は終わっとくか。時間も無いし、本題に入らなきゃな」
『本題?』
『もしかして』
『新衣装か?』
『そういやタイトルに書いてたな』
『ここまで誰も気にしてなくて草』
『俺は気になってたぞ?』
「そう、今日は新衣装を貰ったからそれをお披露目したいと思うんだ。初めてだからどんなテンションで進めたらいいか分からないけど……勿体ぶっても仕方ないし、早速見せたいと思うよ」
実は彩花と遊んだ次の日にネモさんから連絡があって、新衣装を貰えるということを教えてくれたんだ。詳しくは聞いてないから、上手く説明するのが難しいが……何かめでたいこととか、イベントがあったら衣装が貰えるらしいぞ。ソシャゲのイベントみたいだな。
『新衣装どんなのだろう』
『わくわく』
『期待』
『デフォ衣装がカッコいいからハードル高いぞ?』
そして俺は画面を操作していって、事前に貰っていた冬服の衣装を表示させた……どうやら上手く変更出来たようで、配信上のアバターの衣装も変わっていた。
……ちなみにだがルイの新衣装は、黒のニット帽、赤いマフラー、白のコートを身にまとった、ちゃんとした冬服である。拡大しながら俺は左右に揺れて、喋ってみた……。
「ほい、どうだ? 似合ってるか?」
『かっけぇ!!!』
『ほんと顔は良いよなお前』
『オサレだな!!!』
『>ハイカラですね』
『悔しいけどかわいい……!!』
「まぁ、魔道士のローブの次がちゃんとした冬服ってのも面白いけどな。ひとまず冬の間はこれ着ておこうと思うよ」
『助かる』
『結局素肌は見れないのか』
『夏服に期待やね』
『ありがとうありがとう』
『最高やで』
『かっこよ!!』
ここで俺はコメント欄に目を通した……そしたらいつもと違って、色の付いたコメントが多く流れていることに気がついたんだ。思わず俺は変な声が出てしまう。
「……って、うおっ!? スパチャめっちゃ来てるな!? 嬉しいけど……俺的にはこの服デザインしてくれた人とかに渡してほしいんだけどな? ぶっちゃけ俺、貰っただけだし」
『確かにねw』
『でもルイのそういうとこ好きやぞ』
『とりあえずもらえるもんはもらっとけ』
『いつもありがとうやで~』
『ほらよラーメン代』
「まぁでも、くれるなら有り難く受け取っておくよ。サンキューな、ええっと……『ra-men_bakatinpo』さん」
『草』
『草』
『草』
『草』
『よりによってそれ読むのか……』
「いや別に俺は下ネタ耐性あるから全然読むけど……他ではやるなよ? じゃないとスパチャ閉じるからな」
『閉じるのか……』
『俺らにダメージなくて草』
『大ありやぞ』
『金投げれなくなったら困る』
『俺も下ネタネームに変えてくるわ!!』
「うん……というかさ。可愛い女の子にやって反応を楽しむのなら、百歩譲って分かるけど……俺なんかにやって何か意味あんの? お金大切にしてくれよ?」
『ある』
『あるぞ』
『もしかして需要ないと思ってる?』
『お金払ったら下ネタ叫んでくれるんですか!?!?』
『ルイにちん○んって言わせたい』
「はぁ……んなもんタダで言ってやるわ……あ、『ルイのおぱんちゅに転生したい』さん、赤スパあざます」
『草』
『草』
『草』
『草』
『うおおおおおおおおおおお!!!!!!』
『きたrあああああああああああ!!!』
『ありがとうおぱんちゅ!!!!』
「…………」
……何気なしに俺はモニターの右下を見ると『12/25』の日付が目に入ってきた。うん……あのさ……。
「……お前ら。今日ってクリスマスだぜ? 暗い部屋で、モニターの前に一人座って……俺の○んちんやパンツで盛り上がってて良いの? 悲しくない?」
『あっ』
『やめろ』
『やめやめろ』
『ルイ、やめるのだ。その術はボクに効くのだ』
『草』
『急に現実を突きつけないで!!』
『彼女と見てます!!!!!!』
『クリスマスにルイの配信に来てる時点でお察しだも!』
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