第71話 ルイのクリスマス配信 その2
「……でもさ。安藤先生の言葉借りるけど、クリスマスの過ごし方なんて人それぞれだし。一人でVTuberの配信見ようが、楽しかったら良いじゃないか。それに……俺だってルイ民のみんなが配信に来てくれるから、頑張れるんだからさ」
ちょっと言い過ぎたと後悔した俺は、フォローの一言を発した。もちろんこれは本心だし……リスナーのお陰で楽しい配信が出来ているってことは、みんなにも知っていて欲しかったんだ。で……コメントは俺に縋ってくるようなものが増えてって。
『る、ルイ……!!』
『そうだよな!! 一人でもいいよなぁ!?』
『優しいなお前……!!』
『みんなでいれば寂しくないもんな!!』
『口が上手くなってて草』
『ホストか?』
…………でもやーっぱり、余計な一言も言いたくなっちゃう訳で。
「……まぁ。本気で恋人作る努力をした人は、こんなとこにはいないと思うんですけどね?」
『は?』
『は?』
『あ?』
『涙返せや』
『やんのかおいコラ』
『……すぞ』
期待通りの反応してくれて、思わず俺は笑ってしまう。
「あははっ! それで今日はクリスマス配信なんてタイトル付けてるけど、やることはいつもの雑談だ。でもせっかくクリスマスなんだから、何かそれに沿ったトークでもしてみようかな?」
『おお』
『いいね』
『クリぼっちトークか?』
『メリークルシミマス……』
「そんじゃあ……ベタ中のベタな話だけどさ、みんなはサンタさんって何歳まで信じてた?」
そんな話題をみんなに振ってみると、コメントには大量の数字が流れてきて……。
『8』
『7かな』
『0』
『6』
『10』
『33』
『5ちゃい』
「……なんかビンゴ大会みたいだな」
『草』
『あ、すんませんリーチです』
『リーチの人は立ってください!!』
『ガタッ』
『ノリ良くて草』
それからも数字は流れていった。キリが良いところで俺は手を叩いて、それらをストップさせたんだ。
「……はい、そこまで。協力ありがとな。それで俺の中の持論なんだけど……サンタを信じていた年齢が高い人ほど、めちゃくちゃいい人ってのがあるんだけど……みんなはどう思う?」
『うーん』
『そうか?』
『どう思うと言われても……』
『ピュアなんだろうなとは思う』
『まぁ愛されては育ってそう』
コメントの反応は微妙だった……でも合ってると思うんだけどなー? 更に俺はコメント欄に目を通してみる……。
『俺は親から真実を突きつけられたぞ?』
『どうも友達にバラしてた側の人間です』
『高学年まで信じてたから多分合ってるよ』
『ええっ!? サンタさんっていないんですか!!??』
キッズも見てますと……流石に子供のフリをしたネタコメだよな?
「うーん……検証するには、ちょっとデータが足りないかもな。コメントはあんまり信用できなそうだし」
『は?』
『は?』
『ワシを……信じて……』
『ライバーの誰かに聞いてみたら?』
「ああ、なるほど。確かにライバーに聞いてみるのも良さそうだけど……今みんな配信してるよなぁ。それにクリスマス当日に電話するのも、ちょっと緊張するし……」
『何でだよwww』
『レイに聞け』
『レイちゃんに聞いて!!』
『レイちゃんと電話しよう』
「どうしてお前らはレイしか選択肢が出てこないんだ……?」
言いながら俺は『YooTube』を開いて、今配信をやっていないかを確認したが……どうやら彩花は、既に配信を終えていたみたいだった。
「あ、でも今配信やってないみたいだな。じゃあ……ちょっとアイツに聞いてみるか?」
『おっ』
『うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
『きたぁあああああああああ!!!』
『やったぁ!!!』
『正妻スタンバイ中……』
盛り上がるコメント欄をよそに、俺は彩花へと電話を掛けてみる……そしたら何コールか後に応答してくれて、オフっぽい彩花の声が聞こえてきたんだ。
『……ん、もしもしー?』
「もしもし、レイ。俺いま配信中だけど大丈夫か?」
『ああ、うん。大丈夫だけど、どうかしたの?』
「いやまぁ、今ちょっとアンケートみたいなことやっててさ……お前って、何歳までサンタさん信じてた?」
そう尋ねると彩花は考えるような声を上げて……。
『んーとね……中学生くらいまでかな?』
「……ん?」
『草』
『草』
『ピュア過ぎて草』
『かわいい』
『あざとい』
『ホントに!?』
……聞き間違いじゃないよな。中学生って13とか14とかだよな……マジ?
「……本当か? お前マジで言ってるのか?」
『うん、ホントだよ! ……あっ、でも中学って言ってもオーウェン中のことだよ!? 類と一緒の!』
「いや、それはみんな分かってるから大丈夫だって……」
焦るところそこじゃない気がするんですけど……でも何か段々と、マジっぽい気がしてきたぞ。小さい頃彩花に『サンタ確保作戦』の話を延々とされたのを、今になって思い出してきたからな……当時の俺は適当に流していたんだろうけど、そのせいでここまで信じてしまったんだろうなぁ……。
『で、聞きたいことってそれだけ?』
「……ああ、それだけだ。ありがとう、じゃあな」
『うん、じゃあね!』
そして俺は電話を切って、無言でカメラを見つめた。画面上には無表情のルイの姿が映っていて……。
「…………」
『なんか言え』
『配信止まった?』
『こっち見んな』
『そんな目で見るんじゃない』
『黙ってたらイケメンだなコイツ』
「検証結果は…………調べたけどよく分かりませんでした!」
『草』
『草』
『草』
『草』
『いかがでしたか?』
『クソまとめサイトオチやめろ』
──
「というかもう年末なんだな。ルイ民のみんなは予定とかあるのか?」
『別に……』
『ないです』
『労働です(半ギレ)』
『ルイのアーカイブ消化するよ』
『俺はスカサン歌ライブ見るぜ!!』
なんとなく予定を聞いてみると面白い答えがあったので、それを拾い上げてみた。
「ああー、スカサンの年越しライブとかやるんだな! 流石スカイサンライバー、お金が掛かってる……それ以上に儲かってるんだろうな!」
『草』
『お前が言うと生々しいんだよw』
『儲かってるなら何よりだ』
『ルイは出ないの?』
「ん? 俺は出ないぞ。俺は新人だし、ああいうのって何ヶ月も練習してやるもんだろうから……きっと時間が無かったから、誘われなかったんだと思うぞ。それか単純に俺の歌が下手過ぎてハブられたか……」
『草』
『草』
『そもそもお前、歌ってみた上げてないだろw』
『リアルな話、ルイの3Dモデルがまだ無いからだと思うぞ』
ああ、なるほど。モデルとかも必要になってくるのか……勉強になったよ。
「まぁ流石にそれは冗談だけど……でも俺もいつか、そういったイベントにも出れたら良いけどなー。もちろんライブの同時視聴とかもやってみたいけど……それが難しかったら、大晦日はみんなで年越しラーメン啜る配信やって終わろっか」
『草』
『新しい風習を作るな』
『同時視聴やってよ~~』
『もちろんレイちゃんとやりますよね?』
「レイとやれって……だから、アイツはそのライブに出ないのか?」
『出ないよ』
『出ないらしい』
『もう出演者は発表してるよ』
『ロビンとかは出るみたいだけどな』
「出ないのか。ふーん、アイツなら率先して出そうなもんだけどな……」
言いながら俺は時計を見た……ここで日付が変わっていることに気が付いたんだ。
「……って、もうクリスマス終わってるじゃないか。良かったなお前ら、もうイチャついてるカップルに怯えなくて済むぞ!」
『草』
『は?』
『俺らを何だと思ってる』
『イチャイチャしてるカップルは年中してるっつーのw』
『ルイレイの話ですか?』
『もうクリスマス配信じゃなくなったな』
「ははっ、確かにな……こんな風にクリスマス過ごしたのは初めてで楽しかったぞ。じゃあもういい時間だし……そろそろ配信を終わることにするよ」
『まって』
『クリスマス二日目突入確定!!!!!』
『ボタンを押せ!!』
『キュインキュインキュイン!!!!!!』
『草』
『草』
『草』
「勝手に確変入るんじゃない……じゃ、みんなおつルイだ!」
『じゃあな』
『おつルイ』
『おつルイ!!』
『おつレイ』
『おつー!』
『年越しラーメン楽しみにしてるぞ!』
そんなみんなのコメントを眺めて……俺は配信を終了させるのだった。
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