【WEB版】幼馴染のVTuber配信に出たら超神回で人生変わった

第62話 試合終了！

　……そして今度こそ試合が終わったので、また俺らはサーバーに集まって話をすることになった。全員が揃ったことを確認した俺は、笑顔で言葉を発す。

「えー、試合の結果は……なんと、ルイ軍の勝利です！！　拍手ッ！！」

「うおーー！！　やったぞぉー！！！」

　数分前とは打って変わって、俺の言葉を皮切りにルイ軍は盛り上がりを見せる。一方、レイ軍は俺らに負けるとは思っていなかったのだろう……誰も言葉が出ないみたいだった。

「……」「……」「くっ……！」

「えっと……楽しかったですね！」

　空気を壊さないように、カレンさんが繋いでくれるが……こういう時こそロビン、お前の出番だろ。なんでガチで悔しそうなんだよ。「くっ……！」じゃねえだろ、おい。

「じゃー、これでルイルイの勝ちってことで良いんだね？」

「だな……『勝った方がこの戦いの勝ちってことにしたげる』って言ってたし。だから正真正銘、ルイ軍の勝利だ！」

　まぁ一回勝っただけで俺らの勝利になるのは、少しせこい気がしないでもないが……向こうがそう言ってくれたんだから、俺らの勝ちってことにしておこう。それに次やったら対策されて、普通に負けそうだしな……。

「ほらレイ。早く罰ゲームを発表してください」

「う、ううっ……いぶっきーがドＳになってるよぉ……！」

『ドＳ伊吹助かる』

『俺もいぶっきーに踏まれてぇなぁ……』

『変態もいます』

『そらルイの配信だしいるだろ』

『そっか。ごめん』

　いつも通りのコメントは放っておいて……ここで彩花は罰ゲームのことを言うのだろうか？　まぁ流石にリスクあるし、配信上では言う訳無いよな……。

「えっと……実はね？　この試合に勝った方が、相手の言う事をひとつ聞くってなってて、それで……」

「え」

『あ』

『なにっ！？』

『ガタッ』

『お前じゃねぇ、座ってろ』

『エ○同人で見るやつじゃん！！！！！』

「いや、言うのかよお前！？」

「……あー。『冗談言うな』とか類が言ってたら、まだ誤魔化せたかもしれないのに……認めちゃったね？」

「……」

『あっ』

『あーあ』

『やったな、ルイ』

『本当に同人みたいな約束してたのか……』

『エッッッッッッ』

　いや、やったなとかじゃなくて……じゃあ最初から言わなきゃ良かったじゃねぇか。俺らの関係は絶対にバレちゃいけないって何度も言ってるのに、ホント何がしたいんだよ彩花は……とにかく、このまま黙ってたら状況悪くなりそうだし。何か言わなきゃ……！

「……いや、もう誤魔化せないから言うけど。確かに俺らはそういった約束をして、この勝負に臨んでいたよ」

『そうだったのか……』

『だからあそこまでガチだったんだな』

『合点がいった』

『そんなに勝ちたかったんだなルイ……』

『だから頑張ってたのかぁ……』

『そら（レイを好きにできるのなら頑張るのは）そうよ』

「いや『だから必死になってたのか……』みたいな反応するのは止めろ！！　単に俺はレイに勝ちたかったから頑張ってただけだ！　それ以外の感情は無いからな！？」

『無理があろうかと思われます』

『素直になれ、ルイ』

『同じ状況だったら俺だって本気になるから心配すんな』

『あれ？　それだったら、レイちゃんの方が勝ちたかったってことにならない？』

『確かに……仲間に来夢いたしな』

　……なんかこの流れマズくね？　いや、既にヤバいのは重々承知なんだが。彩花の方に矛先が向くと、かなり面倒なことになるんじゃ……？　……そこで助け舟を出してくれたのか、いぶっきーが俺に話しかけてくれて。

「それで、ルイさんはレイにどんな命令をするのですか？」

「えっ、今言うの！？」

「当然です。それこそ裏でやり取りする方が、何だかいかがわしいです」

「た、確かに……」

『ぐぅ正論』

『同人誌になっちまうからな』

『ナイスプレー、いぶっきー』

『まぁ表では何とでも言えるけどにゃー』

『早く言え、ルイ』

　どっ、どうする……？　ここで俺の欲望全開のお願いだなんて言える訳がないし……いや、この場でマジの命令するメリットもないし……かと言って、面白い嘘の命令だなんて思いつかないし……付き合ってることだってバレちゃいけないし……。

「…………」

　なんかもう……考え過ぎて、頭がおかしくなりそうだった。でも配信者としてずっと黙ったままでいるのは失格だし……何か、とにかく何か言わなきゃ……！！

「え、えっと、レイ……さ。確かに最近、俺はお前と遊んでなくて……それで今回こういった機会があって、みんなと一緒にゲームできて楽しくて……」

「うん」

「だからその……何と言うか……あ、遊びに行かないか？　リアルで」

「えっ？」

『おっ』

『いいじゃん』

『ルイにしてはまともな願いだった』

『なんか緊張してそうなのがガチっぽいんだよなーｗ』

『デートってことですか！？』

　いや、何を言ってるんだ俺は……！？　こんなこと言ったら余計、変な疑惑が高まると言うのに……！　デートなんてコメントも出てるのに……！！　どうして俺の言葉は止まらねぇんだよ……！？

「ほら！　その……俺ってあんまり外に出ないし、なんかきっかけがあったら出やすいなって思って！　だって俺、レイが一番誘いやすいし！　そ、それで……！」

「うん。いいよ」

「えっ……？」

「そんなお願いなら喜んで受け入れるよ。私も類とお出かけするの楽しみ！」

「……！　そ、そうか！　なら良かった！」

『８８８８８８８８８８８』

『よかったよかった』

『なんかイチャイチャを見せつけられたぞ』

『イイハナシダナー』

『てぇてぇ……？』

『やっぱりルイとレイはガチなんですか？』

『公式カップリングやぞ』

　……言っちまった。というか彩花がお願いしようとしてきたことを俺が言うのなら、わざわざ勝つ必要も無かったんじゃないか？　……でもまぁ。コメントも祝福？　してくれてるみたいだし、これで良かったのかなぁ……？

「ルイー！　焼肉も忘れるなよー？」

「あっ、ああ！　ルイ軍も祝勝会、絶対行こうな！」

「やったー！」「ルイルイの奢りねー？」

「あ、店は安いとこで頼むぞ……？」

『草』

『ルイが楽しそうで良かった』

『ちゃんと青春してるよ、お前は』

『ルイレイならガチでも応援できるわ』

『俺もだ』

『ルイを頼むぞ、レイちゃん』

「ふふっ！　じゃあ来夢ちゃんの感想聞いて、今日は終わりにしよっか！」

　そして彩花は中々話さなかった来夢さんに気を遣ったのか、良いパスを投げた。来夢さんはちょっと驚いたようにしながらも、感想の言葉を俺らにくれたんだ。

「……あー、えっと。ルイ君に負けるとは思わなかったからちょっと悔しいけど……でも、とっても良い戦いだったと思うよ。ウチももっとゲーム頑張ろうって思った」

「はい！　とっても強かったです！　来夢さんも本当にありがとうございました！」

「……ふふ、ルイ君。ウチと一緒にプロ目指す？」

「え、ええっ！？　それは流石に無理ですよ！？」

『草』

『来夢のお墨付き貰ったな』

『でもアペブロンズですよコイツ』

『まだ格ゲーの方がワンチャンありそう』

『まぁルイの判断力は何かに使えそうだけどな』

　多分お世辞だろうけど……でも、来夢さんの言葉はとっても嬉しかった。俺も努力続ければ、もっと上手くなれるだろうか。大会とかも出てみたくなったしな……。

「じゃあ、これにてルイ軍VSレイ軍の配信は終了です！　出てくれたライバー、最後まで見てくれた視聴者のみんな、本当にありがとうございましたー！」

「ああ、本当にありがとな！　おつルイ！！」

『おつルイ』

『え！！！！？？　自分からおつルイって言った！！？？？？』

『面白かったー！！！』

『良い配信だった』

『楽しかったな』

『神配信だった』

『レイとのデート楽しんでこい』

『後日詳しく聞かせろよ！！』

『またやってくれよなーー！！』

　──

　……そんな感じで、無事に配信は終わったのだった。自分で初めて企画を用意したにしては、相当上手くいった方ではないだろうか。もちろんみんなの協力があったからだろうけどね。後でちゃんとお礼言っとかなきゃな……。

「……ん？」

　何気なしにスマホを見ると、既にメッセージが届いていた。相手は彩花……何だ、さっきの配信のことだろうか……？　俺は画面を開く。

『類の命令、本当にあれで良かったの？』

　メッセージにはそうとだけ書いてあった。もしかして……彩花は、俺の言った命令が本心で言ったものじゃないと思っているのだろうか？　まぁ……確かにテンパって口にしたのは確かだけど、あれは俺の本心だし。別に撤回する必要もないだろう。

　それこそいぶっきーの言った通り、裏でやり取りする方がなんかやらしいもんな。

『ああ。俺も彩花と遊びたかったし、配信で言ったのは全部本音だ。だから約束通り遊びに行こう』

　俺はそうやって入力して送信した。そしたらすぐに着信音がして。

『良かったー。楽しみにしてるね、類？』

　と、画面の向こうでニヤッとしてるのが想像出来そうな、彩花の返信が来たんだ。そのまま俺は親指を立てた猫のスタンプを送信し、スマホを閉じた。ふぅ……じゃあ、デートの場所でも考えときますかね。