第61話 消えてもらおうかッ!

「なっ……いつの間に移動を!?」


「ヤバいよ、こっち見てる……!!」


 仲間の二人は怯えた声を出す……だがリリィが撃ち抜かれたとは言え、3対1でこっちが人数有利を取れているんだ。だから……このまま隠れていたって仕方ない!!


「いや……これは好機チャンスだ、絶対逃すな!!」


『聞いたことあるセリフで草』

『死に急ぎ野郎乗り移ってますよ』

『立体機動に移れ!!』

『これ負けフラグでは?』

『無視するんじゃなかったのか』


 俺は銃を構える……わざわざ向こうから前線に上がって来てくれたんだ。ここで仕留められたら、俺らの勝利は確実──


「危ない! 隠れてルイルイ!!」


「……ッ!!」


 来夢さんの死角から歩を進めたつもりだったが……俺の気配に気づいた瞬間、一気に銃口を俺に向け、容赦なく撃ってきた。間一髪かわすことには成功したが、多分次は無い。


「やっ、やっべぇ……! やっぱ当て勘おかし過ぎだろ……!?」


 あんな射撃見せられたら俺もビビってしまうが……このままエリアを奪われたままだと不利な状況が続くし、相手だって復活する。だが迂闊に顔を出せば、即撃ち抜かれてしまうし……どっ、どうする俺っ……!?


「……ルイさん。やはりここは人数有利を押し付けるしかありません。私の後ろからついてきてください」


「え、でも……!」


「来夢さんのブキは射程はありますが、連射するのは難しい筈です。私がヘイト集めますから……そこを狙ってください」


 いぶっきーを囮にするってことか。そんなことすれば、彼女の命は確実に失われるだろうが……。


「迷ってる暇はありません。行きますよ、ルイさん?」


「……ああ!」


 俺がキルしてくれることを信じた上での発言だろう……だったらそれに応えるしかないよなぁ!!


『良いやり取りだ』

『このコンビも案外悪くないよな』

『クール系二人のキャラデザは正直映える』

『ルイがクール系だったことがあるのか?』

『審議中……審議中……』


「もちも行くよ!」


「よし、三人で行くぞ!」


 そしていぶっきーを先頭に、俺らはエリア中央へと集まった。ローラーを大きく振り回して、ヘイトを稼いでいるいぶっきーへと照準が向けられる……その隙に俺らは距離を詰めてって。


『ドパァン!』


「抜かれました」


「大丈夫だ! だああああぁぁッ!!」


 そのまま俺は突っ込んで、来夢さんに弾をぶち込んだ。スナイパーで撃った後の隙はかなり大きいものだったらしく、相手は回避は出来なかったが……反撃として俺にも射撃してきた。だがフルチャージされていなかったので、俺はダメージを負ったものの撃ち勝つことが出来たんだ。


「よし!!」


『きたあああああああああ!!!』

『ライムに撃ち勝っただと!?』

『もってったぁああああああ!!』

『ライム初キル!!!』

『こーれはルイ最強です』


 来夢さんを倒したのは相当デカい……!! このままエリアを取り返せば……!!


『ピピピッ』


「…………え?」


 これは……トラップ!? 戦闘中に仕掛けていたってのか!? ってことはまさか俺がここ踏むことまで予測して、俺に射撃したのか……というか、このダメージが入ると俺、死ぬんじゃ……。


「──あっ」


『あ』

『あ』

『あっ』

『草』

『最後の一撃トラップは、せつない』

『油断したな』

『やっぱタダでは死なんか……』


 俺はトラップのダメージを受けて、リスポーン地へと送られた。俺は呆然としながらも……生き残っているもちに向かって指示を出した。


「も、もち……トラップに気を付けてエリアを取り返してくれ」


「あ、うん。分かった!」


「…………リリィ、復活!」


「じゃあもちのとこ飛んでいくんだ」


「なんとかなる?」


「なんとかなるから」


『草』

『今は敵いないから大丈夫だってw』

『まぁ三人もってかれたけど、有利なのは変わんないから!』

『まだまだ勝負は分からないな』

『でも来夢も復活してくるんだよなぁ……』


 そしてもちとリリィの射撃で、エリアを取り返す。相手も復活してきて、エリアを奪い返そうとしてくるが……。


「させないよー?」


「あたしが相手だっ!! かかってこい!!」


 二人とも練習の成果は出てるらしく、やって来たレイ達を返り討ちにしたんだ。


『上手い!』

『ちゃんと動けてるな』

『来夢相手じゃなきゃいける!』

『何だよ、結構当たんじゃねぇか……』

『団長!?』


「おお、流石です」


「凄いぞ二人とも! 俺もすぐ合流するから耐えてくれ!」


 このまま抑え込めば、俺らの勝ちだが……そう簡単にはいかないだろう。


「カウントリードしたぞ、ルイ!」


「しかし、相手が攻めてきませんね……?」


「あっ……あれ見て! 来夢ちゃんを囲むようにして、全員で動いてるよ!?」


「なるほど、護衛に切り替えたか……」


 タイマンでは勝てないと判断したのか、レイ達は来夢さんを守るように動いていた。来夢さんを軸にして動き、最悪他のメンバーは壁になってでも彼女を守るつもりだろう……まぁ、作戦としては悪くないのかもしれないが。


「……でもな、俺らはチームなんだ! 来夢さんだけに頼った、そんな作戦なんかに俺らが負ける訳無いんだよっ!!」


『かっこいい』

『そうか?』

『正直ルイの主人公感はくすぐられる物がある』

『ここまで来たのなら勝ってくれ』

『ルイのチームには全員強みがあるからな!』


 ああ、そうだ……俺らには個性が、全員が輝ける武器を持っているんだ!!


「あたしがライムを撹乱する! そっちはスペシャルを溜めて!」


「ああ!」「うん!」


 宣言通りリリィは前線で動き回り、相手を翻弄するが……丁度スライドの終わりを来夢さんに狙われていた。


「や、ヤバっ!」


「シールド展開!!」


 そこで俺がサブウェポンのシールドを展開して、彼女を射撃から守った。一発でシールドは消えるが、大きな働きをしたと言えよう。


「ルイ!」


「その調子だ……リリィ! 踊り続けろッ!!」


「ああ! スーパーリリィタイム!!」


『やっぱダサい』

『もっとなんかなかったのか?』

『僕は嫌いじゃないですけどね』

『リリィちゃんのセンス可愛いやろ!! 潰すぞ』

『リリィ親衛隊もいます』


「溜まった!」


 もちのスペシャルが溜まった報告が聞こえる。確かシュプシュのスペシャルは……『ハイパーショット』。高射程、高スピード、高ダメージのバズーカ砲を何発か撃てるというスペシャル技だ。エイム力は問われるが……最強技なのは間違いない。


「よし! あの囲んでいる陣形にぶちかませ!!」


「任せて! ……ンッ、消えてもらおうかッ!!」


「だからそれも別ゲー!!!」


『草』

『草』

『草』

『草』


 でも、もちの放ったハイパーショットは四人で固まっている相手にはぶっ刺さりで。壁になって守ることも出来なかったらしく、同時キルに成功したみたいだった。


「わぁ、三人やった!!」


「残りは来夢さんだ!」


 正直、来夢さんならこんな不利状況も覆せるかもしれないが……俺らにはまだ伏兵が存在しているんだ! 来夢さんは棒立ちの俺に照準を合わせてくる……。


『何してる、ルイ!?』

『このままだと死ぬぞ!?』

『ああ、なるほどな』

『そういうことか』

『どういうことだってばよ!?』


 コメントでも気づいてる人がいたが、それは俺らの位置からじゃなきゃ見えないんだ……いぶっきーが潜伏しながら、来夢さんに近づいてるなんてなぁ!!


「……視野が狭くなってますよ?」


 来夢さんが俺を撃とうとした瞬間にいぶっきーが飛び出して、そのままローラーを振り下ろした。あまりの突然の出来事に、来夢さんも回避出来なかったみたいで……そのまま潰され、リスポーン地へと送られた。


「よし、全員撃破だ!!」


「伊吹ちゃん、神ぃ!!」 


 そして数秒後、試合終了のホイッスルが鳴った。結果は…………俺達の勝ちだ。


 俺は……歓喜の雄叫びを上げるのだった。


「やった…………勝った……来夢さん達に勝ったぞぉっ!!!!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

『ルイ軍最強!!!!!』

『まさか勝つとは』

『俺は信じてたよ』

『おめでとう』

『やったあああああ!!!!』

『ナイス』

『俺達の勝ちだ!!』

『GG!!!!!』

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