第58話 みんな揃ってルイ特戦隊!

 ……それから勝利の余韻に浸ったまま、俺らは配信を終えた。そして続けて次の日、そのまた次の日と練習をしていって、俺らはエイム力や立ち回りを強化していった。そして最終日には全員、もう初日とは比べられないほどに成長していたんだ。


 そうして迎えた決戦の日──。


 ──


「レイ軍VSルイ軍、スペシャルシュプラ対決ー!」


「わー!」「おーっ!」


『きちゃあああああああ!!』

『うおおおおおおおおお!!!』

『どんどんパフパフー!』

『待ってたぜぇ、この瞬間をよぉ!』

『楽しみすぐる』


 俺ら両チームのメンバーは、ボイスチャットのサーバーに集まっていた。もちろんゲーム内でも集まっていて、ロビー画面には八人のキャラクターが、あちらこちらに動き回っていた……ここの動きでもう性格がバリバリ出るよなぁ。だってリリィとロビン、ずっと動き回ってるんだもん……マグロか?


 そして司会進行をしてくれてる彩花は、オープニングトークやルール説明を行ってくれて……俺は適度に茶々を入れつつ、説明している時は黙って話を聞いていた。


「それじゃあ改めて説明するけど……今日は私らレイ軍と、ルイが率いるルイ軍とでシュプラ対決を行うよ! ルールはBO5、先に3勝した方が勝ち! チームは事前に決めてるから、ルイ軍から紹介よろしく!」


「ああ、分かった。俺がチームのリーダー、ルイ・アスティカだ。そして……!」


「リリィ!」「もち!」「伊吹です」


「「「「みんな揃ってルイ特戦隊!!」」」」


「決まった……!」


『だ、だせぇ……!!』

『誰考案だこれ』

『練習したのかな?』

『昨日配信で掛け声の練習してたぞ』

『いぶっきーは嫌々やってそうで草』


 コメントは不評みたいだが、あえて滑ったみたいな所はあるからセーフ……ちなみに「紹介の時掛け声言わないか?」と提案してきたのはリリィなので、俺は何にも悪くないです。文句があるならリリィに言ってください。まる。


「…………はい、ありがと。レイ軍は私、カレンちゃん、ロビンくん、来夢ちゃんの四人でお送りするよ」


「何だ、そっちのチームは掛け声も無いのか?」


「ある方がおかしいんだってば……まぁ、気合が十分なのは構わないけど。ちなみに負けた方のリーダーには罰ゲームがあるから、負けないように頑張ってね?」


「えっ、罰ゲームあるんですか?」


 敵チームのカレンさんが驚いたように言う。おそらく事前に聞かされてなかったのだろう……まぁこっちのチームは、最初に罰ゲームのこと話したんだけどな。お陰で初っ端からチームが崩壊する可能性あったんだからな?


「うん、あるよー。でも危害に合うのは私か類かのどっちかだから……カレンちゃん達は気軽に楽しんでね?」


「そうなんですか、分かりました!」


「まぁ、私は負けないから大丈夫だけどねー?」


 彩花は勝つ気満々でいるのか、挑発したようにそう言ってくる……ほぉ? プロレスがお望みなら、こっちだって受けて立つぞ?


「いや、こっちだってマジで努力してきたんだからな! 対スナイパーも対策済み……だから! 強い人連れてきただけで勝てると思うなよ!?」


「おーおー言うねー? でも負けた時恥ずかしくなるから……そのくらいにしておいた方がいいと思うんだけどなー?」


「にゃ、にゃんだとぉーー!!!??」


『草』

『草』

『ルイ、キレた!』

『沸点が低すぎるっピ!』

『リーダーがこれで大丈夫かよ……?』

『まーた夫婦漫才やってるよ』


 そんな頭に血が上っている俺を落ち着かせようとしたのか、ここでいぶっきーが会話に割り込んできて。


「……言い合いはこのくらいにしておいて、そろそろチームで分かれましょう。時間も押しているみたいですしね?」


「あっ、ごめんいぶっきー! じゃあ次に話す時は、試合終わりね! ……その時は類の泣き顔、期待してるよ?」


「その言葉……そっくりそのままッ、お返し申す!!」


『草』

『草』

『草』

『かしこみかしこみ』

『映画見てきただろお前』


 そんな俺の小ボケに、何人かは笑ってくれて……。


「ふふっ、じゃあチームレイのみんなはこっちのサーバーに集まってねー?」


「はーい!」「承知した!」「んー」


 彩花の率いるレイ軍は、ボイスチャットのサーバーから出て行った……そして残った俺らは四人で、最後のミーティングを開始するのだった。


「じゃあルイ特戦隊ことチームルイ、最後の会議を始めるよ。相手には来夢さんという強敵がいるけど……俺らだってあれだけ練習したんだ! だから、絶対に勝てるはずだ! 練習の成果をレイらに見せつけてやろう!!」


「ああ! あたしらなら勝てるよ! だってこっちには『ダンシング・パーリリィ』だってあるんだからなっ!」


『何だそれは』

『そういう必殺技があるの?』

『いや、リリィが敵の前でダンスするってだけ』

『草』

『草』

『でも練習では刺さってたから!! 強かったから!!』


 そしてもちは少し心配そうにしながらも。


「どうしてフラグを立てちゃうんだろう……でもまぁ、努力したのは確かだし。ルイルイも負けられない理由があるのは知ってるから、もち達も頑張るけどね?」


「ええ、そうですね。勝って本当にルイさんに焼肉奢ってもらいましょう」


「えっ、それ覚えてたんすか……?」


『草』

『結局行ってなかったのかよ』

『ちゃんと奢ったれ』

『焼肉は勝利に取っておこう』

『お祝い配信も期待してるぞ!!』

『何だかホントに勝てる気がしてきたな』


『焼肉は勝利に取っておこう』……ああ、そうだな。みんな俺のワガママに応えて、今日まで毎日練習に付き合ってくれたんだ。だから勝ったら飯くらい奢るのも……悪くないのかもしれないな。金は無いから、安いとこにして欲しいんだけど。


「……まぁ試合終わったらお祝いとかしたいからさ! そのためにも絶対勝とうな! みんな!」


「はい」「うん!」「ああ!」


「ルイ軍、ファイトー……!」


「「「おーー!」」」


 そしてまた俺らは掛け声で気合を入れた。ああ、これなら大丈夫だ。だって俺らは最強のチームなのだから────




 ────15分後。


「あ、あぅっ……うぐうぅ……! ううっ……!」

「る、ルイルイ……これ……現実……?」

「ここまで実力に差があるとは思いませんでしたね……」


『一方的だったな』

『まさかここまでとは』

『だって敵に人力チーターいるもん……』

『まぁ頑張った方だと思うよ』

『相当落ち込んでるな』

『いま来たけど終わった?』

『終わった。大差でな』


「…………」


 0-3のスコアを付けられ、俺らは完敗した。そ、そりゃあ…………ねぇぜ…………?

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