第57話 チームルイの練習試合!

 そして俺らは再びマッチに挑むことにした。数十秒経って、画面に対戦相手が見つかったことを知らせる表示が入り……対戦画面へと遷移する。


「よし……行くぞ!」「おー!」


 ルールは『マジエリア』。一定時間インクで決められたエリアを確保した方が勝ちという、比較的分かりやすいルールだ。ステージは『フエフキ市場』、縦長だが裏取りのルートもあるバランスの良いステージである。


「おっ。敵にスナイパーがいるねー?」


「あれを来夢さん……いや。敵全員をレイ軍だと思って戦うぞ!」


「え、じゃあどれがレイでどれがロビン……」


「始まるぞ! リリィ構えろ!」


『リリィちゃんカワイソス』

『もう始まってる!』

『うん、確かに構成はレイ軍とそっくりだね』

『スパイ帰ってきてて草』

『スパイはルール的にありなのか?』


 俺はコメントをチラッと見る。あまり褒められた行為では無いが、相手はレイだしそれくらいは許してくれるだろう……ちなみに敵の編成はシューターが2、弓が1、スナイパーが1のバランスの良い編成だった。


「よし、突っ込むぞリリィ!」


「ん、あ、おん!」


 そして試合開始直後、俺とリリィはエリアへと直行する……が。


「なぁああああああっ!?」


 初っ端、リリィが敵スナに撃ち抜かれてダウンしてしまったようだ……そしてそのまま、エリアを相手チームに確保されてしまった。


「大丈夫大丈夫、落ち着いて報告していこう」


「…………あ、あたしはッ……! 開幕そうそう突っ込んだ挙げ句、高台で構えていた敵スナイパーに撃ち抜かれるという失態を犯してしまい……!!」


「誰がそんな丁寧に報告しろっつった!!」


『草』

『草』

『草』

『リリィもそんなボケ出来たのかww』

『おもしろすぎる』


 確かにそのボケは面白かったが、ちゃんと突っ込む余裕は無かった。何せ、今はバチバチに撃ち合っている最中なのだからな。


「ルイルイ、スペシャル溜まったよ!」


「おっけ、物陰裏にソナー頼む!」


「任せて……! 『†領域展開†』」


「その一言いらないねぇ!?」


『草』

『草』

『草』

『草』


 コイツらそんなボケまくるヤツだったか!? テンションがバグってるって……!


「正面に三人、スペシャルで退かします」


「おっけ! もち、ここで一緒にエリア確保しよう!」


「りょ」


 そしていぶっきーのロットミサイルで、敵は一旦後ろに引く。この間に俺らは塗りまくって、エリアを奪い取った……が、敵を倒した訳ではないので、すぐにエリアを確保し直そうとまた中央に集まってくる。


「まずい、リリィ! 突っ込め!」


「えっ…………ああ、やってやるよぉ!! ダンシング、パーリリィ!!!」


『だ、ダセェ……!』

『何だその技名』

『かっこいい』

『いや、僕は好きですけどね?』

『賛否両論で草』


 俺の指示に従って、復活したリリィは敵のいる中央エリアに突っ込み……スライドを駆使して一気に敵のヘイトを集めた。当然全ての敵に狙われているので、リリィは為す術もなくやられてしまうが……。


「ぬぁあああああーー!!!」


「……大丈夫です。良い時間稼ぎでした」


 その間に裏取りしていた、いぶっきーが背後からローラーを振り下ろして、連続で三人キルしていったんだ。


『かっけー!!!!』

『神の一手だ』

『強すぎwwww』

『まずは簡単な挨拶』

『いぶっきー最強!!!』


「ナイスっ!」


「いやまだだ! スナイパーが残ってる!」


「おっけー!」


 そこで高台のスナイパーに向かって、もちは追尾型のボムを投げる。キルは出来なかったが、相手を引かせることには成功した。


「よし、このまま抑え込むぞ!」


「……リリィ、ふっかーつ!」


「じゃあ飛んでこい!」


「ふぇ? そんな敵陣地に飛んだら、またすぐやられちゃうぞ……?」


「いいから来い!!」


「なっ…………」


「リリィちゃん、早く!」「リリィさん!」


「………………なんとかなれーッ!」


『草』

『草』

『草』

『草』

『草』


 叫びながらリリィは俺の場所へと飛んできた。だが『こっそりジャンプ』の装備を付けていないリリィは、着地場所が敵からも丸見えで……スナイパーの照準がそこに向けられた。


「マズイよっ、ルイルイ!」


「大丈夫だ……シールド展開!」


 その着地の直前に俺はサブウェポンのシールドを展開させた。そしてスナイパーの放った弾はそのシールドに命中し、リリィの着地を守ることに成功した。


『お~w』

『やるじゃん』

『やるね、彼』

『見直した』

『ルイ・アスティカちょっと強い!』


「る、ルイぃ……!」


「お前が戦い俺が守る……ってな!」


『でもさっきリリィ死んでましたよ』

『別に53リットルは防御特化ブキではないけどな』

『何なら攻撃特化ブキだぞ』

『お前は盾勇者じゃなくて魔道士だろ』


 何で俺の時だけツッコミが厳しいんだよ……ともかく、今は試合に集中せねば。


「相手も復活したよ、ルイルイ!」


「敵は打開を狙っているはず……相手のスペシャルが貯まる前に叩くぞ!」


「了解です、ミサイル行きますね」


 そしてもう一度いぶっきーのミサイルが飛んでいった。流石に相手は回避に集中せざるを得ない……このタイミングでもちはスペシャル技のソナーを飛ばして。


「もちもスペシャル行くよ! ……周囲環境をマーク中」


「だからそれ別ゲー!」


「私は血に浴する者!」


「うるせぇ!!!」


『草』

『草』

『草』

『テンポが良すぎる』

『やっぱお前、ツッコんでる時が一番輝いてるよ』


 そして俺らの思惑通り、相手は動きにくくなっていたみたいだ。そこを上手く付いたリリィは、更に敵陣の方へと突っ込んで行って。


「やった! 二人倒したぞ!」


「いいぞ、このまま抑え込むんだ!」


「あと10カウントです」


 いぶっきーが言う。このまま残り10秒……エリアを確保し続ければ俺らの勝ちだっ……!!


「あっ、抜けてった人が一人いるよ!」


「ホントか!?」


 確かに敵が端の方で通り抜けたのが、俺には見えた。三人はこのまま抑え込む必要があるから……ここは俺が止めるしかない!


「俺が行く!」 


 俺は急いでその相手を追いかけ、歩きながら狙って弾を放っていった……だが弾はブレて、中々相手に命中しない。


「クソっ……!? コイツ避けるの上手すぎだろ!?」


『逆だ逆』

『そういう考え方もあるけど』

『ポジティブ過ぎるんだよ』

『早く当ててくれ』

『ヒヤヒヤする』


 俺に気づいた敵は振り返り、攻撃しようとしてくるが……そこが隙だった。ちょうど動きが遅くなった所に、俺は二発弾をぶち込んだんだ。そして当たった相手は消滅し、敵陣のリスポーン地へと送られる。


「よし、やった!」


 そして俺が言ったのとほぼ同時に、試合終了の表示が出た。その音を聞いた俺は思わずコントローラーを置いて……大きく息を吐いたんだ。ああ、やった……勝てた。このメンバーで一勝出来たんだ!!


「私らの勝ちです」


「勝った……勝ったよルイルイ!!」


「うおーーー!!!? あたしら最強だー!!!」


『きたあああああああああ!!!』

『神』

『まさか勝てるとはな』

『これなら本番もイケる!』

『期待していいのか……!?』

『俺は勝てると思ってたけどね?』


 コメントは盛り上がりを見せる。良いオチも付いたし、ここで終わっておくのが丁度いいのかもな……思いながら俺は、声を弾ませて言う。


「ああ……やったな!!」


「やったー! ルイルイ、勝利の記念に焼肉行こうよ!」


「お、行くかー!」


「やったー!! ルイの奢りだー!!」


「……えっ?」


「おお、助かります」「わ、ラッキー!」


 いや、ちょっと待て……奢るなんて俺は一言も……!


『草』

『草』

『もう完全に優勝した流れで草』

『言ったしちゃんと奢れよルイ』

『おめでとうルイ』

『良い最終回だった』

『美少女三人と焼肉行けるなんて羨ましいなー?』

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