第43話 人生ってそんなもんだよね?
『そうなんだー』
『まぁ暇じゃないとVTuberなんかなれないよな』
『暇つぶしでもレイがこの世界に来てくれて良かった!』
『レイが暇で良かったわ』
……そのことに気づいているのは、俺一人みたいだけど。いやもちろん、ただの俺の勘違いだって可能性も捨てきれないんだけどな?
そもそもそう思ったのは、ただの俺の勘だし……この流れを崩してまで、問い詰める必要も無いと思った俺は、黙ったままでいることにしたんだ。まぁ聞くにしても、放送が終わってからでいいしな……そしてそのまま彩花は口を開いて。
「よし、じゃあきっかけはみんな言ったし! 次は……何話そっか?」
「そうだな……では、これからの展望を皆で語り合うのはどうだろうか!」
「てんぼう?」
「まぁ……これからどんなことをしていきたいか、話し合おうってことかな」
「なるほど! ルイさん賢いです!」
『ルイがお兄さんみたいだ』
『兄妹みたいw』
『ルイとカレンちゃんのコンビも悪く無さそうだ』
『立ち絵的に似合ってるもんな』
コメントで兄妹みたいと言われて、ちょっとだけ俺は嬉しくなってしまう。まぁカレンさんがどんな風に思っているかは知らないが。(そもそもコメント見てないし)……そして彼女はポンと両手を叩いて。
「あっ、それなら! 私は、皆さんと料理がしてみたいです!」
と。それにいち早く彩花が反応して。
「いいねー! 私もカレンちゃんと料理やりたいな!」
「悪くないだろう……でも、配信でやるのは厳しいかもしれないな?」
「俺らはバーチャルな存在だからね」
VTuberが実写動画を出すのはどうなの? という論争は合ったり無かったりするが……別に俺は面白ければよくない? と思っちゃうタイプなんだけどな。
でもそれが当然みたいになったら『そのキャラの設定必要ないよね?』ってなっちゃう気持ちも分からなくは無いけどね。まぁその辺りは俺らが、上手い落とし所を探していくべきなんだろう。
『でも料理配信やってるVTuberもいるし!』
『実現してほしいなー』
『ルイ、お弁当作ってもらえ』
『ルイの青春お弁当選手権開催しろ』
はは……その青春お弁当選手権の案はクソ面白そうだけど、懸念点は参加してくれそうな人が絶対にいないってことなんだよな……。
「うーん。ならその辺は、スタッフさんとかに協力してもらうのはどうかな?」
「……あ。何ならもういっそのこと、我々四人の番組を作ってもらうのはどうだろうか?」
「それは流石に求め過ぎじゃないか……?」
「ふふっ! でもオーウェン組の番組があったら面白そうです!」
『確かに!!』
『オーウェン組の番組くれ!! マジで!!』
『毎秒やってくれ』
『社長にお願いしよう』
……まぁ、言うだけタダだし。塩沢さんは無理にしても、ネモさんに相談してみるのも悪くないのかもしれないな。今度言ってみよう。
「では代わって……ルイボーイはどんなことをお望みだい?」
「俺? そうだね……番組繋がりにはなるけど。俺はまた、安藤先生の理科準備室に出たいかな?」
「四人で?」
「……ああ、そうだな! オーウェン組で行きたいな!」
ぶっちゃけ四人でってのは考えていなかったけど、それも非常に面白そうだ。めちゃくちゃ騒がしくなりそうだけどな……?
「ふふっ! それ、面白そう!」
「アハハッ! 四人ともち嬢を捌く安藤先生が大変そうだ!」
『その光景が容易に想像出来るなw』
『先生が過労で倒れてしまう』
『そもそもどうやって、四人があそこにたどり着くんだ?』
『そりゃもう集団転移よ』
確かにクラス転移の一言で説明が済むから、導入は楽かもしれないな……いやぁ便利だな、魔法って。
「では、ロビンさんは何をしたいですか?」
「我か? 我はな、歌を歌ってみたいな! 無論、このメンバーで!」
「ははっ。だってロビンは大スター目指してるもんな?」
「……ん。あまり茶化すでないぞ、ルイボーイ……」
そしたら珍しく? ロビンは恥ずかしそうに顔を伏せるのだった……ちょっとだけかわいいのやめーや。
『草』
『かわいい』
『夢知っちゃったら、応援したくなるよな』
『頑張れロビン』
「じゃあレイはどうだ? 何かあるか?」
「うん! 私はね……みんなでゲームでやりたいな!」
「ゲーム? それなら今からでも出来るけど……?」
俺はモニター前に置いてある、家庭用ゲーム機『スニャッチ』の方に視線を向けた。そしたら彩花は、自分の髪をくるくる回しながら。
「あー、もちろん類がいつもやってるゲームも良いんだけど……ボードゲームとか、実際にゲームセンターとかに遊びに行くのも、悪くないんじゃないかなって思って!」
「ほう。それは面白そうだ」
「私もレイさんと一緒にプリクラとか撮りたいです!」
なるほど……確かにそれは楽しそうだけども。
「良い案だけど、今から遊びに行く訳にもいかないしな。俺はボドゲも持ってないから……とりあえず今日は、ウチにあるゲームでもいいか? ボドゲやゲーセンはまた今度ってことで」
「あっ、うん! それはもちろんだよ!」
「私も楽しみにしておきますね!」
『おお、楽しみだ』
『ボドゲ&ゲーセン配信来るー!?』
『期待しとくわ』
『これで生きがいが出来た!!』
こんなことを生きがいにはしてほしくないが……まぁそれだけ楽しみにしてくれる人がいるって、凄いことだよなぁ。そしてロビンは俺に尋ねてきて。
「それでルイボーイ。今から何のゲームをやるんだい? 四人で出来るゲームと言えば……やはりスマファイかい?」
「スマファイは類が強すぎるからダメ! イライラしちゃう!」
「あはは……じゃあ『まりもパーティ』でもやるか? 新作買ったけど、殆ど遊んでないんだよな……ぼっちだし」
そのパーティゲームのタイトルを聞いたカレンさんは、ピクリと反応を示して。
「あっ、まりパ! いいですね! 昔、姉とよくやってましたよ!」
「へぇー。カレンさんってお姉さんいるんだ?」
「はい! レイさんに似て、とっっても素敵な人なんですよ!」
「…………そっか!」
「るーいー? その間は何なの?」
『草』
『草』
『草』
『こわ』
『こわい』
『ひぇっ……』
「べ、別に……? じゃあ準備するから……適当にお菓子でも食べてて待っててくれ」
そして俺は逃げるようにその場から離れ……予め用意していた菓子盆を、皆が囲んでいる机の上に出したんだ。そのお菓子のラインナップを見た、彩花はボソッと。
「……あ、類がお情けで貰ったでお馴染みの、プレーンクッキーだ」
「だから、あれは実体験じゃないって言ってんだろ!! しばくぞ!?」
「ん、何の話だい?」
「ふふっ! きっと恋バナ配信のネタですよ! バレンタインにクッキーを貰った視聴者さんに対して、ルイさんがですね…………」
「カレンさん!! 解説しなくていいから!!!」
『草』
『草』
『草』
『草』
『何かさっきからルイ、イジられまくってるなww』
……それから俺はゲームの準備をして、四人でまりパをプレイしていったのだった。結果は俺の圧勝……かと思われたが、最後のボーナススターでまさかの彩花の大逆転勝利が起こったんだ。納得いかないけど、まぁ……人生ってそんなもんだよね?
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