第29話 おまじないをおしえてください!

 そして質問は無事に解決……? したので、彩花は次の質問へと移っていった。


「じゃあ進んで行くよ! 次はチョコレートハンバーグちゃんからのお便りです!」


「名前のセンスよ」


「レイちゃん、リリィちゃん、こんにちは!」


「忘れてる忘れてる」


 それイジってるのか、本当に俺のことを忘れているのか分かんないって!


『草』

『草』

『忘れられたルイ』

『不憫なルイ……』


 コメント欄には草が生えるが、相変わらず彩花は声色を変えず、読むのを続けて。


「私の小学校では、マジックペンで好きな人の名前を腕に書いて、それが消えるまで隠せたら両思いになるというおまじないが流行っています! 私もそれを試してみたのですが、両思いになることはありませんでした! だからレイちゃん達が知っている、両思いになれるおまじないがあったら教えてください! ……だって!」


「えっ、小学生!?」


 ペンネームと文面からは幼い感じはしてたが、小学生って……彩花はそんなリスナーも抱えているのか……!? ……というか、俺の配信だって小学生が見てたりする可能性があるのか……ああ。すげぇ時代になったもんだな。


 そしてリリィはちょっとだけテンションを上げて。


「ああー! 確かに小学生の頃とか、おまじないが好きな友達とかいたな! あたし、その子からよくプロフィール帳とかも書かされたぞ!」


「うわーっ、懐かしー! プロフ帳、私も持ってたよ! あっ、類はプロフ帳って知ってる?」


「存在は知っているよ。全然回ってこなかったけど」


『草』

『草』

『かわいそう』

『仲間だぞルイ!!!!』

『まぁ男子だしな……』


 いや、男子だからと言っても、普通に人気なヤツは沢山書かされてたぞ……? まぁ俺のプロフィールなんか知っても意味ないもんな! 紙がもったいないもんな!! 別に悔しくなんかないからな!!! 


 ……何で小学生の頃を思い出して、辛くなってんだ俺は?


「え、えーっと……話が逸れたね! おまじないの方法……リリィちゃんは何か知ってるのある?」


 俺を気遣ってくれたのか、彩花はプロフ帳の話は終えて、リリィにおまじないの話題を振った。そしたらリリィは、有名なおまじないをいくつか上げていって。


「えっと……アレだ! 消しゴムに好きな人の名前書くやつ! それを最後まで使えば両思いになるとか……あと絆創膏に名前書いて、薬指に巻くとか!」


「ああー! 知ってる知ってる!」


 懐かしいおまじないに、コメントは盛り上がる。


『あったなそんなのw』

『うわーやってたなぁ……』

『消しゴムのやつって、どこ発祥なんだろうな?』

『現在進行系でやってるワイ』

 

 更には現役のワイ君までいますと…… 青春だねぇ。


「類は知ってるおまじないある?」


「まぁ少しだけな。好きな人の写真を枕の下に入れるとか、好きな人と同じ文房具を使うとか……でも俺はそういうのあまり信じないタイプだし、やろうと思ったことすら無いけどな」


「ええー、そうなの?」


『ドライ』

『ルイっぽいな』

『まぁ男はそんなもんだよな』


 そもそも、おまじないって準備が面倒だし。あとそこまでして両思いになりたい人なんて、当時の俺にはいなかったからなぁ……。


「ま、でも……完全に意味の無い行為とも思わないけどな。例えばその消しゴムも誰かに見られて、それが本人に伝わったら何か進展するかもしれないし。絆創膏も『怪我してるの?』みたいな会話の種になるかもしれないしな」


「いや、バレちゃ駄目なんだよ! 効力が無くなっちゃうから!」


「そうなの? 何の効力?」


「えっと……何かのだよ!」


「……」


 じゃあやっぱ意味なくない……? まぁ、おまじないって一種の自己暗示みたいなモノだし。どんな工程であれ『やった』という事実があれば、無意識にその好きな人へと繋がる行動を取るものなんだろうか。じゃあやっぱり意味が無いとは言えないのか? 


 ……って何で俺は小学生のお便りに、ここまで真剣に考えているんだ?


「うん、まぁ……どんなおまじないよりも、積極的に好きな人へアピールすることが、一番効果があるんじゃないでしょうか。ということでハンバーグカレースパゲッティさんも、好きな人の前に消しゴムとか落としてみてください」


「あっ、ルイがまとめた!」


「あははっ! 類らしい答えで良いかもね! ……名前間違えてるけど」


「あ、ごめん……チョコレートinハンバーグさんだっけ?」


「inするんじゃない、ルイ!」


『草』

『わざとだろお前w』

『これ解決したのか?』

『おまじない上げたしセーフ』


 まぁ解決したかはさておき、綺麗に着地したから良しとしよう……そして彩花は次のお便りへと進んでいくのだった。


「よし、じゃあ次にいこうか! 次は……おっ、レイボーイからのお便りだね! すっぱい葡萄くんからのお便りです!」


「なんか食べ物の名前多くない?」


「レイさん、ゲストのリリィさん、ラーメンマンさんこんにちは!」


「おい」


『草』

『草』

『草』

『草』

『草』

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