第28話 陽キャの光
──配信開始の時間が近づいてきた。俺はレイの配信ページを開いて、モニターにコメント欄を表示した。コラボ配信だからか分からないが、その勢いは凄まじくて……俺の初配信を思い出すくらい、待機のコメントは大量に流れていたんだ。
「ひょぇーっ……もう1万人も集まってるのか……!」
『普段はこんなに集まらないから、きっと二人のお陰だね!』
『いいや! レイがこんな面白い企画を用意したからだぞ!』
多分、両方の力が働いてこうなったんだろうな……いわゆる相乗効果ってヤツだ。
『ふふっ! ありがと、リリィちゃん! じゃあもう時間になったし、始めよっか!』
『ああ!』
「分かった」
そして彩花は配信待機画面から遷移して、準備していた俺ら三人のキャラクターの立ち絵を表示したのだった。
──
「やぁやぁ、みんなこんにちはー! 闇属性魔術師のレイ・アズリルだよっ!」
放送が始まるなり、先陣を切って彩花は挨拶をする。レイのホームだからか、レイガール&ボーイの挨拶コメントはよく目立っていた。
『こんレイ!』
『こんばんはー!』
『こんれいー』
『こんれい!!』
『待ってたー!!』
「今回は恋バナ配信ってことで、特別ゲストを呼んだんだー! まずはリリィちゃんから自己紹介お願い!」
「はーい!! スカイサンライバー所属、夕凪リリィ参上! ということでリリィだ! 今日が楽しみで全然寝れなかったから……楽しみだぞ!」
リリィの挨拶でまたコメントは勢いを増す……リスナーって忙しいね。
『参上!』
『参上!』
『さんじょー!!』
『楽しみ過ぎだよリリィちゃんw』
『ちゃんと寝てね~』
「そして最後は!」
「……あい、どうもルイ・アスティカです。よろしく」
『草』
『よぉ』
『出たな』
『あ、ラーメンの人だ』
『喋るだけで面白い男』
『こんレイリリィ!』
……何か俺だけコメントの反応おかしくない? 確かにここに俺がいるのは、場違いだけども……もう少し優しくしてくれてもいいんじゃないか? なぁ!
「今日はこの三人でやっていくよ! 複数人で恋バナ配信するのは初めてだけど……多分何とかなるから安心しててね!」
「正直、俺は不安なんだけどな……」
「えへへっ! それは大丈夫だぞ、ルイ! 三人寄れば何とやらって言うだろ?」
「まぁな……ちなみにリリィ、恋愛相談の経験は?」
「全くないぞ!」
……うん。予想通り過ぎて驚かないや。だってリリィに好きな人とか教えたら、次の日にはクラス中に知れ渡ってそうだもんね……凄い偏見だけど。
「まぁーまぁー、それはやってみたら分かるってばー! とりあえず、一通目のお便り読んでみてもいい?」
「ああ、いいぞ!」
そしてオープニングトークを終えた彩花は、自然に進行していって……早速、恋バナ相談コーナーへと入っていったんだ。
「えーっと。レイガールのモンブランちゃんからのお便りだね! じゃあ読むよ! ……レイちゃん、リリィちゃん、ルイちゃん、こんにちは!」
「俺、女の子だと思われてる?」
『草』
『草』
『草』
『ルイちゃん!?』
『お前、いつの間に……』
危ない危ない、あんまり自然に読み上げるもんだから、思わずスルーしてしまうところだったよ……そんで彩花は俺のツッコミも気にせず、お便りを読んでいく。
「私は女子高生で、同じクラスに好きな人がいるのですが、どうやって想いを伝えたらいいか悩んでいます。成功する確率の高い告白の方法を教えていただけると幸いです! ……だって!」
「なるほど。シンプルだけど一番難しい質問だよなぁ……」
事前に聞いてはいたが、最初にこの質問を持ってくるのは予想外だった。成功確率の高い告白方法なんて、こっちが知りたいくらいなんだよなぁ……。
「告白の方法は永遠のテーマだな!」
「そうだねー。とりあえず告白の方法を上げていってみない?」
「いいね」
彩花の提案に乗った俺は思いつく限り、告白の方法を上げていった。
「んーと……直接会って言う、電話で伝える、メッセージで伝える……」
「ラブレターって手もあるぞ!」
「友達に伝えてもらうってのもあるね! 後は……場所やシチュエーションも結構大事じゃないかな?」
「ほーん」
『デート中に言うのは?』
『観覧車は逃げ場ないからオススメ』
『そりゃもう屋上からよ』
『机にラブレターでイチコロよ』
コメントも様々な案を出してくれるが……何かセンスが古くない? ……って言ったら怒られるかなぁ。ここは素直に黙っとこう……。
「じゃあ、どの案が良いと思うか一人ずつ上げていこうよ! 類はどの方法が良いと思う?」
ここで彩花が俺に振ってきた。うーん……難しいが、ひとつ上げろと言うのなら。
「そうだなぁ……消去法にはなるけど。やっぱり直接会って言うのが一番いいんじゃないかなって、俺は思うよ」
「へぇー意外だね! 理由は?」
「だって……他は危険じゃないか。ラブレターなんか出したら、見せびらかされる可能性があるし、メッセージはスクショされて拡散される可能性がある。電話は通話履歴が残るし……友達に頼むなんか、もってのほかだよ!」
『ん?』
『おっと』
『流れ変わったな』
『内なる陰キャのルイが出てきたな』
『陰ルイ』
「類……考え過ぎじゃない?」
「いいや、学生の告白って命懸けなんだよ! だからいかに他の人にバレないように告白するかが大事なんだ! 『アイツ誰々に告ったけどフラれたらしいぞ』なーんて噂された日にはもう!! もうッ!!!!」
『気持ち入りすぎてて草』
『実体験?』
『でも気持ちはスゲー分かるよ』
『成功することを考えてないのが、ルイらしいな……』
「んー。じゃあレイはどの方法が良いと思うんだ?」
これ以上俺を喋らせないようにしたのか分からないが、リリィは彩花に話を振った。そしたら彩花は少し考える素振りを見せて。
「そうだなぁ。私は直接言われるのも嬉しいと思うけど……ラブレターも素敵だと思うな!」
「どうして?」
「だって自分の為に時間を掛けて、わざわざ書いてもらった物なんだよ! 貰って嬉しくないことなんかないよ!」
『うんうん』
『いいねー』
『確かにそうだよね!』
『この時代にラブレターはポイント高いよな』
『手間がかかってるもんね』
コメントは好評みたいだが……ラブレターって一長一短だと思うんだよなぁ。文才だって必要だし、そして何より……。
「いきなり送られてきたら怖くない?」
「そう? サプライズみたいで嬉しくない?」
そりゃ好きな人から貰ったら嬉しいだろうけどよ……まぁこれ以上は言わないでおくか。敵作りたくないし。
「じゃあリリィは?」
最後に俺はリリィへ振ってみた。そしたら……予想外の返答が来て。
「そうだな……正直、あたしはどんな方法で告白してもいいと思うんだ!」
「えっ?」
「これは質問の答えになってないかもしれないけど……告白なんて成功する時はするし、失敗するから! だからオマエのやりやすい方法でやったら良いと思うんだ!」
『草』
『でも確かにそう』
『ぶっちゃけ告白方法なんて誤差だよな』
『リリィちゃんらしい答えだ』
『ある意味一番いい答えかもな』
「でも……オマエはとっても勇気ある行動をしようとしてるから、自信持っていいぞっ! それで、結果が分かったらあたしに教えてくれよな! もし駄目だったとしても……励ましてやるから! その時はまた、あたしのとこ来てくれよな!」
『泣いた』
『良い子だ』
『勇気付けるのホント上手いな』
『本当にリリィちゃんは優しいね!』
完璧過ぎるリリィの答えに、俺らは何も口を出せなかった……そんな俺らを不思議に思ったのか、続けてリリィは俺らに呼びかけて。
「……ん。急に黙ってどうしたんだ、二人とも?」
「眩し過ぎるよっ、リリィちゃんっ……!!」
「こっ……これが本物の陽キャってヤツかッ……!?」
『陽キャの光に照らされてダメージ負ってて草』
『しっかりしろ、魔術師組』
『やはり闇に光は効果バツグンか……』
『ひょっとして、リリィちゃんが一番参考になるのでは?』
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