第27話 三人のゆるゆる打ち合わせ
それから配信を切った俺は、つぶやいたーでチャンピオンを取った場面のスクショと、来夢さんへのお礼メッセージを呟いた。内容は『来夢さんのお陰で勝てました!! ナイスゲーム!!』である。
……で、どうやらその呟きは来夢さん本人にも届いたみたいで『ルイ君も上手だったぞー』とリプが返ってきた。それに対して俺は感謝の絵文字を返信すると、グッジョブのポーズをする来夢さんのGIF画像が送られてきたんだ……あ、来夢さんって3D化してたんすね。
まぁ来夢さんは人気VTuberだし、そうなるのも必然か……ちなみにこのつぶやいたーのやり取りは、ちょっとだけバズったらしい。
更に後日、来夢さんは俺とマッチした試合の動画を上げてくれた。続けて、それと俺の配信を同時再生した切り抜き動画まで上がったようで、またちょっとだけ俺が話題になったんだ。そのお陰で、俺のチャンネル登録者も一気に5000人近く増加したらしい。本当に来夢さんには頭が上がらないぜ……!
──
そんな感じで、一週間後。今日が彩花と約束していたコラボ配信の日である。バイトから帰って来た俺は休む間もなく、そのまま彩花が用意していた通話部屋に参加した……そこには既に二人とも揃っていたみたいで。
『おっ、類も来たねー。バイトお疲れさまだよー』
俺が入って来たのに気づいた彩花は、いつもの緩い挨拶を交わしてきた。
「あんがと。ちょっと遅れてごめんな」
『いいよいいよ! 私が30分前に来てって、無茶なお願いしたからさー?』
そう。彩花は配信の30分前に、この通話部屋に参加しておいてとメッセージを送ってきていたんだ。多分リリィの方にも送っていたのだろう……詳しい理由は聞いていないが、多分打ち合わせみたいなことをするつもりなんだろうな。
俺は別にぶっつけ本番でも構わないのだが、人にはそれぞれ配信のやり方ってものがあるからな。彩花が必要だと言うなら、俺はそれに従おう……。
『おはよー! ルイー!! 久しぶりだなー!!』
突如、俺のイヤホンからはびっくりするくらい元気な声が聞こえてきた。彩花は比較的明るい方なのだが、リリィはそれを遥かに超えてる性格をしてるよな……ああ、もちろんこれは褒め言葉だぞ。
「おお、リリィ。元気にしてたか?」
『ああ! あたしは元気だぞ! 最近のルイの配信が楽しみだからだな!』
「えっ、どういうこと?」
『ルイの配信は毎回面白いからな! 見たら元気になるんだ! だから存分に誇ってくれ!』
「えっ、ああ、うん……ありがとな!」
こうやって直接言葉で褒められるのは久々のことで、小っ恥ずかしくなってしまう……今更だけど配信って、他のライバーも見てたりする可能性があるもんな。それを意識すると緊張して、何も喋れなくなりそうだ……。
『ふふっ! でも面白さなら、リリィちゃんも負けてないんじゃない?』
『そうか? あたしの配信なんか、ただずーっと喋ってるだけだぞ?』
『その話の中身が面白いんだよ! 昨日は何だっけ……公園で野球してた小学生の中に入れてもらったんだっけ?』
『そうそう! あたし、ピッチャーやらせてもらったんだ! あー、あと2点入れたぞ! 負けたけど!』
「いや、面白すぎんだろ」
一気にリリィの配信見たくなってしまったよ……やっぱり行動力はリリィには適わないな。でもリリィは俺の配信を面白いって言ってくれるし……まぁ、各々得意なことを伸ばすべきなんだろう。
『あははっ! それじゃあ二人とも、打ち合わせに入ってもいいかな?』
『はーい!!』
「ああ、いいぞ」
……そして俺らは彩花から配信の流れや、視聴者から届いた質問の内容を教えて貰った。彩花曰く、回答を考える時間を事前に与えてくれるらしい。確かに本番でずっと考えて黙ってたら、配信が成り立たなくなっちゃうもんな。
まぁ、時間掛ければ良い答えが浮かぶとは限らないんだけどね……恋の相談なんか、俺にされても困るんだよなぁ……。
『あっ、もちろん時間の都合で質問を変えたり、減らしたりすることもあるかもしれないから、その辺りは臨機応変にお願いね!』
「りょーかい」
『ああ!』
……でもまぁ、きっとこの二人なら何とかしてくれるだろう。とりあえず今の俺が出来ることを精一杯やっていこうかな。
『へへっ、楽しみだな! ルイ!』
「え? ああ、そうだな」
そういやリリィってコラボ配信は初か。一回しかしてないから、俺も似たようなもんだけど……そもそも幼馴染と一緒にゲームやっただけの放送を、コラボ配信と呼んでいいものなんだろうか……?
『じゃあそんな感じで! あとは配信時間まで待機かな!』
「うーい。じゃあちょっと部屋着に着替えてくるわ」
『あたしも飲み物取ってこようかなー!』
そこまで聞いた俺は立ち上がろうとした……が、直前に彩花に呼び止められて。
『あ、ちょっと待って! 言い忘れてたことがあったよ!』
『なあに?』「何だ?」
『配信楽しもうね! 二人とも!』
……あまりにも唐突な彩花の言葉に、俺は一瞬だけ言葉を失った。
「ははっ……それ、わざわざ呼び止めてまで言うことか?」
『いいや、ルイ! これは一番大切なことだぞ! つまんない顔してたら、すぐ視聴者に見抜かれちゃうからなっ!』
「VTuberなのに?」
『VTuberなのにだ!』
まぁ……確かに最近のアイトラッキングの精度は向上してるし、VTuberの表情も読み取りやすくなっているから……って、いや。彩花はそういった考えで、さっきの言葉を口にしたわけじゃないだろう。ただ単純に、俺らの雰囲気を良くするために。そして本当に楽しんでもらいたいから、そうやって言ったんだろう。
そう思った俺は、これ以上余計なことは考えず「そうだな、楽しもう!」と口にした。そしたら二人も続けて『うん!』『いえーい!』と続けてくれたんだ。
──そんな良い雰囲気で打ち合わせは終わり、俺は着替えやら飲み物やらを準備をしていったんだ。配信はもうすぐだ。
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