第26話 今回のチャンピオンは……?

 ──そんなこんなで最終ラウンド。ここまで生き残るのは久々で緊張するけど……いや。この緊張はチャンピオンを取れるかどうかじゃなくて、来夢さんの足を引っ張らないで済むかどうかの緊張だよなぁ……。


 ……えっ? 既に足引っ張ってるだろって? そんなの俺が一番分かってるよ……お黙り!!!!


「さて……残りは何部隊だ?」


『3』

『3』

『3やね』

『右上に表示されてるよ』


 コメントの言う通り、右上には残り部隊数が表示されていた。数字は3……要するにだ……。


「3部隊ってことは……俺らを除いてあと2部隊ってことだな!」


『正解』

『天才』

『よく分かったね!!!』

『さすが首席』

『よっ、日本一』


「なーんか褒められてる気がしないなぁ……」


 そして左下のチャットには、来夢さんからの新しいメッセージが。


『gyohurou』


「漁夫ろう……うん、今度はこっちが漁夫る番だね、了解!」


『呂布だぞ』

『呂布ですよ』

『劉備ね』

『曹操な?』


「変なテンプレを増やすんじゃない、お前ら……!」


 そして来夢さんの予想通り、残りの2部隊が衝突したらしく、撃ち合いを始めた。こいつらが戦い終わった瞬間に、俺らは詰めて漁夫ればいい……落ち着け……まだだ……まだ待機だッ……!!


【残りはあと1部隊だね】


 ここでバズが、残りの部隊数がひとつであることを知らせるボイスを発した。よし、今だ!! 俺は敵へと詰め寄ろうとした……が、来夢さんはそのまま遮蔽物に隠れたままでいた。えっ? まだ攻め時では無いのか……?


 ……いや、違う! 来夢さんは俺に見せ場を与えようとしてくれてるんだ! 相手は体力が削られてるし、こちらには気づいていない……つまり、俺でもキルが取れる可能性がある! 俺のキルでチャンピオンになって終わるよう、美味しいところを譲ってくれてるんだ!! 


 即座にそれを理解した俺は、一人で敵に向かって突っ込んで行った。


「うおおおおおおおおおおお!!!!」


 そして俺は敵の背後から、サブマシンガンをぶっ放した。相変わらずエイムはブレブレだったが、予想通り敵の体力は削られていたみたいで……俺が撃ち勝ったんだ。


「よっしゃあ!! 勝った!!!!」


『まだ』

『あと一人残ってる』

『終わってない』

『まだ笑うな!!』

『白い歯を見せるな!!!』


「……って、うわぁあああッ!! もう一人いた!!!!?」


 ……だが、俺が討ち取った敵の仲間はまだ生きていたようで、ホッとしていた俺に容赦なく発砲してきた。クソ、ここで負けるかよ……!!


「グッ……負けてたまるかぁぁッ!! 引くな、退くな、ルイッ!!!」


 バァン。


【ダウンした。救助をお願い】


「どうぁああああぁぁぁあああん!!!!」


『草』

『草』

『おしい』

『うっさいwww』

『頑張った方だよ』


 惜しくも打ち負けてしまった俺は、来夢さんに後を託した……が。来夢さんの行動は、全く予想外のもので。


「ごめんなさい、来夢さん!! 後は頼みました……って、何で俺を蘇生してるんですか!!??」


『草』

『草』

『草』

『草』

『きっと二人で勝ちたいんだよ』

『まだ戦える!!!! 立て、ルイ!!!』


「いや、敵来てるんじゃ……! って、やっぱ撃たれてない!?」


 来夢さんは敵から撃たれてるが……途中で止めることなく、俺の蘇生を続けていた。


「どっ、どうしてそこまでして俺を……!?」


 そして何とか俺は復活した……だが依然として俺の体力はミリ。撃たれて来夢さんの体力も減っているから、どうにかしないと…………あっ、そうだ!! アビリティを使えばいいんだ!!!


「す、スモーーク!!!!」


 ここでハンカのアビリティを思い出した俺は、スモークランチャーを発射し、敵の射線を遮った。よし、これで多少は時間を稼げる……!


「一旦引いて回復するか……? いや、ここでチキる訳には……!!」


 せっかく蘇生してもらったんだ。これ以上ダサい真似は出来ない。それに相手は俺と来夢さんに連射して、弾が残っていないはず……残っていたとしても、確実にリロードが必要だ……だから、ここは詰めるのが正解なんだ!!!!


「……攻めるぞ!! プッシュだ!!」


『え』

『うそ』

『マジで?』

『いけええええええええ!!!』


 覚悟を決めた俺は、スモークの中を駆けていった。そしてスモークを抜けた先には、回復中の敵が。俺に気づいた敵は回復を中断し、虚空に入るアビリティを使用し、逃げようとするが……。


「逃すかぁ!!!」


 俺は執拗に相手を追いかけ、そのアビリティが切れたその瞬間に……。 


「喰らえッ……ショットガーーーーン!!!!」


 魂のショットガンを放った。その弾は敵に命中したようで…………画面からは壮大な音楽と、チャンピオンの文字が。ああ……勝った。勝ったんだ、俺!!


「やった……俺らがチャンピオンだぁ!!!!!」


『うおおおおおおおおおおお!!!』

『ナイス!!!!』

『おめでとう!!!』

『きたあああああああああああああああああ!!』

『gg』

『gg』

『すげええええええ!!!!』

『やりやがった!!!』


 まるで大きな大会で勝った時のように、コメントは爆速で流れ続ける……そしてゲームチャットの方でも、来夢さんから『グッドゲーム』を意味する『GG!』というメッセージが送られてきたんだ。俺もチャットでお礼を言う。


『ありがとうございます、来夢さん!!』


 そして俺はコメント欄に向き直り、締めの流れに入ろうとした。


「えー……来夢さんに凄いキャリーされましたが。何とかチャンピオン取れました! 本当にありがとうございます!!」


『おめでとう!』

『ルイも頑張ってたよ』

『面白かった!!』

『やっぱ持ってるよお前』


「じゃあ気分も良いし……今日はこの辺で終わろう! またな、みんな!」


『おつー』

『おつルイー』

『おつルイ』

『今日も神回だったな』

『楽しかった!!』

『今回も最高だったぜ』

『次の配信が待ちきれないよ!! ルイ!!』


 そして一通りコメントを眺めた後……俺はにやけ顔のまま、配信終了のボタンをクリックしたのだった。


「…………へへっ」

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