第18話 謝罪配信RTA

『何でですか!? ルイ君はつぶやいたーで謝罪をすればいいんですよ! 何で自ら傷をえぐりに行くようなことを……!』


「それは分かってます。でも……こんな百何文字でじゃ、指先だけじゃ、俺の言葉は伝えられないんですよ!」


 俺はどっかで聞いたことのあるような、熱い台詞を繰り出した……のだが、根元マネージャーの反応はイマイチで。


『あの……カッコいいこと言ってますけど、謝罪配信するってことですよ? それでまたルイ君がネタにされたり、切り抜かれてMADにされたりするってことですよ。それでいいんですか?』


 しれっとMADとか言わないでよ……でももうキャラ崩壊してるし、今更そんなこと心配しても仕方ないんだよなぁ……!


「……いいんです。俺はもう何も失うものは無いんですから……!!」


『そう言われると逆に怖いんですけど……はぁ。分かりましたよ。じゃあ好きにしたらいいじゃないですか。何かあったら、私も一緒に頭下げてあげますから……』


「えっ、ホントですか……!? ありがとうございます、ネモさん!! 一生ついて行きます!!」


 俺を信用してくれたのが嬉しくて、つい俺は大きな声を出してしまう……それを聞いたネモさんは、若干呆れ気味に。


『多分その言葉、私が言う側なんですけどね……あと変なあだ名付けないでって何度も言ってるじゃないですか』


「あ、ごめんなさい……でもネモさんって、呼びやすくないっすか?」


『その二文字はもう、○ンダムかプロゲーマーかの二択なんですよ』


「…………へぇ、そうなんですか!」


『絶対伝わってないなこれ……はぁ。それじゃルイ君、今回は切り忘れないでくださいよ?』


「あはは、もう大丈夫ですよ!」


『やっぱり不安だなぁ、この子……』


 ────


 そして俺はマネージャーとの通話を切り、配信を始めたんだ。とりあえずつぶやいたーには、この配信のリンクだけ貼り付けておいた。


 そしたらみるみる内に人は集まってきて……平日の昼だというのに、5000人近くの人が俺の配信に押し寄せたんだ。


『なんだなんだ』

『ゲリラ配信!?』

『よかった、ちゃんと生きてた』

『ルイルイ待機』

『会社のパソコンから見てます!』


 お願いだからちゃんと仕事してくれ。まぁ昼まで寝ていた俺が言えたことではないんだけどな……よし、そろそろ喋り始めようか。


「……あー。あーあー。聞こえるでしょうか。どうも、ルイ・アスティカです。まずは昨日、配信の切り忘れにより、大変お見苦しいところをお見せしました……本当に申し訳ございませんでした!!!!!」


『草』

『初手謝罪は面白すぎる』

『スカサン内で誰よりも先に謝罪配信を行った男』

『謝罪配信RTA』

『キャラ崩壊早かったなぁ……』

『ラーメン啜っただけなんだし許してあげなよ』

『別にルイは悪いことしてないんだよなぁ……』


「それで今後はこういったことがないよう、十分に……アレします! えっと……指差し確認とか!」


『草』

『現場猫かな?』

『もう少し考えてから配信しなよwww』

『それだけ早く配信したかったんでしょ』

『もしかしてルイくん寝起き?』


「えー、それで非公開にしていた、初配信のアーカイブも公開しました! 多分もう見れるようになっていると思います!」


『ありがとう』

『途中までしか見れてなかったから助かる』

『ラーメンのシーンは?』

『啜るー!! のシーンはカットしないでください!!!!!』

『何のラーメン食べてたんですか!!』


「ラーメンラーメンうるさいよ君たちは!!」


『だって気になるもん……』

『俺もルイと同じラーメン食べたい』

『今日のお昼はラーメンにしたいと思います』

『ちゃんぽん選んでも、ルイ君は僕のこと嫌いませんか?』


「だから俺はラーメン系VTuberじゃないって言ってるだろ!! はぁ……昨日食ったラーメンの名前言ったら、お前らは大人しくしてくれるのか?」


『うん』

『いいよ』

『知りたい』

『大人しくするから教えて』


「分かったよ……『うまうまとんこつ改』だよ。これで満足か?」


 俺がそう言うと、大半のコメントは困惑し始めたんだ。


『?』

『え、知らない』

『聞いたこと無い』

『どこで売ってるのそれ?』


 だがそんな中、一際輝くコメントが俺の目に入ってきて……!


『ああー。確かそれ、九州限定のヤツだろ? うまとんは俺も好きだよ』


「おっ、そうそう! よく知ってるなぁーお前! あのこってり感は、このラーメンが一番なんだよ! でも九州限定だからと言っても、取り寄せたらどこでも食べられるし、それに袋麺も発売しているから、こっちの方がコスパ的にもお得だぞ!」


『急に早口になって草』

『オタク特有の早口』

『やっぱりラーメン系Vだろお前』

『ラーメン系の割に見た目がカッコ良すぎる』

『そんな格好でラーメン作るな』


「だから俺は魔道士だって言ってるだろ!!! あんま舐めてるとお前ら焼き尽くすぞ!?」


『おっ、火力上げてくれるの助かるねぇ!』

『はい、バリカタ一丁!』

『らっしゃっせー!』


「コメント欄でラーメン屋開くなぁ!!!」


『草』

『草』

『草』

『草』

『ルイ君がラーメン屋でバイトしてるファンアートください』

『ルイのラーメンで笑顔になるレイちゃんもください』

『よしきた』


「絵描きまで腰上げちゃってるよ!! 何か見たことあるよ、この人!」


 聞いたことのあるイラストレーターがコメント欄に出没したようで、俺の視線はそっちに向けられた。そんな中、更に見たことのある名前と美少女アイコンが下から現れてきて……。


『ルイ! あたしにもラーメン作ってくれ!』


『え、リリィ!?』

『本物!?』

『本物だぁああああああ』

『リリィちゃん来てる!!』

『これでヤバい同期の二人が揃ったな!』


「…………なんでリリィまで来てんだよおおおおおおお!!!!」

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