第4話 神回、終了

 ……それから何回か対戦を行った。結果はまた全部俺の勝ちだったため、俺には大きな縛りが設けられたんだ。


「はぁっ……次はハメなし、即死なし、アツヤ禁止、アイテムは全部こっちのものね……?」


「どんだけ勝ちたいんだお前」


『これレイが勝つまで終わらないやつ?』

『朝までコースじゃねぇか』

『耐久配信ってここで合ってます?』


 このままズルズルと配信を続けても構わないけれど、もう2時間は経ったし……視聴者のことを考えると、そろそろ終わっておくのが丁度いいだろうな。


「レイ、次で最後にしよう。泣きの一回も無しな」


「え、いいよ……! 絶対に勝って終わらせてやるからねっ……!?」


 未だに闇レイ化している彩花は、変な喋り方でキャラを選択した。変わらずキャラはアツヤ。アツヤを禁止されている俺は、高いジャンプ力が強みの鳥キャラ『ランバル』を選択した……まぁアイテムありなら、彩花にも勝機はあるだろうか?


 ステージも変わらずオメガ。そして試合開始の合図が鳴るなり、彩花の扱うアツヤは俺のランバルに向かって突進してきたんだ。


「だぁぁあぁ!! 私のダッシュ攻撃を喰らええええええっ!!」


「見え見えだって」


 俺はそのキックをジャストガードし、アツヤを掴んで空中に上げ、お手玉コンボを決めていったんだ。


「だぁああーーっ!! コンボなし!!」


「無茶言うな」


『こんなレイ見たくなかった』

『ルイ君が冷静すぎてウケるんだけど』

『コンボなしはさすがに草』


 そしてランバルのコンボ中、召喚アイテムが落ちてきたのを見た彩花は叫んで。


「アイテム私ね!?」


「……」


「アイテム私ね!!??」


「聞こえてるって」


 笑いながら俺はコンボを完走し、ノーダメージで相手の残機をひとつ減らした。


「くぅーっ……! 次はコンボなしだからね……!?」


 言いながら彩花のアツヤは復帰台から降りて、のそのそと召喚アイテムを取りに行こうとした……が、もちろんこのアイテムにも欠点はあって。それはお助けキャラを召喚する間、一定時間の硬直が必要になるという所だ。つまりその間は無防備かつ、キャンセルも不可能……だからこんな悪用も出来るわけで。


「……今だな」


 俺は相手のアツヤが召喚アイテムを掲げている最中に、遠距離からブラスターを連射していったんだ。すると相手のアツヤは一瞬だけ怯んだ後、またアイテムを掲げるモーションを行う。その間に次に放ったブラスターがまたヒットし、アツヤは怯んで動けなくなる。そしてまたアイテムを掲げて…………以後ループ。


「ンなあぁああっっ!!?? ちょ、類!! ハメでしょこれ!!?」


「レイがアイテム取らなきゃ、こんなことは起こらなかったのに」


「どっ、どうやって抜けるのっ!!??」


「俺のBボタンが効かなくなるのでも、祈っとけばいいんじゃない?」


『草』

『草』

『草』

『草』

『これは草』

『wwwwwwww』


 ま、このままブラスターを続ければ、タイムアップで俺の勝ちになるが……流石にそんなダルいことはしたくない。俺はそこそこダメージが溜まったところで、アツヤを開放してやったんだ。


「あぁ、やっと抜けれた!! やったぁ!!!!」


 なんか自分で抜けれたと勘違いしてるけど……まぁ黙っておこう。


「さて……反撃開始といくよ、召喚ッ!!」


 そして邪魔が入らなくなったアツヤは、やっと召喚が出来たのだった。その召喚アイテムから出できたキャラは……サイコパス料理人『ヤマザキ』だった。


「いっけぇえええヤマザキ!!! 全て喰いつくせっ!!」


「作る方だろ」


 冷静なツッコミを繰り出しながら俺は、ヤマザキの投げてくる皿を避け続けた。


「あはははっ! この弾幕、近づけないでしょ!?」


 言いながら彩花はヤマザキと一緒に攻めてくるが……やっぱり詰めが甘いんだよなぁ。俺はランバルが持っている必殺技『リフレクター』を繰り出したんだ。


 この技は相手の飛び道具を跳ね返す技……要するにヤマザキの投げまくる皿が、ダメージ倍率を上げて相手に反射することになる訳で……後はお分かりだろう。


「……えっ、きゃぁぁぁあああああっ!!!!???」


 急に跳ね返された皿に対応できず、それは彩花のアツヤに命中した。そしてダメージが溜まっていたアツヤは、物凄い勢いで場外まで吹っ飛んでいくのだった……その後、画面中央には『ゲームセット』の文字が。


『流れが完璧過ぎる』

『草』

『これもう芸術だろ』

『笑いすぎて涙出たわ』

『wwwwwww』

『神回過ぎる』


「……」


「……レイ?」


 ガクガクと身体を震わせている彩花に俺は声を掛ける……そしたら彩花は今日一番の大きな声で。


「……うぬああぁあーーっ!!!! ああ、もう今日の配信は終わりっ!! スパチャ読みは今度!! じゃあね、レイガール達!!!!」


『乙~』

『おつレイー』

『おつれい』

『草』

『レイボーイ忘れんなって』

『マジで神回だった』

『面白かったよ!!』


 彩花は少し間を置いた後……配信終了のボタンをクリックしたのだった。


「おい……終わったのか?」


「……」


 彩花は無言で頷く……あちゃー。流石にやり過ぎちゃったか? でも撮れ高作るためには、あれぐらいする必要あったよなぁ……と俺が脳内で反省会をしていると、彩花は俺の肩をガッシリと掴んできて。そして屈託のない笑顔でこう言ったんだ。


「ホントに……最っっっ高だったよ、類っ!!」


「…………えぇ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る