2話-5 さて、害虫はどこかな・・・?
ダリアからホットラインで届いていたメールの内容を見て、やっぱりじゃんかとうんざりしながらトイレに直行する。個室に入ると画面をスクロールし、真っ黒いアイコンをタップすると電話が繋がる。
「あーもしもし?
了解の旨の知らせを受けとると通話を切り、今度は別の真っ白なアイコンを起動する。
「さて、害虫はどこかな……?」
ダリアが開いていたハッキングアプリを起動して監視カメラの権限を奪うと、ダリアから寄越された写真とAIで顔認証させて探し当てると、直ぐに結果が返ってくる。
「流石ショッピングモール。監視カメラめちゃくちゃ多いなぁ。助かるわ」
ハンドバッグから取り出したのは、角張ったサプレッサー内蔵型の銃――マキシム9と
「ダリア、ナビ頼んでいい?それと、駐車場に誘導した目標の死体回収も。あ、あとあの二人には言わないで」
『もちろん。早速だけどミッショングラスに表示されてる通り、トイレ付近に目標が一人いるわ』
ハンドバッグから取り出したARのミッショングラスをかけると、顔と地図に簡単な位置情報が赤点で示されている。
『監視カメラの情報を元に予測点を写してるから頼りにして、アインス』
アインスは答えずに個室から出て、人を探す
「あ……あのっ!」
目標の女に慌てたような声で話しかける。
「……なに?急いでるんだけど」
「あ……駐車場の方で家族が人質にされててっ!あなたを呼んだら解放するって言ってて……警察呼んだらすぐ殺すって言われているんです!」
目をギョッと見開いて、先ほどとは違う焦りの表情を見せる。
「アイツら……ッ!すぐ行くわ!」
「じゃ、じゃあついて来てください……っ!」
女はあまりの怒りにカツカツと足音を立てて早足でアインスについて行く。駐車場の扉を開き、女が通過して扉が閉まったことを確認するとアインスは突然立ち止まる。それを全く予測出来なかった女はアインスにドンとぶつかり険しい目線を向ける。
「どうしたの⁈早く連れて……ッ⁈」
気づいた瞬間にはもはや手遅れ。振り返ったアインスの手にはマキシム9が握られており、一言も発することなく頭部をパスっという音と共に撃ち抜く。赤いダリアの車が到着するのとほぼ同タイミングに駐車場から離れ、次の目標の始末に向かった。
ダリアは死体の脈を確認して既に心肺が停止していることを確認するとトランクに放り込む。
「ここまで僅かに三分。流石の手際ね。目標の集合予測時間まで残り六百秒。その間に仕留め切れるかしら……」
そうは言っているが、これで一度たりとミスを犯したことがないのがアインスなのである。
二人目、三人目と比較的始末しやすい場所で、ペン型のレーザーカッターで脳幹を焼き殺した。アインスは四人目の処理に奔走していたが、少々焦りを感じていた。なにせ、隠密作戦自体はかなり久々ということもあって手際が微妙によくなかったのだ。
四人目の男はわざとらしく人中を歩いていたので、ここはあらかじめ呼んでおいたSー3P直属部隊の救急車に仕事をしてもらうことにする。ハンドバッグから出血液凝固チップを投与して心臓発作による殺傷が可能な小サイズの注射器を取り出す。
目標の男が見えてくると、アインスはペースを落としわざと直撃コースを取る。相手の服装から一番布が浅そうな部分を判別し、次の瞬間通りすがり様にグッと差し込む。男は驚き振り返る――より先に倒れ込んだ。
近くにいた人々が驚愕の表情を上げる一方で、そのうち一人の男性が応急処置を始める。
「だ、大丈夫ですか⁈早く心臓マッサージを……!救急車呼んで!あとAEDと!」
それを聞いたアインスはスマホを高く掲げて叫ぶ。
「救急車呼びました!数分後に着くそうです!」
それを聞いてスマホを取り出した人々は一斉に見守る動作へ変更する。
(四つ目)
四人目の処理が終わり、さて五人目はどう始末するかと考え始めていた。目標の位置を確認すると、なんと予想より早く予想目標地点にいる。やはり、少し無茶が過ぎたかと思いながらアインスは足を早めて目標を目視できるところまで向かっていた。
杏香はまだ見習いである上、英美里はバンシーという立場の特性上暗殺任務を担えないし、ラゲナやヒペルを呼ぶ時間もない。そうなると自分一人で全て始末しなければならないからこんなことになるのだが。ここは無理を言ってダリアにも足止めくらいしてもらうべきだったかと、色々思考が駆け巡る。
屋内庭園の最上階デッキは制圧狙撃用のエリアになっているので、扉の鍵には一般的なマスターキーでは入れないような特殊な電子錠がかけられている。そこに飛び込んで電気も付いていない、天窓の陰で更に暗くなっているデッキから見下ろすと、目を疑うような光景が広がっていた。
「英美里……ッ⁈」
目標の男が英美里の頭に銃口を突きつけていたのだ。そして、更に驚いたのは、アインスの向かい側のデッキにスコープ付きのグロック17を構える杏香の姿があったことだ。
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