1話-6 水門の暁
その日の午後、消化された化学実験室から一人の少年の遺体が見つかった。
頭部が丸ごと破壊無くなった状態かつ、上半身が完全に無くなった上、下半身も火災で焼け焦げており、酷い状態だったという。
しかし、講堂から多数爆弾が発見されたことにより、全校生徒を狙った爆破事件の失敗で口封じをされたのではないかとして、捜査をしている。
「――そうみたいだな?」
夜中の八時。ニュース番組の報道のタネはもっぱら望海高校爆破テロ未遂事件で持ちきりである。料理がいっぱいに盛られた皿を両手にやってくる男、根岸夏樹がニュース番組のセリフを借りる。
「まぁ貴女たち二人のお陰で未遂に終わったわけだし、結果は上々よね」
酒を片手にそんなことを口走る技術担当の三十代の女、ダリア・ウェグレス。
「お手柄だったな」
黒髪の大柄で寡黙そうな男――コードネーム『ラゲナ』が姫奈の肩に手をぽんっと軽く叩く。
「アンタも懲役囚の癖に、中国で派手にやったんだって?」
「ふん。それはアイツに言え」
「いやぁ〜結構しっかりやったんっスけどね〜。
親指を立てて指し示したのはキッチンで今もメインディッシュを作っている気の抜けた陽気な男――コードネーム『ヒペル』だ。
「そーかなー、みんなの方が強そうだけど?」
ヒペルのノリに合わせるが如く返す姫奈を見て呆れる杏香。
「ま、でもマリナーズベイ・サンズ占拠事件をたった一人で解決したって
姫奈の耳がぴくっと動いて顔を俯く。
「……一客室に固まるよう誘導しなきゃ死んでたよ。
「だが、俺らの間ではアインス一人の成果ということになっているが?」
ラゲナが追求してこようとすると、夏樹が間に入る。
「あの事件は色々とあったのさ。事実、シンガポールではそれ以降一度たりと事件が起きていないし大勝利だよ」
姫奈は疲れたようにため息を吐いて続ける。
「美談の裏には悲劇ありってか……ハイハイ、わかってるよ」
夏樹の視線が厳しくなって、姫奈も退散する。
「とはいえ、どちらも危険ですよ……」
杏香がボソッと言うとそれを聞き逃さなかったヒペルが料理の手を止めてまで、頸の
「大丈夫っスよ。コイツがある限り絶対裏切れないんで」
――改めて
こんなことをするくらい、組織の秘密管理は徹底的である。
「それに、俺たちは組織の名すら言えないからな。どう考えても内部反乱は不可能だ」
ラゲナがそう指摘すると、姫奈は微笑んで頷く。
「世界治安は私たちが守らなきゃ、ねぇ?」
こうして一連の事件は幕を閉じたが、これは序章に過ぎないのであった。
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