第3夜 猫と障子(しょうじ)

「なんでだろうな」


「どうしたの?何か悩みごと?」


「いや、思い返していたのさ。障子しょうじというものをやぶる時の、あの感触かんしょくをね」


「ああ、あれは楽しいよね。障子しょうじを見るとぼく、すぐに穴をけたくなっちゃう」


「あ、君も?じゃあさ、どこで穴を開ける派?おれはやっぱり鼻づらで開けるのが好きだな。最初はさ、鼻を障子しょうじに押し当てるじゃない?するとそこがだんだん湿しめって来て、ふしゅって穴が開くあの感覚かんかくがたまらないんだよなあ」


「えー。僕はやっぱり、最初は前足を障子しょうじにそっと当てておいて、一気にツメを出してブスッって突き抜けて破るのが好きだなあ」


「何かみんな、ちびちびやってるんだね。私はやっぱり、白い部分ぶぶんめがけて全身ぜんしんで体当たりして、ズボッて大きな穴を開けつつ通り抜けるのが好き」


「いや、諸君しょくんの意見はよく分かるよ。楽しいよな。ものすごく楽しい、が、しかし、怒られるだろう?」


「平気だよ。その時は怒られるけど、ちょっとたてばみんなすぐに忘れちゃうよ」


「そうだよ。それにすぐに新しい障子しょうじえてくれるもの。そしたらまたやぶって遊べるよ」

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