完済

 ――翌朝。


 目が覚めてまずステータスを確認した。スキルを取り立てられる夢を見たからきっと……。


 やっぱり全ステータス0になってスキルも全部消えてるか。


 スキルポイントは……、-9410


 先は長いな、分かっていたことだが少々萎える。仕方ない、コツコツやるさ。




 * * *




 朝食の後、オウデルさんは狩りに出かけて行った。


 俺とアイリは一通り家事を終わらせた後、家の前にある畑へと向かった。


 雑草を抜いたり、害虫を取り除いたり、耕して畝を作ったりと必死に畑仕事をしていると、ふとアイリが何かに気付いたように立ち上がった。


 アイリの顔は青ざめていて、その視線の先にはダイアウルフ1体が立っていた。この前の白い奴よりもでかい。


 うろたえ、後ずさりしながら声をあげるアイリ。


「何で村の中にダイアウルフが!? 村の柵にはお守りもあるのに」


 ノエル、どういうことだ? 


「あのお守りが効かない程強い獣って事だよ。あのダイアウルフは上位種で群れのボスだね」  


 ダイアウルフはアイリに狙いを定めジリジリと距離を詰める。やっぱり女の子の方が美味しいとか?


「こいつ、この前の白いダイアウルフのつがいだよ。あの子がオウデルさんの娘だと分かったんだろうね。白いダイアウルフを殺された仕返しにアイリを殺す気だよ」


 ノエル、俺の絶対防御はアイツにも通じるか?


「通じるよ」


 ならば俺のやることは一つだけだ。


「アイリ逃げろ! ここは俺が止める」


「カイトじゃ時間稼ぎにもならないよ!」


「いいから俺を信じろ」

 

 俺はダイアウルフに突撃して体当たりをする。当然全くダメージを与えることはできない。それどころか、まるで岩にでも体当たりしたかのように全くびくともしない。その隙にアイリはその場を走って離れる。


 ダイアウルフは牙を剥き俺を睨みつけて吠える。


 凄く怖いが……、俺は絶対防御スキルのおかげで死なないはず。ダイアウルフを睨み返して、震える足腰に力を入れて仁王立ちした。


 ダイアウルフは如何にも強靭そうな太い前足を振るって俺を跳ね飛ばす。俺の身体は簡単に数メートル飛ばされてしまった。


 ダイアウルフは転倒して藻掻いている俺の身体に飛び乗ると、爪で引っ搔き、鋭い牙で喰らいつく。絶対防御スキルのおかげで怪我はしないがもの凄く痛い。


 俺は近くに落ちている石を拾ってダイアウルフを殴った。攻撃力0でも何度も殴っていたら少しづつ攻撃力が上がってダメージを与えられるはずだ。


 遠くの方でアイリがオウデルさんを大声で呼んでいるのが聞こえる。


 どれだけの時間ダイアウルフと格闘していただろうか、石を握った腕は疲労で上がらなくなっていたし、怪我はなくとも体のあちこちが痛すぎて意識が薄れてきた。もう限界だ、そう思ったとき――、


 突然ダイアウルフの体がどこかへ飛んで行った。


 やっとオウデルさんが来てくれたのか。殴り飛ばしたのか、投げ飛ばしたのかは知らないが、大きなダイアウルフは10m以上離れたところにドサリと音を立てて落ちた。この人、どんな腕力してるんだ?


 ダイアウルフは起き上がりオウデルさんに向かって行くが、オウデルさんは素手でぶん殴って一撃で倒してしまった。


 俺はオウデルさんが差し出した手を取って起き上がるが、緊張の糸が切れたせいかそのまま倒れ込んで意識を失った。




 * * *




 薄れた意識の中でいつもの声が聞こえる。 


 獲得したスキルをスキルポイントに変換して取り立てます。


 ……をスキルポイントに変換。取り立てました。……をスキルポイントに変換。取り立てました。……、……。


 不屈LV3……スキルポイント6000に変換。取り立てました。

 勇気LV2……スキルポイント3000に変換。取り立てました。


 差し押さえ中のスキルポイントを全て回収しました。

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