第39話 死なば諸共
カシューは腰を
戦闘で使用する時には、弦を耳の位置やそれ以上まで引く事の出来る
「クソッ――― 」
「―――ぐぁっ!! 」
「なっ⁉ おいフェルド、しっかりしろ、クソっおいフェルド!! 」
「ガハッ、マード俺…… は…… ゴブッ…… もぅ」
「ふざけんな立てフェルド、ダメだしっかりしろ、おいダメだ俺を見ろ」
「ガハッ、見えない…… 何も…… マード…… 何処にいる…… 」
鋭い矢は急所である胸の近くを深く貫いてしまっている。一見してもう助からない事は容易に理解出来た。虚ろな瞳を浮かべる友を抱き寄せ、見る見る染まり行く温かい血潮に、諦めきれない後悔の念だけが脳裏を
「そいつはもぅダメだ、行くぞ撤退だ」
「ふざけんな置いてなんて行けない‼ 」
「勝手にしろ、どうせお前等は使い捨てだ。その代わり秘密は死んでも守れ」
マードとフェルドは物心ついた頃から親は無く、貧しい村に捨てられていた。フェルドは病弱な妹の為、薬代を稼がなければならず、軍に入れる年齢までは様々な犯罪に手を染め、それこそ、たった1日を生き抜く為にその幼さ残る身体でさえも大人達に売り、生計を立てていた。
―――軍に入れれば薬が買える……
『俺が稼がないとレイラは助からない』
13歳に成るとフェルドは迷わず軍の招集に身を投じた。愛する妹を守る為に金が必要だった……。 そんな幼馴染のフェルドは、マードにとってもまた大切な唯一の家族であり、屋根も無い裏通りで支え合い
―――小さな明日を生き抜く為に……
マードにとって、フェルドとレイラは、守らなければならない唯一の家族だったのだ。そう、決して失っては成らない大切な家族だった。
「おい頼むよフェルド、お願いだ目を閉じるな」
「さ…… 寒いよ…… マード…… ガハッ レイ……ラを、レイラを…… 」
「あぁ、フェルド…… ダメだ、ダメだ、レイラを1人にするなフェルド…… グズッ 頼むよぉ、お願いだぁ。あぁぁ――― 」
守るべき大切な1つの命が、心の支えだった1つの命が、マードの胸の中で今
「フェルド―――――‼ あぁぁぁぁぁ――― 」
悲痛な叫びが夜空を
「クソッ、クソッ、あぁフェルド…… あぁ何で何でだ…… 神様どうして…… 何で俺達から全てを取り上げるんだ。返してくれ、フェルドを返せ‼ 」
―――殺してやる―――
多くを望んでは居なかった。3人でその日を生きて行ければ、他には何も要らなかった。共に泣き笑い、生きる為に、1つの毛布に3人肩を寄せ合い励まし合って生きて来た。そんなたった1つの願いすらも叶わずに、希望を奪われたマードは、血の
―――己の命を対価に、奪われた命を奪い返す……
火矢により、
≪いいかいナディラ、僕にこれから何が有ったとしても此処から出ない事。いいね? ≫
「ダメ‼ お願いカシューさん逃げて、お願い早く逃げて――― 」
カシューが
「ぐはっ――― 」
「がぁぁ――― 」
「フェルドを返せえええええ―――‼ 」
「くそっおぉぉぉぉ――― 」
脇腹を
「―――がぁぁぁぁぁ」
男は倒れたカシューを横目に、床の中央に掛けられた
「ぼっ僕を…… 殺すんじゃ無かったのかい?」
「あぁ…… お前をゆっくり殺してから俺も逝く。お前は俺の大切な物を奪った」
髪を
「 ―――かはッ」
薄れゆく意識の中で見上げた月は、徐々に
―――ごめんなさいグランド。
君との想い出は先に僕が持って逝くよ―――
荒れ狂う
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