第38話 石の物言う世の中
グランドは不安要素を抱えながら
石造りの円状の施設は、砦の1柱の最上階に位置し、天井はその文化の象徴とも
中心部は太い柱が天井を支え、就寝時の見張りが出来るよう、警備兵1人分の空間が柱内部に確保されていた。
砦は常時40人が交代制で警備に当たり、
休日は毎週金曜日となり、特別な意味を持つ休日とされていた。信仰と教義に基づき、金曜日は主要な礼拝日とされ、
「寝ている者は起床せよ‼ 君主の
中心部の太い柱で、兵士達の警護を担当する警備兵が、壁から砕けたタイルの欠片を踏み鳴らし号令を掛けた。
「先程の揺れを感じた者も多いと思うが、現在これが天災であるのか、または敵襲であるのか情報が乏しく、
グランドは取り急ぎ
「グランドさんだっけか? あんたの噂は聞いてるぜ、閣下の側近候補だってな? 言い方は悪いが、立ち位置も定まらないうちにもう士官気取りか? 」
「そうだそうだ、何処の馬の骨かも分からねぇ人間に従うなんてのは御免だぜ」
「
グランドは
「私は元レンイスタ
「これは脅しではない。
「勝手に何処かの甘ったれた貴族様だとばかり思ってた。悪く思わないでくれ。俺は元傭兵で、あんたと同じ異国人だ。安定した収入と、定住出来る場所を求めて
すると続々と
「そんな愛国心の欠片も持たぬ流れ者連中に、国を救われたとあれば
「すまない感謝致す。時間が無いんだ、取り急ぎ警戒と状況の確認を頼みたい。各班長は至急こちらに来てくれ」
「そうか、では聞くが設計図は何処だ? それとこの開発に関わっている助手を教えろ」
「―――――⁉ 」
「隠しても無駄だ。お前たちの研究はもう既に我々も把握している」
「いっ、一体何のお話でしょうか? 研究ならば
「その答えはお前をこの先ずっと後悔させる事になるぞ? おい! 娘の衣服を全部剥ぎ取り
「なっ!? 何を――― 」
衣服を全て切り裂き、娘を
「勘違いするなよ? これは取引では無い。言わなければ全員此処で
「んんんッ―――」
「ヴがぁぁぁッ――― 」
切断された美しい指は主から切り離されると、命尽きる芋虫のように
「あぁ、アンジェリカ、あぁ何と言う事を。何と言う事を……。お願いですもうお止めください、娘を傷付けるのはもう止めて下さいお願いします」
「ならばお前の誠意を見せるんだな、でなければ…… 」
「わっ、分かりました、話します、お話し致しますからどうか……。書斎の本棚の中の一冊に、こっ古代民族学の本が御座います。それを調べて下さい。鍵が出て来る筈です。その鍵で本棚の裏の隠し部屋へ入れます。あなた方が欲しがっている設計図は
部隊の隊長と思われる人物は、部下に
「娘の止血はお前がやれ、大事な娘なのだろ? 」
老年の男は拘束が解かれると娘を抱え込み、涙を浮かべ必死に止血を試みる。
「大丈夫、大丈夫だからな。私が付いているからなアンジェリカ、直ぐに手当てをしてやる」
「他に
拘束された者達に向け、最後の勧告を告げる。すると手入れの為されていない長い髪を振り乱し、左右の
「わっ、私は
「おっ、お前は何を言っているのか分かっているのか?
その発言を受け、隊長と思われる男が肩を
「がはッ―――」
「誰が口を開いていいといった?
「フヒヒッ、わっ私は貴方ががッが、思う程にぃ、かかか科学者なんですよ。きょッ教義にばかり縛られていては、ししッし進歩は望めません。歴史に名を残すにはアハッ、多少のぎぎッぎ犠牲は必要なんです」
「聞こうか。貴様の言う成果とはなんだ? 」
「イヒッ成果とは、いいッ
「ほう、貴様、保身の為に悪魔に魂を売るか? 」
「必要とあらばグヒヒ、ああッあ悪魔と呼ばれる研究にぃ身を捧げたくぞぞッぞ存じます」
「名は? 」
「ろろッ、ロイ・マルクスと、ももッも申しますイヒヒ」
「ふんっ、面白い。ならばお前も一緒に来てもらおう」
すると突然カシューにより、奇襲を知らせる
「頃合いだな。設計図を手に入れ次第撤退するぞ。博士とその家族と助手2名及び、このイカれた研究員以外は皆殺しにしろ」
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