グリーンエルド・奥地①


グリーンエルド、大分歩いた場所。

奥地と言っていいだろう。

まだまだエリアは奥にありそうだけど、とりあえずね。


……というか、奥に行けば行くほど広いから。このマップ。

そんなわけで――今のところ、奥地で出会ったモンスターは三体。


マンドラゴラ。

ワイルドボアー。


もう一体は名前を見る間もなく消えて行ってしまった。

自動車ぐらいの大きさで、かつとんでもない“早さ”ってことしか分からない。


あの体躯たいく……見間違いでなければ“馬”に見えた。


感覚でわかる。きっと“闊歩する大地グラウンド・トータス”と同じ部類だ。


……メモ取るのに必死で見逃した訳では無い!

まあいつか会えるだろう。多分。



「うーん、絵が下手!」

『コッ』



ゆっくりゆっくり進みながら。

手元のそれを眺め、呟く。




『マンドラゴラ』


レベルは27~30。

かの有名な、ロミオとジュリエットでも大活躍だったそれ。

引き抜いた時にソイツの叫び声を聞いたら死ぬ、有名な化け物。


が、このゲームでは死なないらしい。

死なないが、結構なダメージは食らう。ついでに状態異常で混乱もつく。


そして引っこ抜くまでもなく、近付いたら勝手に飛び出てくる。

自己主張が大変激しいモンスターである。

SNSやったら身を滅ぼすタイプ。



(挿絵:デカい根に葉っぱと顔と手足が付いた化物)





「おっ。噂をすれば……止まれ止まれ」

『コッ』



亀に捕獲罠を仕掛けまくり食わせまくり、もはやコイツは俺の相棒である。

なんせ一度も死んでいない。

お互いにね。そして――その一因として、この亀の存在にある。


特にこのマンドラゴラに関しては。

亀くん、捕獲罠ペッてしないでね(必死)。



「さて、雑草刈りだ……『罠設置』」





「じゃ、行ってこい!」

『コッ』



諸々の準備を完了。


指をそこへ指す。

目標は風になびかない、不自然なデカい葉。

俺が降りてから、トコトコと“それ”に近付いていく亀。


来るぞ……。



『■■■!!!』

『コッ』



亀がその葉に近付いた瞬間。

人間の断末魔をより酷くした様な、そんな不快音。


そして同時に――現れた。

でっかい1メートル程の人型の木の根。

口を開けて、叫ぶ様な表情をしたままこちらを向き突っ込んでくる。



『ボ……!』


《落とし穴が発動しました》


『ボ!?』



で、そのまま設置していた穴にホールインワン。

そして――



《巨大地雷が発動しました》

《巨大地雷が発動しました》


『ボォオオオ!!』

「燃えとる燃えとる」



《マンドラゴラ LEVEL27 状態異常:燃焼》



落とし穴の近くに設置していた、巨大地雷の餌食となり――燃えた。

やはり植物? とあってそれになりやすいようだ。



「『スコップスラスト』!」

『ボ』



《経験値を取得しました》



そのまま、小突いてやれば死。

地雷is最高(Q.E.D.証明完了)。


ちなみにあの葉には一切ダメージがないので注意。

埋まってる状態に地雷グレネード! 

ダメージゼロ!(無慈悲)。


ただ、体の一部だから割れて爆発はする。

その後地面からは出てくるから意味はない事はない。

だが葉っぱがない植物ってのは不気味だ。

しかも顔付き。ホラーである。



『コッコッコッ』

「よくやった」



亀が居れば一発地雷グレネードが節約出来るというだけだが――普段の狩りで瓶を消費するのは勿体ないし、この方法が一番だと思う。



『コッ』

「お前はマンドラゴラキラーだな。よーしよしよしよしよし」



撫でながら褒めてやる。

朧げな記憶だが、どこかのファンタジーじゃ犬を使ってマンドラゴラを発見させていた。

俺は動物愛好家って訳じゃないが、ちょっとこの亀に愛着湧いちゃったし、自爆特攻はさせたくなかった。


言い訳になるが、偶然だったのだ。

たまたまマンドラゴラに通り掛かった時、亀はそのまま歩き続け、俺だけ混乱状態になっていて。



「人に見られてたらヤバかったな」



亀の甲羅の上で暴れまくる成人男性。

浦島太郎も多分こんな感じだったんだろうね(適当)。


思えば亀は、人間の聴覚の20分の1以下しかないらしい。

要するにすっげー耳が悪い……マンドラゴラの叫び声が利かない程には。

コイツには『何かうっさいな』ぐらいなんだろう。



「……で、次は――」


『フゴッ、フゴッ……』



これは醜い人間ですか? いいえ、デカいイノシシです。


始まりの街に居たワイルドデグの進化系っぽいね。



《ワイルドボアー LEVEL28》



うるさい鳴き声に振り返る。

人の鼻息を100倍ぐらいにしたらこんな感じなんだろう。



「離れてろ」

『コッ』



大亀に手で遠くへ行くよう指示。

そして、目の前で地面を蹴る敵を眺める。



『ブオォ!!』



身体にオーラの様なモノをまとい、こちらへ突っ込んでくるワイルドボアー。


あの状態では、与えられるダメージが半分以上減る。かつ、スーパーアーマーと特定の状態異常の無効化。

仕掛けた麻痺罠も捕獲罠も意味がない。

あの“五倍地雷”でさえも、全く怯むことはない。


じゃあどうするのかと言えば――



「『高速罠設置』」


『ブオ――』


《落とし穴を設置しました》

《落とし穴が発動しました》



『ブオ!?』



頭から穴に突っ込むワイルドボアー。

その突進のエネルギーは、綺麗に自分に返ってくるというわけだ。



「イノシシに突進されても問題ない。そう、落とし穴ならね(キメ顔)」



ソレは、言うなればイノシシ特攻。

見ろ……あのピヨピヨ状態の哀れな彼を。



《ワイルドボアー LEVEL28 状態異常:気絶》



「……『スコップスラスト』! 『罠設置』……『スコップスラスト』!」


『ブヒッ!? ブホッ! ブオオ!』


「……」



この悲鳴の通り、弱点は尻である。


……まあ後は煮るなり焼くなりね。

ハメる為に、落とし穴を近くに設置しておくのを忘れずに。


パターンを組めばハメ続けられる。

コイツを相手にするコツは――ずばり、無心になることだ。



『……コッ』



おいカメこっち見んな! 仕方ないだろうが(恥)。

えっなんでそんな離れていくの?



《使役状態が解除されました》



「おーい!! 『スコップスラスト』!」

『ブホッ! ブオオオオ!』



捕獲罠の効力、切れるタイミング悪すぎだろ!

ああもうダメだ! あんなところまで!


このイノシシはハメ続けないと面倒なので、去っていくカメを横目で見るしか出来ない。


どうか行かないで……(届かぬ想い)。








△作者あとがき


ま、間に合った……。

誤字脱字などあったらごめんなさい。

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