グリーンエルド・奥地①
グリーンエルド、大分歩いた場所。
奥地と言っていいだろう。
まだまだエリアは奥にありそうだけど、とりあえずね。
……というか、奥に行けば行くほど広いから。このマップ。
そんなわけで――今のところ、奥地で出会ったモンスターは三体。
マンドラゴラ。
ワイルドボアー。
もう一体は名前を見る間もなく消えて行ってしまった。
自動車ぐらいの大きさで、かつとんでもない“早さ”ってことしか分からない。
あの
感覚でわかる。きっと“
……メモ取るのに必死で見逃した訳では無い!
まあいつか会えるだろう。多分。
「うーん、絵が下手!」
『コッ』
ゆっくりゆっくり進みながら。
手元のそれを眺め、呟く。
□
『マンドラゴラ』
レベルは27~30。
かの有名な、ロミオとジュリエットでも大活躍だったそれ。
引き抜いた時にソイツの叫び声を聞いたら死ぬ、有名な化け物。
が、このゲームでは死なないらしい。
死なないが、結構なダメージは食らう。ついでに状態異常で混乱もつく。
そして引っこ抜くまでもなく、近付いたら勝手に飛び出てくる。
自己主張が大変激しいモンスターである。
SNSやったら身を滅ぼすタイプ。
(挿絵:デカい根に葉っぱと顔と手足が付いた化物)
□
「おっ。噂をすれば……止まれ止まれ」
『コッ』
亀に捕獲罠を仕掛けまくり食わせまくり、もはやコイツは俺の相棒である。
なんせ一度も死んでいない。
お互いにね。そして――その一因として、この亀の存在にある。
特にこのマンドラゴラに関しては。
亀くん、捕獲罠ペッてしないでね(必死)。
「さて、雑草刈りだ……『罠設置』」
☆
「じゃ、行ってこい!」
『コッ』
諸々の準備を完了。
指をそこへ指す。
目標は風に
俺が降りてから、トコトコと“それ”に近付いていく亀。
来るぞ……。
『■■■!!!』
『コッ』
亀がその葉に近付いた瞬間。
人間の断末魔をより酷くした様な、そんな不快音。
そして同時に――現れた。
でっかい1メートル程の人型の木の根。
口を開けて、叫ぶ様な表情をしたままこちらを向き突っ込んでくる。
『ボ……!』
《落とし穴が発動しました》
『ボ!?』
で、そのまま設置していた穴にホールインワン。
そして――
《巨大地雷が発動しました》
《巨大地雷が発動しました》
『ボォオオオ!!』
「燃えとる燃えとる」
《マンドラゴラ LEVEL27 状態異常:燃焼》
落とし穴の近くに設置していた、巨大地雷の餌食となり――燃えた。
やはり植物? とあってそれになりやすいようだ。
「『スコップスラスト』!」
『ボ』
《経験値を取得しました》
そのまま、小突いてやれば死。
地雷is最高(Q.E.D.証明完了)。
ちなみにあの葉には一切ダメージがないので注意。
埋まってる状態に地雷グレネード!
ダメージゼロ!(無慈悲)。
ただ、体の一部だから割れて爆発はする。
その後地面からは出てくるから意味はない事はない。
だが葉っぱがない植物ってのは不気味だ。
しかも顔付き。ホラーである。
『コッコッコッ』
「よくやった」
亀が居れば一発地雷グレネードが節約出来るというだけだが――普段の狩りで瓶を消費するのは勿体ないし、この方法が一番だと思う。
『コッ』
「お前はマンドラゴラキラーだな。よーしよしよしよしよし」
撫でながら褒めてやる。
朧げな記憶だが、どこかのファンタジーじゃ犬を使ってマンドラゴラを発見させていた。
俺は動物愛好家って訳じゃないが、ちょっとこの亀に愛着湧いちゃったし、自爆特攻はさせたくなかった。
言い訳になるが、偶然だったのだ。
たまたまマンドラゴラに通り掛かった時、亀はそのまま歩き続け、俺だけ混乱状態になっていて。
「人に見られてたらヤバかったな」
亀の甲羅の上で暴れまくる成人男性。
浦島太郎も多分こんな感じだったんだろうね(適当)。
思えば亀は、人間の聴覚の20分の1以下しかないらしい。
要するにすっげー耳が悪い……マンドラゴラの叫び声が利かない程には。
コイツには『何かうっさいな』ぐらいなんだろう。
「……で、次は――」
『フゴッ、フゴッ……』
これは醜い人間ですか? いいえ、デカいイノシシです。
始まりの街に居たワイルドデグの進化系っぽいね。
《ワイルドボアー LEVEL28》
うるさい鳴き声に振り返る。
人の鼻息を100倍ぐらいにしたらこんな感じなんだろう。
「離れてろ」
『コッ』
大亀に手で遠くへ行くよう指示。
そして、目の前で地面を蹴る敵を眺める。
『ブオォ!!』
身体にオーラの様なモノをまとい、こちらへ突っ込んでくるワイルドボアー。
あの状態では、与えられるダメージが半分以上減る。かつ、スーパーアーマーと特定の状態異常の無効化。
仕掛けた麻痺罠も捕獲罠も意味がない。
あの“五倍地雷”でさえも、全く怯むことはない。
じゃあどうするのかと言えば――
「『高速罠設置』」
『ブオ――』
《落とし穴を設置しました》
《落とし穴が発動しました》
『ブオ!?』
頭から穴に突っ込むワイルドボアー。
その突進のエネルギーは、綺麗に自分に返ってくるというわけだ。
「イノシシに突進されても問題ない。そう、落とし穴ならね(キメ顔)」
ソレは、言うなればイノシシ特攻。
見ろ……あのピヨピヨ状態の哀れな彼を。
《ワイルドボアー LEVEL28 状態異常:気絶》
「……『スコップスラスト』! 『罠設置』……『スコップスラスト』!」
『ブヒッ!? ブホッ! ブオオ!』
「……」
この悲鳴の通り、弱点は尻である。
……まあ後は煮るなり焼くなりね。
ハメる為に、落とし穴を近くに設置しておくのを忘れずに。
パターンを組めばハメ続けられる。
コイツを相手にするコツは――ずばり、無心になることだ。
『……コッ』
おいカメこっち見んな! 仕方ないだろうが(恥)。
えっなんでそんな離れていくの?
《使役状態が解除されました》
「おーい!! 『スコップスラスト』!」
『ブホッ! ブオオオオ!』
捕獲罠の効力、切れるタイミング悪すぎだろ!
ああもうダメだ! あんなところまで!
このイノシシはハメ続けないと面倒なので、去っていくカメを横目で見るしか出来ない。
どうか行かないで……(届かぬ想い)。
△作者あとがき
ま、間に合った……。
誤字脱字などあったらごめんなさい。
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