罠士の武器(2つ目)
上空100mを超えて、新たな課題。
ロケットなり飛行機なりはそうだが、継続的にエネルギーが居るのだ。
よって、完全にあの空の頂上まで行くのは……まだ不可能。
分かっていた事なんだけど、いずれは必ず行って見せよう。
……罠士の数がもっと増えたら、検証データも増えるからありがたいんだけどな。
「ないものねだりは時間の無駄か――」
『コッ』
「お? よーしよしよし」
《グリーンタートル LEVEL25》
亀の甲羅に乗りながら、グリーンエルドを進んでいく。
前みたいに自動走行させるとボス亀出てくるからな。
アイツは……リンカと一緒に狩ろう。一人でも狩れるだろうが時間が足りない。
「あっちあっち」
『コッ……』
「そうそう」
どうして自分の力を使わずに移動するというだけで、こんなにも楽しいんだろうか。
欲を言えばもっと早い生物を使役したいけど……このゆっくりさもいいもんだ。
合体捕獲罠の検証もまだ出来ていないし、適当にグリーンエルドの奥の方のモンスターで試していかないと。
ちなみに入口近くのモンスターは大体使役出来た。
ただ……スライム、ウサギ、だから何? って感じだったからな。
使役出来たところで有用とは限らない。
有用、有用……。なんか忘れてる様な――
「あっ」
□
【アイアンスコップ】
必要STR値10・DEX値10
ATK+15
農士が主に扱う、土を掘る道具。
特定のスキルが強化される。
一応武器としても使用出来る。
レアリティ:1
製作者:NPC
□
「忘れてた」
そういえば、ステータス振って装備可能になってたんだ。
元々DEX不足だったからね。
そうと決まれば、早速この“カメ”で――
『コッ』
「……流石に無理!」
コイツ以外で試します、はい。
☆
大昔の戦争じゃ、銃や大砲の攻撃を避ける為に塹壕を掘っていた。
その時使用されていたのがスコップ。
だが、穴を掘るだけがそれの役目じゃない。
武器としても使用されていた。
先端での刺突、重い刃による殴打。
さらに、大きな刃を面として盾として用い身を守り。
フライパンとして料理にも使っていたとか。
まあとにかく、応用が利く道具なのだ。
ちなみにビームは出ない。
「『スコップスラスト』」
鍬の武技は『ホースラッシュ』だったが、スコップの場合はこれだ。
『スコップスラスト』……先端の刃の部分を前に向けて発動可能。
発動すると、素早い“突き”が行われる。
隙が少ない良い武技だね。
ホースラッシュに比べ一発の威力は劣るけど、秒間ダメージで言えばこっちが上だ。
《経験値を取得しました》
《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》
「うーん、使いやすい」
攻撃にも守りにも使える。
例えるなら優等生。
マジでコイツだけで戦闘の安定感が凄い。
「加えて――『罠設置』」
《落とし穴が発動しました》
「……最高か?」
地面を掘る道具。
その言葉に嘘偽りなく――
「やっぱり落とし穴、強化されてるな」
特定のスキルを強化、と説明文にあったがその通り。
落とし穴の設置時間が3秒から2秒になっている。
スコップ最強! スコップ最強!!
ビーム出ろ!!!
「……まあ、使い分けだな」
一応、安定するとはいえ今は鍬の方が扱いやすい。鍬に慣れているのもあるんだが、レンジの違いが大きい。
鍬は長斧に似ている。
ハルバードにバカ失礼だけど、まあそんな感じ。
比較して、スコップは剣と盾と小さい槍だ。
3つの性質を持つが、長斧の性質は持たない。
二刀流とか出来ません?
出来ませんか(諦め)。
「……ポーションよし、空瓶よし、空瓶(大)よし……」
準備運動は終わった。
いよいよこのジャングルの奥地へ赴く時だ。
この前の大亀より更に先。
『コッ……』
「待たせたな、行くぞ」
グリーンエルド探検隊(一匹と一人)は、ジャングルの奥地へ向かった……。
もちろん、スコップの検証記録も書きながらね。
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