『Vilrtual Player』

『白金の足』



プラチナレッグ。

総勢100名を超えるプロゲーマーチームである。


あらゆるゲームにおいて優秀な成績を残しており、VRが発達してからはチームメンバーを増員。

人気を博すVRFPSにVR格闘、VRレースやVRボードゲームにVRカジノなどなど……それらにおいて数多くの勝利を獲得してきた。

数多くのスポンサーに加え、人気配信者も多数配属……プロチームの中ではトップクラスである。



して、世界初のフルダイヴVRMMO『FL』が発売。

最も注目を得られる、“最前線”を勝ち取るべくチームメンバーを送り込んでいる。



「……すんませんなぁ、忙しいのに集まってもろて」



プラチナレッグのVR会議ルーム。

緊急招集を受け、集まった彼ら。

チーム内でも選ばれた者達。


プラチナレッグでは、チームメンバーに序列が定められている。

上から白金、金、銀、銅、鉄――といった様に。


そして今集うのは十名のみ。

“白金”と“金”の者達、言うまでもなく上位層。

加えて机の一番先には、プラチナレッグの“リーダー”が座っている。



「緊急会議とは何事でしょうか? リーダー」

「ああ『アーノルド』、お疲れさん。そっちのチームは大丈夫か?」


「……問題ありません」

「そうか。まあ本題はいるで。その、なんやろな……昼前のやつ見た?」



問いかける、リーダー。

頷く全員。



「“ダガー”君ね。報告じゃ既にレベル26。今はどーせもっと高いんやろな」


「加えてあの話題性。あんな高さの写真と動画、どうやって撮ったんか分からんけど……アレは“使える”。この先ずっと。ダーティキッズの一件しかり大樹霊の落とし穴しかり運も持っとる……配信とかやらしたら絶対伸びるやろね」


「しかも大体ソロでしか見かけん。SNS見てもどこの所属って訳でもない。正直もう、ほっとくのはアホらしい――何が言いたいか分かるやんな?」



笑って、全員に投げかける。

しかしそれは、頷く者だけではない。



「……反対です。“アレ”はPKerプレイヤーキラーであり、看守を異常発生させたり街中で爆発させたりと問題行動が多い」

「くくっ、くははは! 看守の増殖か、アレは笑ったなぁ。昼寝してたら飛んできたもんな」

「……」

「うん、確かにそうやアーノルド。表面だけで見れば」

「?」

「色々な情報を見るに、彼は悪人とは思えん。というよりも、もっと大きなモノを目指しているように思える」

「良く分かりませんね」

「まあ単純に、ダガー君を取り込んだら実質ウチらが最前線やしな。元々うちは色んな奴らがおるんや、PKerの一人や二人珍しいもんでもない。そもそも対人戦は“仕様”や、迷惑行為はもちろんアカンけど……ダガーは迷惑プレイヤーのリストにはおらんねん」

「それはそうですが――」


「――はい、はーい! しずくは賛成!」



理解できない、そんな表情の“金”等級の『アーノルド』。

しかし、それに割って入る“白金”等級、『雫』。



「ほう、なんでや?」

「だって雫、こんなに頑張って24だから! 何か知ってるなら共有すれば皆まとめてレベルアップ! 後、闘ってみたいし!」

「くくっ。雫は後者が本音やろ? まーあのダーティーキッズも倒す技量やし気持ちはわかるで」


「……『罠士』ですよ、リーダー?」

「だからこそや、アーノルド」



諭すように話す彼。



「ウチらが『最前線です』って言った数分後、先の先を行ってたんや。その罠士は」

「しかし恐らくそれは偶然! たまたまです。実際に“銅”の者に試させましたが、酷い職業だったでしょう?」


「せやな。レベル10まで持っていけたんが昨日やったか」

「そうでしょう?」


「自分で首絞めてるで、アーノルド。うちのもんでも無理やったんがダガー君は三日でレベル26やで」

「……っ」



うつむく彼。

答えは決まったかの様に、リーダーは皆に声を上げる。



「ええか? じゃあもしダガー君を見つけたら、勧誘よろしくな。ちなみに等級はいきなり“金”や」


「「「!」」」



その等級は、優秀な成績を積み重ねてなれるモノ。

それをポンと与えると言うのだから、場が少し揺れる。



「くくっまあ好待遇やな。それだけ“FL”がでかいコンテンツになるって予想やね」


「……まっ最初だけやで。彼の成績次第でどーせ上にも下にも変わる」


「というか、そもそも出会えるかどうかも分からん。運よく遭遇したら勧誘したろ~ぐらいでええで」



手をひらひらしながら笑うリーダー。

彼女は場が収まった事を確認して、立ち上がる。



「意見ないな? じゃー解散!」



その号令の後、退出していく者達。

残ったのは――アーノルドと、リーダーのみ。



「おっ。どうしたんやアーノルド?」

「いいえ……仮の話ですが、ダガーがゼロから始めたいと言ったらどうします?」


「どういう意味や」

「そのままです。彼は恐らく『罪ポイント』が大量に蓄積しており、“普通”のプレイは出来ない。もしプラチナレッグに所属すると言うのなら、ゼロから始めたいと彼は言うかもしれません」

「……ダガー君が希望するなら、キャラ作り直してでも全然歓迎するで。そんなんせんと思うけどな」



怪しげに彼女はアーノルドへ返す。

罪ポイントを気にするような者が、看守を爆破するなど考えられないからだ。



「そうですか。まあもし運良く会えたら“そういった方向”で交渉しますよ」

「はぁ。変な事はせんといてな? 今時SNSで簡単に評判は落ちるんやから」


「ええ。それでは」



アーノルドはそのルームから退出。


……彼にとって、ダガーは元々気に入らなかった。

常に“自分達”がトップだと思っていたら、嘲笑うかのように上に居て。

そして――あまつさえ、自分が苦労して得た“金”の座に就こうとしている。



「たまたま上手くいっただけだろう。“それ”が金だと? 忌々しい……!」



ならば、それを“餌”に引きずり落とす。

相手はただの素人。

偶然の幸運でのし上がっただけなら、もし0に戻せば何も出来なくなる。

プラチナレッグは実力がものを言う――直ぐに自分より下になる。


もし、奇跡的に実力があっても、チームの戦力が増えるだけだ。


良いこと尽くし。

FLの世界に戻りながら、彼は笑う。




「もし出会えたのなら、必ず私が――」





《グリーンエルドでログインしました》













△作者あとがき


ちょっと推敲途中ですが投稿! 書き直すかも……。続きは今現在進行系で書いております。

コンテストが終わるまでには燃え尽きたい……。


あと☆大量で嬉しいです。

ランキングSF、週間二位にずっといるんですけど(恐怖)

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