空への挑戦
アレから死ぬ気で走って逃げて(必死)。
ペナルティ消化代わりに検証結果のレポートを書いて。
「まさかここまでとは思わなんだ」
でっかい瓶の中に、みっちみちに詰まったあの地雷を思い出す。
パンッパンですよパンッパン!!
それを叩けば、文明開化の音がする(爆発)。
うん。注意喚起をぺたっと貼ってやりたいぐらいにそれは危険だ。
名を『五倍グレネード』。
馬鹿みたいな名前だが、その火力もまた馬鹿である。
□
特殊称号説明:
全プレイヤー中、一撃で与えたダメージが一番高いプレイヤーに付与される。
付与効果:ATK+1%
□
……こんなバカみたいな名前の称号も得たわけだし。
「やるしかないよな!」
そしてまた――自分も馬鹿なんだと思ってしまう。
欲望を抑えきれないんだ。
試したい。
その爆発力を。
火力を。
威力を――
一体、どれほど“飛べる”のかと――
☆
鳥は今だって、空を眺めれば悠々と上空を飛んでいる。
それに憧れた者達は数知れず。
『空を飛ぶということは、生涯を満たす情熱と欲望である』。
過去の人を、そう言わしめる魅力。
そして俺も当然惹かれていて。
今も用いている地雷ジャンプについては、自分で言うのもなんだが画期的だと思っている。
グラウンドトータスの背中にも乗れるし、建物の屋根なんて余裕だ。
だが——空には遠い。
あの広がる青には、どう
……そんな風に諦めるつもりはなかったが、こんなに早く機会が来るとは思わなかった。
「一体どこまで飛べるんだろうな」
合体罠設置によって、準備さえすればとんでもない爆発を起こせるようになった。
これを用いた地雷ジャンプならどれだけの飛距離を——そう考えるのは自然な事だと思う。
「……この際、落とし穴の上昇効果は無視しても良いかもしれん」
「五倍地雷グレネードと大地雷グレネードを両端に置いて……真ん中に落とし穴か」
「落ちた瞬間、ジャンプ。そして高速罠設置で地雷グレネードを作製して起爆……いや、無理だ。間に合わん。というかそこまでしなくてもよさそう」
誰も居ない闇市を歩き回りながら、思考を整理していく。
失敗は上等だが、時間は有限だ。
出来る限り希望が見えてからそれを試す。
《地雷を設置しました》
《地雷を設置しました》
《地雷を設置しました》
《三つの地雷が合体されました》
《大地雷が設置されました》
《地雷を設置しました》
《地雷を設置しました》
《二つの地雷が合体されました》
《大地雷が設置されました》
「まずはこれで……」
五倍グレネードと、大地雷グレネードを片手ずつ持つ。
絶対に落とさないように。
そして――
「『罠設置』……よし、行くぞ」
足が震えていた。
こんな事は、初めてかもしれない。
《落とし穴を設置しました》
《落とし穴が発動しました》
そのまま穴の中へ。
そして、焦らず地雷グレネードを二つ重ねて置く。
そして――地雷ジャンプの要領で、それを踏み込む!
《大地雷が発動しました》
《大地雷が発動しました》
「ッ!!」
瞬間、足元。
途轍もないエネルギー。
《貴方は死亡しました》
「 」
そして流れるアナウンス。
ある意味、俺はお空に行けたね(昇天)。
☆
ゲームと現実……この2つで一番の違いは何だろうか。
それは人によって異なる。ステータスに身体能力、空に天気、動物……様々だろう。
何から何まで全然違う。
だが、大きい違いの一つとして――それは『死』にある。
もちろんゲームでも死にはするが、生き返られる。
モンスターに喰われても、穴に落ちても。
永続的な死。
それがないから、我ながら無茶な検証を行えている。
それがないから、ゲームは楽しいのだ。
「まあでも、即死は予想外」
考えてみれば当然なんだけど。
直撃すれば、あの看守のライフをかなりの量消し飛ばす代物。
俺みたいな一般罠士が足で踏んだら死ぬに決まってる。
とりあえずライフ換算してみたが……
大地雷×2=死
大地雷×1+地雷=残HP20%ちょっと
五倍地雷=1%
なお全て直撃。
アシウラダイレクト。
通常地雷が約20%削るから、大地雷一発で60%。そりゃ死ぬわな。
五倍地雷は大体100%……ギリギリ残った。1%あるかないかぐらい? 当りどころが悪ければ死ぬ。
ココに来て体力に振ってなかった自分を呪うね。
というか、罠士が紙装甲過ぎる。
装備もまだ始まりの革装備から変わってないし。
その分身軽でいいけどね(ポジティブ)。
《大地雷が発動しました》
で。死んでしまえば飛べもしない。
結果、妥協して五倍地雷のみでやることになった。
が――
「ッ……くそ、上に行かない」
それでも、暴れ馬な五倍地雷くん(かわいい)は扱いが難しい。
爆風の威力がデカすぎて、うまく足裏で乗れないのだ。
すぐに横に弾き飛ばされてしまう。
まぁ、一度で出来るなんて思ってないさ。
☆
《大地雷が発動しました》
「ぐッ――! ……やっぱダメか」
☆
《大地雷が発動しました》
「……配置が間違ってるのか?」
☆
《大地雷が発動しました》
☆
《大地雷が発動しました》
☆
「うーん」
何度やってもうまくいかない。
HPポーションをがぶ飲みしながら考える。
やり方が間違っているのだろうか?
どう頑張っても爆風を制御出来ない。
鍬による起爆で直撃を免れたら大分HPも残った。
起爆距離をうまく調整すれば、五倍地雷&大地雷の両方を食らっても死ななかった。
しかし……飛べない。爆風の威力はそこまで変わらないからだ。そのエネルギーをうまく扱えないのだ。
以前の地雷ジャンプなら、慣れたものだった……実際今も出来る。
でも今は、まったく出来るビジョンが見えない。
「どうすれば良い――」
やり方を変える必要がある。
一度座って、思考を整理しよう。ダメなサイクルにハマっている。
なんならちょっと、亀に乗って散歩でも――
「――お、おい!」
「! お前は……」
《ハオス LEVEL20》
その声。
前に居たのは昨日振りの弓士。
……あぁもう。最悪なタイミングだ。
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