空への挑戦



アレから死ぬ気で走って逃げて(必死)。

ペナルティ消化代わりに検証結果のレポートを書いて。



「まさかここまでとは思わなんだ」



でっかい瓶の中に、みっちみちに詰まったあの地雷を思い出す。

パンッパンですよパンッパン!!

それを叩けば、文明開化の音がする(爆発)。


うん。注意喚起をぺたっと貼ってやりたいぐらいにそれは危険だ。

名を『五倍グレネード』。

馬鹿みたいな名前だが、その火力もまた馬鹿である。




特殊称号説明:瞬間最大火力バースト


全プレイヤー中、一撃で与えたダメージが一番高いプレイヤーに付与される。


付与効果:ATK+1%





……こんなバカみたいな名前の称号も得たわけだし。



「やるしかないよな!」




そしてまた――自分も馬鹿なんだと思ってしまう。


欲望を抑えきれないんだ。

試したい。

その爆発力を。

火力を。

威力を――


一体、どれほど“飛べる”のかと――




鳥は今だって、空を眺めれば悠々と上空を飛んでいる。

それに憧れた者達は数知れず。


『空を飛ぶということは、生涯を満たす情熱と欲望である』。


過去の人を、そう言わしめる魅力。

そして俺も当然惹かれていて。


今も用いている地雷ジャンプについては、自分で言うのもなんだが画期的だと思っている。

グラウンドトータスの背中にも乗れるし、建物の屋根なんて余裕だ。

だが——空には遠い。

あの広がる青には、どう足掻もがいたって届かない。



……そんな風に諦めるつもりはなかったが、こんなに早く機会が来るとは思わなかった。



「一体どこまで飛べるんだろうな」



合体罠設置によって、準備さえすればとんでもない爆発を起こせるようになった。


これを用いた地雷ジャンプならどれだけの飛距離を——そう考えるのは自然な事だと思う。



「……この際、落とし穴の上昇効果は無視しても良いかもしれん」


「五倍地雷グレネードと大地雷グレネードを両端に置いて……真ん中に落とし穴か」


「落ちた瞬間、ジャンプ。そして高速罠設置で地雷グレネードを作製して起爆……いや、無理だ。間に合わん。というかそこまでしなくてもよさそう」



誰も居ない闇市を歩き回りながら、思考を整理していく。

失敗は上等だが、時間は有限だ。


出来る限り希望が見えてからそれを試す。



《地雷を設置しました》

《地雷を設置しました》

《地雷を設置しました》

《三つの地雷が合体されました》

《大地雷が設置されました》


《地雷を設置しました》

《地雷を設置しました》

《二つの地雷が合体されました》

《大地雷が設置されました》



「まずはこれで……」



五倍グレネードと、大地雷グレネードを片手ずつ持つ。

絶対に落とさないように。


そして――



「『罠設置』……よし、行くぞ」



足が震えていた。

こんな事は、初めてかもしれない。



《落とし穴を設置しました》

《落とし穴が発動しました》



そのまま穴の中へ。

そして、焦らず地雷グレネードを二つ重ねて置く。



そして――地雷ジャンプの要領で、それを踏み込む!



《大地雷が発動しました》

《大地雷が発動しました》



「ッ!!」



瞬間、足元。

途轍もないエネルギー。



《貴方は死亡しました》



「 」



そして流れるアナウンス。

ある意味、俺はお空に行けたね(昇天)。





ゲームと現実……この2つで一番の違いは何だろうか。

それは人によって異なる。ステータスに身体能力、空に天気、動物……様々だろう。

何から何まで全然違う。

だが、大きい違いの一つとして――それは『死』にある。


もちろんゲームでも死にはするが、生き返られる。

モンスターに喰われても、穴に落ちても。


永続的な死。

それがないから、我ながら無茶な検証を行えている。

それがないから、ゲームは楽しいのだ。



「まあでも、即死は予想外」



考えてみれば当然なんだけど。

直撃すれば、あの看守のライフをかなりの量消し飛ばす代物。


俺みたいな一般罠士が足で踏んだら死ぬに決まってる。


とりあえずライフ換算してみたが……


大地雷×2=死

大地雷×1+地雷=残HP20%ちょっと

五倍地雷=1%


なお全て直撃。

アシウラダイレクト。


通常地雷が約20%削るから、大地雷一発で60%。そりゃ死ぬわな。

五倍地雷は大体100%……ギリギリ残った。1%あるかないかぐらい? 当りどころが悪ければ死ぬ。

ココに来て体力に振ってなかった自分を呪うね。

というか、罠士が紙装甲過ぎる。

装備もまだ始まりの革装備から変わってないし。


その分身軽でいいけどね(ポジティブ)。



《大地雷が発動しました》



で。死んでしまえば飛べもしない。

結果、妥協して五倍地雷のみでやることになった。


が――



「ッ……くそ、上に行かない」



それでも、暴れ馬な五倍地雷くん(かわいい)は扱いが難しい。

爆風の威力がデカすぎて、うまく足裏で乗れないのだ。


すぐに横に弾き飛ばされてしまう。


まぁ、一度で出来るなんて思ってないさ。






《大地雷が発動しました》



「ぐッ――! ……やっぱダメか」





《大地雷が発動しました》


「……配置が間違ってるのか?」





《大地雷が発動しました》





《大地雷が発動しました》





「うーん」



何度やってもうまくいかない。

HPポーションをがぶ飲みしながら考える。


やり方が間違っているのだろうか?

どう頑張っても爆風を制御出来ない。


鍬による起爆で直撃を免れたら大分HPも残った。

起爆距離をうまく調整すれば、五倍地雷&大地雷の両方を食らっても死ななかった。


しかし……飛べない。爆風の威力はそこまで変わらないからだ。そのエネルギーをうまく扱えないのだ。


以前の地雷ジャンプなら、慣れたものだった……実際今も出来る。

でも今は、まったく出来るビジョンが見えない。



「どうすれば良い――」



やり方を変える必要がある。

一度座って、思考を整理しよう。ダメなサイクルにハマっている。


なんならちょっと、亀に乗って散歩でも――




「――お、おい!」


「! お前は……」




《ハオス LEVEL20》



その声。

前に居たのは昨日振りの弓士。


……あぁもう。最悪なタイミングだ。



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