特殊クエスト:緑林郷への裏旅路
《?????に移動しました》
《特殊クエスト:緑林郷への裏旅路が開始されました》
「――っ!? どこだここ――」
さっき、オレは確かに土壁に転がり込んだ。
なのに――今広がっているのは全く違う光景だ。
まるでジャングル。
草原というより密林。
そして、どこか只ならぬ気配が――
《
《
《
「ひっ」
デカい木だと思った。
しかも三本。明らかに違和感があったが、このフィールドだし……そう思ったけど。
でも――見てみると、しっかりとモンスター名が表示されていた。
その瞬間、まるで睨まれている様に感じて。
次の瞬間、その嫌な予感は当たっていたと気付いた。
『――』
『――』
『――』
「……まずくね?」
枝を振り上げるその……木?
何か。
まるで、発射準備をしている様な――
『――――』
「うわっ!?」
『――――』
「っ、くそ――」
『――――』
「うおおおおお!」
思わず駆け出していた。
そして一秒後には、オレの元へ葉っぱが飛んできていた。
あ、危なかった!
「はっ、はっ――――」
とにかく……逃げる。
生きなければ。
でも何処へ?
「――『メニュー』!」
大丈夫、まだ攻撃は来ない。
後ろの様子を伺って、走りながらマップを開く。
「――っ!?」
確かに、それは地図だった。
緑色の色んな道があって、自分の居場所も分かる。
己の位置はマップの南。
そして北には、光る一つの点が存在しており。
その間には――幾つもの道がぐにゃぐにゃとあって。
でも。
この地図は、すべてが『霞』で覆われていた。
だから――どの道を行けばいいかが分からない。
《
《
《
「ひっ」
緑が光を遮断し、影がオレを支配する。
気付けば囲まれていた。
どデカい3つの化物が、オレを見下ろし。
やがて、その巨大な枝が手のように振り上げられ――
――終わり?
まさか。
『暗闇』が身体を覆うのなら、もうやる事は決まってる。
こんな薄暗い場所だ。
『閃光』には弱いだろ――
「――『フラッシュ』!」
『『『!?』』』
掲げた片手剣、眩い光が影を掻き消して。
怯んだ大木を尻目にオレは走った。
ゴールが見えているのなら――死に物狂いでそこへ向かう!
☆
「……迷った」
意気揚々と駆け出してこれだよ。
地図はあるんだが、靄が全体に掛かっているせいで分かりにくい。
今も行き止まりに直面した。あれから大樹霊は追ってきていないから助かったけど。
「……ん、靄?」
まさかと思い、またマップを眺める。
ああ。
最初からこうすれば良かったんだ。
「『フラッシュ』」
《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》
《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》
「!」
剣をしまって、そのマップに向けて手をかざして、また光を放つ。
すると、そこに掛かっていた靄は晴れ。
ついでとばかりにレベルが2上がった。
「フラッシュ、便利過ぎだろ」
なんというか。好きになりそうだ。
ってもうスキルレベル5じゃないか、ってことは。
□
《スキル説明:冒険の技術》
以下のスキルを使えるようになる。
レベルが上がると使えるスキルが増加。
『フラッシュ』
MP10使用。
手、あるいは武器を持っている場合は武器から、
眩い光を放ちプレイヤー、モンスターを怯ませる。
またモンスターに使用した場合、狙われやすくなる。
再使用時間30秒。
『ランスケープ』
MP20使用。
AGIが増加し、走るスピードが大きく上昇する。また、敵から追いかけられている場合更に上昇。
再使用時間1分。効果時間10秒。
□
「追加されてる」
ランスケープ……一見するとかなり便利だな。
さっき欲しかったけど!
「……道も分かったし、行くか」
すっかり靄の晴れたマップを見て、行くべき道を確かめる。
今度は迷わないように。
でも。まずは——
「『ランスケープ』!」
発動した瞬間、足が軽くなるのを感じる。
そのまま地面を蹴った。
瞬間、風を切る感覚。
今のオレは多分、オリンピックの陸上選手よりも早い。
気持ちいい。
走るのがこんなにも楽しい。
「――はは、はっ、はあ……」
《ランスケープの効果時間が終了しました》
効果時間が終わり、息が途切れて歩き出す。
密林の中、一人きり。
いつ敵が飛び出してくるか分からないこの状況。
「マジで、楽しいな……」
それでも思わず口から出る。
さあ、後はゴールに向かうだけだ。
☆
『オ――』
『――オ』
「うわっびっくりした――『ランスケープ』!」
ある場所では、突如現れた大樹霊から逃げ回り。
☆
『『『ピギギ』』』
「『フラッシュ』」
『『『ギ!?』』』
ある場所では、大量の緑色のスライムを怯ませて逃げたり。
☆
「……つっかれたー!!」
背伸び。
ようやく地図で光っている、その最北端にたどり着く。
ぶっちゃけ逃げ回ってばっかりだった。おかげでレベルは上がったけどさ。VRといえど精神的に疲れる。
ここがゴールじゃなかったら恨むぞ。
地図上では光ってるけど、その場所は周りと同じ密林だからちょっと怖い。
「よっ……」
というわけで、草木を掻き分けその地点へ。
すると——
《グリーンエルドに到達しました!》
《特殊クエスト:緑林郷への裏旅路をクリアしました!》
《報酬を獲得します》
《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》
《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》
《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》
《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》
《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》
《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》
《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》
《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》
《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》
《冒険の知識スキルのレベルが上がりました!》
《冒険の記録スキルのレベルが上がりました!》
《冒険の記録スキルのレベルが上がりました!》
《称号:開拓者を取得しました》
《既定のレベルに達していない為、グリーンエルド・マップは取得できません》
《死亡した場合は始まりの街に移動します》
鳴るアナウンス。
レベルは5つ一気に上がり、スキルもたくさん上がった。
でも、今は。
「……すっげー」
ただひたすら、目の前の光景に夢中になった。
鳥肌が立った。
さっきまでの密林よりも、更にスケールのデカくなったこの場所。
例えるならジャングルだ。
聞いたことのない鳥の鳴き声、ざわざわと葉が揺れる音。
《グリーンタートル LEVEL25》
すぐそこにはそんなレベルの亀も居て、自分のいる場所が『始まりの街』ではない事を実感させる。明らかに、普通では——レベル5なんかじゃ辿り着けない場所。
冒険者だからこそオレはここに到達出来た。
「——!? 何だ?」
しかしそんな感傷にもこの世界は浸らせてくれない、
とんでもない『地響き』。
「あ、あっちからか?」
ドシン、ドシンと響く音。
まるで怪獣でも歩いているかのように。
「行ってみるか――でもその前にステータス!」
気になりすぎて色々蔑ろになるな。
レベルも15!
新スキルもあるだろうし、しっかり準備してから行こう。
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