特殊クエスト:緑林郷への裏旅路


《?????に移動しました》

《特殊クエスト:緑林郷への裏旅路が開始されました》



「――っ!? どこだここ――」



さっき、オレは確かに土壁に転がり込んだ。

なのに――今広がっているのは全く違う光景だ。


まるでジャングル。

草原というより密林。


そして、どこか只ならぬ気配が――


大樹霊アルボル・アーヴァス LEVEL20》

大樹霊アルボル・アーヴァス LEVEL20》

大樹霊アルボル・アーヴァス LEVEL20》


「ひっ」


デカい木だと思った。

しかも三本。明らかに違和感があったが、このフィールドだし……そう思ったけど。

でも――見てみると、しっかりとモンスター名が表示されていた。


その瞬間、まるで睨まれている様に感じて。

次の瞬間、その嫌な予感は当たっていたと気付いた。



『――』

『――』

『――』



「……まずくね?」


枝を振り上げるその……木?

何か。

まるで、発射準備をしている様な――



『――――』

「うわっ!?」


『――――』

「っ、くそ――」


『――――』

「うおおおおお!」


思わず駆け出していた。

そして一秒後には、オレの元へ葉っぱが飛んできていた。

あ、危なかった!


「はっ、はっ――――」


とにかく……逃げる。

生きなければ。


でも何処へ?


「――『メニュー』!」


大丈夫、まだ攻撃は来ない。

後ろの様子を伺って、走りながらマップを開く。



「――っ!?」


確かに、それは地図だった。

緑色の色んな道があって、自分の居場所も分かる。


己の位置はマップの南。

そして北には、光る一つの点が存在しており。

その間には――幾つもの道がぐにゃぐにゃとあって。


でも。

この地図は、すべてが『霞』で覆われていた。

だから――どの道を行けばいいかが分からない。



大樹霊アルボル・アーヴァス LEVEL20》


大樹霊アルボル・アーヴァス LEVEL20》


大樹霊アルボル・アーヴァス LEVEL20》



「ひっ」


緑が光を遮断し、影がオレを支配する。

気付けば囲まれていた。

どデカい3つの化物が、オレを見下ろし。

やがて、その巨大な枝が手のように振り上げられ――



――終わり?

まさか。

『暗闇』が身体を覆うのなら、もうやる事は決まってる。


こんな薄暗い場所だ。

『閃光』には弱いだろ――



「――『フラッシュ』!」


『『『!?』』』



掲げた片手剣、眩い光が影を掻き消して。

怯んだ大木を尻目にオレは走った。


ゴールが見えているのなら――死に物狂いでそこへ向かう!




「……迷った」



意気揚々と駆け出してこれだよ。

地図はあるんだが、靄が全体に掛かっているせいで分かりにくい。

今も行き止まりに直面した。あれから大樹霊は追ってきていないから助かったけど。


「……ん、靄?」


まさかと思い、またマップを眺める。

ああ。

最初からこうすれば良かったんだ。


「『フラッシュ』」


《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》

《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》


「!」


剣をしまって、そのマップに向けて手をかざして、また光を放つ。

すると、そこに掛かっていた靄は晴れ。

ついでとばかりにレベルが2上がった。


「フラッシュ、便利過ぎだろ」


なんというか。好きになりそうだ。

ってもうスキルレベル5じゃないか、ってことは。



《スキル説明:冒険の技術》

以下のスキルを使えるようになる。

レベルが上がると使えるスキルが増加。


『フラッシュ』

MP10使用。

手、あるいは武器を持っている場合は武器から、

眩い光を放ちプレイヤー、モンスターを怯ませる。

またモンスターに使用した場合、狙われやすくなる。

再使用時間30秒。


『ランスケープ』

MP20使用。

AGIが増加し、走るスピードが大きく上昇する。また、敵から追いかけられている場合更に上昇。

再使用時間1分。効果時間10秒。




「追加されてる」


ランスケープ……一見するとかなり便利だな。

さっき欲しかったけど!


「……道も分かったし、行くか」


すっかり靄の晴れたマップを見て、行くべき道を確かめる。

今度は迷わないように。

でも。まずは——


「『ランスケープ』!」


発動した瞬間、足が軽くなるのを感じる。

そのまま地面を蹴った。


瞬間、風を切る感覚。

今のオレは多分、オリンピックの陸上選手よりも早い。


気持ちいい。

走るのがこんなにも楽しい。



「――はは、はっ、はあ……」


《ランスケープの効果時間が終了しました》



効果時間が終わり、息が途切れて歩き出す。

密林の中、一人きり。

いつ敵が飛び出してくるか分からないこの状況。



「マジで、楽しいな……」



それでも思わず口から出る。

さあ、後はゴールに向かうだけだ。





『オ――』

『――オ』


「うわっびっくりした――『ランスケープ』!」


ある場所では、突如現れた大樹霊から逃げ回り。




『『『ピギギ』』』


「『フラッシュ』」


『『『ギ!?』』』


ある場所では、大量の緑色のスライムを怯ませて逃げたり。




「……つっかれたー!!」


背伸び。

ようやく地図で光っている、その最北端にたどり着く。

ぶっちゃけ逃げ回ってばっかりだった。おかげでレベルは上がったけどさ。VRといえど精神的に疲れる。


ここがゴールじゃなかったら恨むぞ。

地図上では光ってるけど、その場所は周りと同じ密林だからちょっと怖い。


「よっ……」


というわけで、草木を掻き分けその地点へ。


すると——



《グリーンエルドに到達しました!》

《特殊クエスト:緑林郷への裏旅路をクリアしました!》


《報酬を獲得します》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振ってください》


《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》

《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》

《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》

《冒険の技術スキルのレベルが上がりました!》 


《冒険の知識スキルのレベルが上がりました!》


《冒険の記録スキルのレベルが上がりました!》

《冒険の記録スキルのレベルが上がりました!》


《称号:開拓者を取得しました》

《既定のレベルに達していない為、グリーンエルド・マップは取得できません》

《死亡した場合は始まりの街に移動します》



鳴るアナウンス。

レベルは5つ一気に上がり、スキルもたくさん上がった。

でも、今は。



「……すっげー」



ただひたすら、目の前の光景に夢中になった。


鳥肌が立った。

さっきまでの密林よりも、更にスケールのデカくなったこの場所。


例えるならジャングルだ。

聞いたことのない鳥の鳴き声、ざわざわと葉が揺れる音。



《グリーンタートル LEVEL25》



すぐそこにはそんなレベルの亀も居て、自分のいる場所が『始まりの街』ではない事を実感させる。明らかに、普通では——レベル5なんかじゃ辿り着けない場所。

冒険者だからこそオレはここに到達出来た。



「——!? 何だ?」



しかしそんな感傷にもこの世界は浸らせてくれない、

とんでもない『地響き』。


「あ、あっちからか?」


ドシン、ドシンと響く音。

まるで怪獣でも歩いているかのように。


「行ってみるか――でもその前にステータス!」


気になりすぎて色々蔑ろになるな。

レベルも15! 

新スキルもあるだろうし、しっかり準備してから行こう。

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