閑話:とある二人の冒険譚

迷子の冒険者


《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》


「やった」


プレイヤー名:クロセ

職業:冒険者


LEVEL3


HP:1200

MP:120


STR(筋力値):6

INT(知力値):5

DEX(器用値):6 (+13)

AGI(敏捷値):6

VIT(体力値):5

MND(精神値):5


ステータスポイント:残り0ポイント

罪ポイント:【0】


skill:

片手剣LEVEL3

冒険の技術LEVEL3

冒険の知恵LEVEL3  

冒険の記録LEVEL3



装備 :ソード 始まりの革装備一式

所持品:『始まりの街』マップ HPポーション(小) MPポーション(小)

所持金:10000G


取得称号一覧

【転職者】




《スキル説明:片手剣スキル》


片手剣での攻撃にボーナスダメージ。

そして、片手剣を装備している間のみ以下の武技が使用できる。


『スウィング』

MP10を消費し、剣を振る武技。

振りかぶった状態で発動可能。



《スキル説明:冒険の技術》

以下のスキルを使えるようになる。

レベルが上がると使えるスキルが増加。


『フラッシュ』

MP10使用。

手、あるいは武器を持っている場合は武器から、

眩い光を放ちプレイヤー、モンスターを怯ませる。

またモンスターに使用した場合、狙われやすくなる。

再使用時間30秒。



《スキル説明:冒険の知恵》

以下のスキルが常時発動されるようになる。

レベルが上がると使えるスキルが増加。


『マップ・アップグレード』

本来の地図よりも、より多くの情報が載った地図を使用できる。



《スキル説明:冒険の記録》


DEXにボーナスステータスが追加される。

また、歩けば歩くほど経験値を取得できる。

自身がまだ歩いていない場所であればより増加。




「以外と追いつけるもんだな」



元々戦士で片手剣を使っていたからか、結構サクサクレベルが上がっていく。

強くてニューゲーム――は調子に乗り過ぎた。

加えて、冒険者のスキル『冒険の記録』……で、歩けば歩くほど経験値が貰えるってのもあるから、散歩してるだけでレベルが上がる。


まあ微々たるものだけど。

やっぱり戦士のが効率は良い、それは仕方ない。


【冒険の記録】FL冒険者スレッド5【冒険者の知恵】


623:名前:名無しの冒険者

きょうも さんぽ たのしいね


624:名前:名無しの冒険者

そうだね 


625:名前:名無しの冒険者

あるけてえらい


626:名前:名無しの冒険者

歩くだけでレベル上がるって結構良いよね


627:名前:名無しの冒険者

ホント やっぱ冒険者なんだわ


628:名前:名無しの戦士

ま、そこら辺で狩りしてるパーティーの方が100倍ぐらい経験値稼いでるけど


629:名前:名無しの冒険者

なんでそういう事言うの?


630:名前:名無しの冒険者

あーあ冷めた せっかく今から狩りしようと思ってたのにw


631:名前:名無しの冒険者

FLは散歩するゲームだよ 何言ってんの?


632:名前:名無しの冒険者

マップ強化のおかげで大体のモンスター位置が分かるから、散歩ルート決めが捗るわ


633:名前:名無しの戦士

戦士だけど お前ら狩りしてる俺達を羨ましそうに見るのやめてくれない?


ぶっちゃけキモイよ(笑)


634:名前:名無しの冒険者

あ、あ~今日良い天気だね


635:名前:名無しの冒険者

あっあっあっ


636:名前:名無しの冒険者

今日も散歩がんばるぞ(泣)




「……あんまり有意義な情報は得られないか」



ちょっと荒れてるし。

愚痴多いし。


ま、一人で頑張ってみよう。



《――《 《 《ダガー様が、フィールドボス・大樹霊の初討伐に成功しました!》 》 》――》




……ちょっと前に聞こえたそのアナウンス。


彼は、もっと先に進んでいる。

それに追いつくつもりで。



「メニュー、マップ……まだ歩いてないところあったっけな」



冒険の記録スキルは、歩けば歩くほど経験値が貰えるんだけど。

まだ行ったことのない場所ならボーナス? というかちょっと多めに経験値が貰える。


「えっと――あれ?」


冒険者の知恵により、マップは強化されモンスターの位置とか地形とかも表示できるようになってるんだが。


一つ、不可解な所があった。

マップの端の一部分。本当に、豆程のサイズで何かがボヤけている。まるでモザイクでもあるかのように。


「……?」


マップを拡大、しても同じ。

その靄が――主張するかのように残るのみ。


「行ってみるか」



《アーマーウルフ LEVEL15》

《スライム LEVEL15》



「ひぃ……」



緑が深くなり、辺りも暗くなってくる。 

いくら何でもレベル差が凄い。

でも、マップのもやはここなんだよな。


もう少し先に行けば、多分ボスフィールドなんだろう。



――「何やってんだアレ」「迷ったのかな」「身の程知らず過ぎだろ」――



……聞こえてるし。

くそ、冒険者が迷ってたまるかよ。

マップ強化貰ってんのに。迷子の冒険者ってダサすぎ。



「……ここをもっと奥に……」



浴びる視線から逃げる様に、マップの示す方向へ。

足が雑草に取られそうになるが頑張って。


のしのしと歩き。ようやくその場所に辿り着いた。



「……はぁ?」



で、そこにあったのは壁だった。

一応このゲーム、マップには端があって……そこは大体巨大な壁、山や岩などで行き止まりになっている。

普通ならそうだ。


何が言いたいかといえば。

結局、何でもない普通マップの端があるだけだった。



「期待して損したな……」



未だにそのマップには靄がある。

一体何なんだよ。

見間違いか?


「……いや。メニュー」


きっと、コレは何かが眠っている。

そんな気がしたから確かめる事にした。



《チャンネル移動が選択されました》

《チャンネルを移動します》

《始まりの街・非戦闘フィールドでログインしました》



「メニュー、マップ……えっ」



見れば、その靄があった場所は消えていた。

チャンネルは変わったが俺は同じ場所に居るはずだ。


血眼でそのマップを眺める――すると。



「移動してる」



そこは、同じ戦闘フィールドの奥――左にずっと行った端の場所。

……どんだけ歩かせるんだよ!





《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》


「レベル上がったし」


思えばさっきから歩いてばっかりだ。

でも、冒険者っぽくていいかもしれない。


ステータスは……今は振らなくていい。

目の前にあるこの謎を解明してからだ。



「……入れない、よな」



その靄があるマップの端……そびえ立つ土壁に突っ込むが無意味。衝突した。

はたから見れば不審者だ。



と、すれば――



「『フラッシュ』」



そのスキルを発動。

『フラッシュ』。

手、もしくは持っている武器がピカッと光って、見ていたモンスターを怯ませる。

ダメージは与えられないけど、その分敵から狙われやすくもなるスキル。


この場合は靄を晴らす為。あくまでイメージで行けるかなと思っただけで、そんな効果があるかなんて分からない。

行けるか……?



「……ううーん! ダメか! おらっ!」



唸る。

何も起こらない。

ああクソ。もうヤケだ。


「『スウィング』――うっ……」


剣をその土壁に振ってみるが無意味。

ガキンと鈍い音が広がる。


俺はなにをやってんだ?

帰ろ……。



《――「誰も見ようとしない世界にはな、それだけ『何か』が眠っているんだ」――》




「っ――」




――脳内に木霊するその声。

それが、俺の足を止めた。


まただ。また――自分は彼に助けられた。


こんなにも『何か』ありそうなソレを、見逃す所だった。

まだやってない事がいっぱいあるってのに。



「リキャスト、終わったな」



マップ、靄の前。

オレは両手で片手剣相棒を掲げる。


なぜ空にコレを指しているかと言えば。

この位置なら、木漏れ光が丁度剣に当たって……キラキラと輝いているからだ。


まるでその照らす光を、剣が吸収してくれる様な気がしたから。


「『スウィング』」


息を吐いた後、俺はその剣を振るった。


そして、その壁を切り拓く――そんな意思を込めて。

目標に到達する寸前、そのスキルを放つ。



「『フラッシュ』――っ!? うああああああ!!!」



衝突。

コレまでに無い程の眩い光が、土肌に衝突。


そして身体は――そのまま転がり落ちる様に――



《?????に移動しました》


《特殊クエスト:緑林郷への裏旅路が開始されました》




……オレは、『迷子の冒険者』になった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る