『宣言』

☆           

       

《地雷を設置しました》

《地雷が発動しました》

       

「――やっと40パー削ったか」


肩で息をしながら、目の前の巨体を眺める。依然として『歩く』だけ――そのおかげでパターンさえ組めば安定した。


しかし一向に減らないHPを見て気が滅入り、

集中が途切れそうになる事数回。


だがそんな一プレイヤーの気持ちを察してか……途中残りHPが70%となった時、コイツは『状態異常:睡眠』になるのだ。


一瞬回復するのかとすっごく焦ったがそんな事はなく、首と手足を引っ込め……ただただ地面に寝そべって、何もしないのが1分続いた。


つまり、『ボーナス』時間。

この間に鍬を振りまくってダメージを稼ぎまくり、解除も頑張ってココまで来た。


このボーナスで、かなり精神的に回復出来た気がする。

やはり『FL』製作者は神という事で。

大樹霊の例もあるから、恐らく30%刻みでこのボーナスは訪れるはず。

そうだよな? 製作者さん。そうだと言ってくれ!



ま……後は同じ事を1.5回繰り返すのみ。

何も無ければの話なんだけど――


『――――』

「……?」


だが。

その違和感は、突如としてやってきた。


説明は出来ない。

というか、その方向はこの大亀じゃない。

……背中?


いやでも一瞬だったし、気のせいか。

というかそんな事気にしてる場合じゃ――



『――――!』

「ッ、とと!!」



前方、踏み下ろされる亀の左手。

逃げるのが遅れて揺れに捕まり、身動きが取れなくなる。


――その瞬間。

リンカに言ったその台詞が唐突に蘇る。






《――「このゲームはMMOだ」――》







「ぐ――ッ!?」




左足、刺さる矢。

背後。

気付かなかった。


気付いた内には――既にそこにあった。

腹から生えた、その刃が。



「『バックスタブ』」



《状態異常:出血になりました》


粒子に消える俺の腹部。

鮮血の視界。

赤くて見え辛いその者共――



PプレイヤーKキラーか」


思考が定まらない。

遙か後ろに恐らく弓使い。


××死ねやゴミ」

「『ダブルエッジ』――!」


そして右左から――ナイフ使い、二人。




「爆ぜ、ろ」




《地雷が発動しました》



「んなっ!?」

「爆発――」


「逃がすな! 後ろだ!」



ポケット、『地雷グレネード』の空瓶を手で握りつぶし――発動。


爆発で吹っ飛ぶ俺の身体、その勢いのまま逃走。


「『パワーショット』!」

「ッ――」


左肩を掠る矢。

『出血』……その状態異常のせいかHPが継続的に減るせいで、今残り50%しか無い。


「逃げんな――『スプリント』!」

「『スプリント』――××殺す!」


背後に感じる気配。

ポケット――大亀に使ったせいでもう地雷グレネードの残量はゼロ。


どうする? どうする――



「――『スティング』!」

「『スティング』――!」


「がッ!」



そのナイフの突き攻撃、一つは掠るが一つはまともに食らう。


……ああ。

こりゃ、マジで終わったかも。



「――『パワーショット』!」

「ハハハハハ! この瞬間がたまんねー!」

「『ダブルエッジ』――舐めプすんな、逃げちまうぞ」



一つは矢。一つは刃。

双方とも腹に直撃。

前も後ろも絶望的。



「『パワーショット』」

「『スティング』!」

「『ダブルエッジ』!」



迫る攻撃の雨に。

俺は逃げず、その三人を見渡した。


『ノーブル』、『フール』、『ハオス』――


――沸々と燃え上がるソレは不思議と心地良い。

真夏日。氷が水に浮かぶ様に――溶けて、溶けて、溶けて。


その灼熱が『非現実』を露わにしていく。

もしかしたら俺は、むしろソレを待っていたのかもしれないと思うほどに。



鼓動が高鳴っていた。




「――覚えとけよ、お前ら」




これは『捨て台詞』じゃない。宣言だ。

どんな手を使ってでも。

俺は、お前らをこの世界でキルしてみせる。



《貴方は死亡しました》



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