迫りくる影


『Freedom‐Liberty』。

サービス開始後、多くのプレイヤーがその世界に足を踏み入れた。


当然、それには『プロ』の者達も集う。

完全フルダイヴという未知の領域ではあったものの、その者達は『普通』よりも明らかに抜きん出ていた。


そして、サービス開始24時間後。

レベルと攻略進行度。

それらを踏まえトップに位置していたのは――ある三グループ。


百人を超えるプロチーム――『プラチナレッグ』の精鋭達。


仮想世界の申し子と呼ばれた、ソロプレイヤーの検証勢――『VP』。


「どんな手を用いても最前線に」……そんな宣言をした有名動画配信者集団――『ダーティーキッズ』。


そしてサービス開始48時間後。

その3グループを差し置いて現れた、『罠士』が急遽トップになる。


当然、彼らは気付いていないが。

鳴った『ワールドメッセージ』にて、『FL』内の真の『最前線』は知れ渡る事になる。


《 《 《 ダガー様が、フィールドボス・大樹霊の初討伐に成功しました!》 》 》


そんなアナウンスによって。



『ダーティーキッズ』。


その名の通り、彼らは進む為なら『何でも』やるのがモットーだ。

狩り場の『横取り』。

反抗する者には『PKプレイヤーキル』。


そしてその高いPSによって、横暴は自由に行われていた。

『彼ら』を狩ろうとする者は居るが……そういった厄介な者達が現れると、即座に逃走を繰り返し、隠密行動で煙を撒く。


そんな悪行を繰り返せば、当然ネットでも叩かれるが。

『悪評』は大好物。

名前が売れるなら何でも良い。

『FL』の最前線を撮影すれば、再生回数はうなぎ登り。

積み上がっていく罪ポイントなど、彼らは気にもしない。


そして彼らは――運が良かった。

たまたま同じ様なPKペナルティを持つ集団に数回遭遇しており、それを狩って経験値の大量獲得。

一気にレベル20に持って行けた。


《ノーブル LEVEL20》

《フール LEVEL20》

《ハオス LEVEL20》


「……なんでオレ達が最初じゃねーんだよっ!!」

「落ち着けって」

「ダガーって誰だ? プロでも何でもねぇ、ネット漁ってもロクな情報が出てこない」

「素人のラッキーだろ、どうせすぐ抜かす」

「チッ……」


場所はグリーンエルド。

ダガーが大亀と遭遇した頃……彼ら三人、『ダーティキッズ』のメンバーはそこへ辿り着いていた。


「あの『枝』のせいで手間取ったし……ああクソ腹立つ!」

「確かに」

「とりあえず動画撮りながら進んでいくか。もうコメントオフにしようぜ」

「だな」

「マジでアイツふざけんなや……」





……そして。

彼らは見つけてしまう。


《ダガー LEVEL23 罠士》

《『闊歩する大地グラウンド・トータス LEVEL25》


「――――『罠設置』!」



遠く向こう。

ジャングルにて――自分たちよりもレベルが高い彼。

ワールドメッセージで世界を驚かせた彼。

『最前線』に位置する『ダガー』の姿を。



「……アイツが」

「……何だよあのモンスター」

「……もう60%近くまでやってるじゃん」



グラウンドトータスに、そのダガーは奮闘している様に見えた。

そして――彼らの口元に笑みが零れる。


それは、『綺麗』なモノじゃない。

反対の、『邪悪』な危険な香りで――


「……奪っちまおうぜ」

「ああ」

「50%以上削られてたら報酬受け取れねぇんだよな――ついてる」



草陰。

罠士は、三人に気付く様子など全くない。


「ハハっ。こんな場所誰も居ねぇし最高」

「最前線は俺達のもんだ、あんなクソ素人にやれるかよ」

「その通り――行くぞ」



二人はナイフを持ち。

一人は弓を構え。


彼らは――そこから飛び出した。

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