順風満帆


「……でっか」



さっきのアースタートルなんて比にならない大きさ。

サイズで言えば……観光用バスを三台横並びにして合体させた感じ。

長さ10m以上、横もそれぐらい。


その甲羅には緑が生えて、まるで地面そのもの。そこから生える手足も――苔まみれで年期を感じる。


とてつもない圧。

1m近いその頭が――5mぐらいの長さの首を伸ばし、じっと俺を見る。


『コ――――』


ゆっくりと俺に近付く亀。

そして、無機質なその視線が俺から離れて。


「――ッぶねえ!」


唐突に歩み出す巨体。

間一髪。

その手が――俺の居た場所を踏み潰す。


『……』

「……やる気満々かよ――ッ!!」


そしてまた俺を見て、方向転換。

同じく――その手が俺の元に。



「……どうするかな」



とりあえず距離を取る。

ま、とりあえずコレ!



「――『罠設置』」


《落とし穴を設置しました》



走り、亀の背後に回る。

ゆっくりと旋回する身体は、流石に追い付かない様で――視界から俺が外れた。


そのタイミングで罠設置。

前方に出来る落とし穴――


『コ――――』


《落とし穴が破壊されました》


しかし。

気付いているとか関係なかった。

その手足により――あっけなくソレは壊される。


「……マジ?」


この瞬間。

コイツは、大樹霊よりも強敵ということが発覚した。

あ。一応試しておこう。



「『高速罠設置』」

『――コ――』


《捕獲罠を設置しました》

《捕獲罠が破壊されました》



「知ってた」



さあ。どう闘おうか。




「『罠設置』! うおおおおお!」


『――――』



前方約5m。

移動しようとする大亀を前に、罠設置を発動する――迫り来る右足。

その足はこの前の大樹霊の幹よりも太い。


迫力満点!


《地雷を設置しました》


「ッ!!」


来る。

その前に――走って避ける!


《地雷が発動しました》



『――――』

「はッ、はッ……」



今の状況。

とりあえず、コイツに落とし穴、毒罠、痺れ罠は効かない。

ダメージソースは地雷と鍬の攻撃のみ。



「看守とはジャンルが違う厄介さだな」



コイツの攻撃方法……それは、『歩くのみ』。は? 舐めてんのかと思うが。

実際――巨体ってのは移動するだけでとんでもない被害を食らうのだ。


その大きな手足は、歩くだけで地面を揺らし俺の行動を妨げる。


踏まれたら? 当然死ぬ。


『…………』



移動直後、動きと揺れが治まったのを見計らい、その大亀の足下にダッシュ。


そして鍬を振りかぶって――



「『ホースラッシュ』!」



鍬の武技、『ホースラッシュ』。

エフェクト付きの一振りは、グリーンスライムなら結構なダメージを叩き出すんだが。


『――――』

「……まだ3%も減ってない」


地雷3発、『ホースラッシュ』3発。

これを右足に入れたが減ったのはそれだけ。


単純計算で――地雷を後40発、『ホースラッシュ』40発か……吐きそう。


後のログイン時間全部賭ければ倒せるか?


「……ま、逃げる選択肢は無いんだけど!」


あのリンカの勇姿を見てから、謎に俺は意地を張ってる気がする。


自分らしくない。

でも、こっちの方が楽しいからいいや。



『――――』

「『罠設置』!!」



俺の集中が切れれば終わり。

さあさあ、地獄の始まりだ……!



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