闊歩する大地《グラウンド・トータス》
☆
アレから。
脱獄後、始まりの街・闇市に移動。
「人いねーじゃねーか!」なんて叫ぶリンカを尻目に、案内して終わり。
まあココ罪ポイント相当数無いと来れないからな。
恐らく100が最低だろう。
「……明日はボス倒して、今度こそテメーに追い付く!」
「おう、待ってるぞ」
「でもココ、本当に人いないね」
「……まさか」
「撫でて」
後ナデナデタイムも。気に入り過ぎだろ。
「ばいばい!」
「またな」
そして、今霧となって彼女は消えた。良い奴だったよ……(ログアウト)。
子供をココまで夜更かしさせたのは少し悪いと思ってしまう。
もうちょっと早くフレンドリスト見ときゃ良かったな。
「……看守はまた今度で良いか」
あんなの見せられた後だし、今はグリーンエルドを進みたい。
ああ鍬、リンカに使って貰うの忘れてた。
ま、何とかやろう。
時間は――あと三時間ぐらいあるし。
「ああ、クソ」
闘いたい。
未知の敵に。強敵に。
全く……リンカの熱にでも当てられたか?
この鍬が疼くぜ――ああダメだ、ダサすぎ。
アイアンホー!(鳴き声)。
☆
《グリーンエルド・闇市に移動しました》
《グリーンエルド・戦闘フィールドに移動しました》
緑が目に優しいこのフィールド。
ふと思う、あの牢獄はココにもあるんだろうか――今日は流石に挑まないけど。
空瓶を大量に買い込んで、ポーション持って準備バッチリ。
人が全く居ないせいで、どこで狩っても何も言われない。
これ本当にMMOか?
《グリーンスライム LEVEL20》
《グリーンピット LEVEL20》
「コイツらはもう良いか」
緑になっただけのスライムとウサギを横目に歩く。もはや癒し。
もっと進もう。
グリーンエルド冒険隊(俺一人)はジャングルの奥地へ向かっていく。
そこで待ち受けていたのは――
☆
広がる光景はより深くなった密林。
そこで俺はあぐらをかいて座っていた。
……いや進めよだって?
大丈夫、俺は歩みを止めていない。
《アースタートル LEVEL25》
「サイコー」
ゆっくりゆっくりと密林を歩く、体長2mぐらいのデッカい亀。
俺は、そんな彼の背中に乗って進んでいる。
甲羅の上は意外と快適だ。
ちなみにコイツ、移動速度はかなり遅いものの攻撃力・防御力共に結構高い。
攻撃方法はタックル・甲羅に潜っての回転攻撃。
近付かれたら面倒だが、距離を取れば余裕だ。
『コッ』
「おーよしよし」
アースタートル君の甲羅を撫でる。
気持ちよさそうにしながら、また進んでいく彼。甲羅の上なのに感触とか感じるんだ。
……で、どうして俺がそんな『敵』の上で座っていられているのか?
□
《スキル説明:罠設置》
捕獲罠:モンスター相手に使用することで、低確率で一定時間そのモンスターを使役出来る。
□
狩っていたらスキルレベルが上がり。
新たな罠士スキル、捕獲罠をゲットした。
これを設置すると、オレンジ色の小石サイズの物体が現れる。
で、その付近にモンスターが現れると、その物体をモンスターが口にする。
その後は『使役に成功しました』か、『使役に失敗しました』ってメッセージが現れ……成功すると今のアースタートルみたいに首輪が付く。
恐らくだがモンスター限定だろう。俺はその餌を口にしてみても何も起こらなかった。みかん味かな? なんて思ったけど味も無い。ガム替わりにはならないようだ。
というかプレイヤーに首輪とか出来たらとんでもない事に。
流石のリンカでも多分キレる。
『コ』
「良い子だ」
俺が歩けば追従、もしくはこうして騎乗したら自動運転。敵に攻撃したら一緒に攻撃もしてくれる。
チュートリアルを熟して分かったが……罠の解除同様、モンスターに視線を合わせると使役も解除出来る。ヤバいのを使役した時も安心。しかも『解除』以外にも『待機』とか『攻撃』とか色々指示できる。面白い。
なんだコレ強すぎ……そう思ったのは最初だけ。
味方になってくれるモンスターは少ない。
例えばグリーンスライム。不可能。
例えばグリーンピット。不可能。
その後遭遇した奴らも全部。
もちろん何回も試して、である。
HP削ったり状態異常にしたりと……色々やったがダメだった。
ポ〇モ……いやなんでもない。
今のところこの『アースタートル』だけ。しかも一発成功。鈍いからかな?
試しに背中に乗ったら勝手に進んでいくもんだから、このグリーンエルドの散歩をお任せしているところである。
「……こういう時間も必要だよな」
『ココ』
あぐらじゃ飽き足らず、俺は甲羅に寝転がってみる。
頭上に広がる緑は――現実で広がるビル群とは違い癒し効果を与える様だ。
ゆっくりと進む光景。
何時かココも、プレイヤーで溢れかえる事になるんなら。
《スクリーンショットを撮影しました》
「……うん、完璧」
誰も居ないこの緑を写真に収める。
木々の隙間から漏れてくる暖かい日光。
呼吸している葉の群れ。鳥達の影。
『……』
「……ん?」
その映えに我ながら関心していると――彼が足を止めた。
『……コッ。ココッ』
「うあッ!? おい――」
唐突の裏切り。
アースタートル、急発進。
地面に落ちる俺。
そして、そこに広がる『光景』を見て。
「……は?」
目の前。
その『大地』を背に乗せて――ゆっくりゆっくりとソレは進む。
視界を占領する、その頭と手足、甲羅。
《『闊歩する
これは『光景』じゃない。
『モンスター』だ。
《ユニークモンスターに遭遇しました!》
《称号:未知との遭遇を取得しました》
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