革命


『ひっ!』

『テメェ何モンだぁ!!』

『出てけ!!』



あの見えたドーム状の建物の中には、始まりの街の非戦闘フィールドの様にNPC達が一杯居た。

美しい光景だった。

中は緑のカーテンが日光を丁度良いぐらいに遮断し、中にはランタンっぽい何かが照らしている。


幻想的、かつ人の手が感じられる暖かな風景。そして入った瞬間、NPCが表情変えて襲ってきた。


逃げた。

泣いた。



「はぁ……ま、仕方ないか」



罪ポイントの影響だろう。

ウッキウキで入ったらこれである。

心構えしてないとかなり傷付くよねコレ。


「えっと、闇市闇市……あそこか」


このデカいドーム状の建物から数10m。

マップを見ながら進んでいく。

そして、そのエリアに入れば――



《グリーンエルド・闇市》


「……悲しいよ俺は」


見えたのは、またも立派で巨大なドーム……じゃなかった。


ちょっと木の壁があるだけの野営地である。そしてそこにポツポツとテントが経っていた。恐らく中にNPCが居るんだろうけど。

寂しいキャンプ会場ですかココは?



キャンプ場……いや間違えた、闇市。

その1つの『武器店』に入る。


顔に彫りがあるおっさんが一人。

俺の顔を見ると、さっきまでのNPCとは違い暖かな笑顔で迎えてくれた。


『いらっしゃい。見ない顔だね』

「どうもどうも」


《武器を見る》


「……どうせ何も装備出来ないんだけど」


未だ俺は素手だ。

ぶっちゃけ罠士が殴るのってどうなの?


普通弓とかでカッコ良く狩らない?

リンカみたいにさ。


「あ、でも結構種類増えてんな……」


片手剣とか、両手杖とかだけだったけど。

見れば――両手剣や大盾、鞭なんてものもある。


アイアンソード

1000G

※職業制限により装備不可

アイアングレートソード

※職業制限により装備不可

1000G

アイアンアックス

1000G

※職業制限により装備不可

アイアングレートアックス

1000G

※職業制限により装備不可

アイアンロッド

1000G

※職業制限により装備不可

アイアンスコップ

1000G

※目標ステータス不足により装備不可

アイアンホー

1000G

アイアンハンマー

1000G

※罠士:装備不可

アイアングレートハンマー

1000G

※罠士:装備不可


「……ん?」


俺の目、おかしくなったのかな。

これは幻想か?

それとも夢か?


「なあおっさん、ココの商品って嘘とか書いてないよな?」

『ああ、勿論。ルートは保証しないが』

「ありがとう、助かるよ」


怖い。

でも今は気にしない。


《アイアンスコップを購入しました》

《アイアンホーを購入しました》

《2000Gを消費しました》


「……」


【アイアンスコップ】

必要STR値10・DEX値10 

※ステータス不足:装備不可

ATK+15 


農士が主に扱う、土を掘る道具。

特定のスキルが強化される。

一応武器としても使用出来る。


レアリティ:1

製作者:NPC


【アイアンホー】

必要STR値10

ATK+10


農士が主に扱う、土を耕す道具。クワ。

特定のスキルが強化される。

一応武器としても使用出来る。


レアリティ:1

製作者:NPC



「っしゃああああうおおおおおおきたああああ!!」


街中でも構わない、俺は叫んだ。

ようやくだ。

やっと、武器を装備出来る!


《アイアンホーを装備しました》


「うおっ、結構デカいなコレ」


それは、現実でも見た事あるくわだ。

身長ほどの木の棒の先に、長方形の鉄板が付いている。

斧に似ていて、刃部分が薄い鉄の板になった感じだ。

ちょっと棒長いけど。


「『ホー』って鍬だったんだな……ダサいけどまあ良いか」


ホーって何だよホーって。

ソード! とかハンマー! とか武器っぽい感じじゃない。

実際農作業道具だし。アイアンホー!


「ま、とりあえず使ってみよう」





《グリーンスライム LEVEL20》


「――ッ、らあ!」

『ピギ』


「ッ……素手のがマシだわコレ!」


鍬というだけあって、とにかく扱いづらい。俺が農家だったら話は別だが平のサラリーマンだ。

片手でなんてもってのほか、両手でも満足に攻撃出来ない。


江戸時代、百姓一揆。

彼らは、鍬や竹槍を持って領主に突っ込んだ……と思いきや、闘う事なんてしなかったという。あくまで持ってるだけ。

そりゃそうだよな。『こんなの』で戦闘なんてどうかしてる。


「運営に一揆してやろう」


徒党組めないから諦めよう。

とにかく、この鍬については要検証だ。

見捨てるなんて選択肢は無い。


「……で、スコップか」


【アイアンスコップ】

必要STR値10・DEX値10 

※ステータス不足:装備不可

ATK+15 


農士が主に扱う、土を掘る道具。

特定のスキルが強化される。

一応武器としても使用出来る。


レアリティ:1

製作者:NPC


STRは足りてる。

だが、DEXが足りない。あと2。

他のソードとか見たら分かるんだが、大分ステータスの要求値は低い。

しかしながら、DEXにはほとんど振ってなかった俺だ。足りなかった、残念。

次はステータス、DEXに振ろう。


「地雷グレネードの為だ。一石二鳥」


さっきみたいに大樹霊とかデカい相手なら良いんだが、小さい……それこそ動きも早い、ノーマルビットみたいな奴はDEXがいる。


DEXとか全然変わらないだろ……そう思ってたんだが、案外違いはあるらしい。

何で分かるかと言えば――


《――「DEXは結構デカいぜ。狙いを付けるのが早くなったし、精度も上がってる」――》


あの『最強無敵! 天才少女リンカさん』が言うぐらいだ。

戦闘において彼女の感覚は、間違いないと言って良いだろう。クソガキだけど。


「今度アドバイス貰おう……じゃ、コイツの為に頑張るか」


レベル上げは置いといて。

手に持つ鍬を撫で、俺はグリーンスライムに向かっていった。

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