『罠士にとって、ソレは頼れる“手”となることだろう』
新フィールドへ
《ミナト様からメールが届きました》
《EDGE様からメールが届きました》
《アオイ様からメールが届きました》
《VP様からメールが届きました》
《ももも様からメールが届きました》
《よっしー様からメールが》
《――――からメールが届きました――》
《メールが届きました――》《――――メールが届きました》《メールが届――》《――――様からメールが――》《メールが――》《――――メールが》《――――メールが――》《メールが――》
「め、メニュー!」
《本当にメール機能を停止しますか?》
《解除するには再度メニューから――――》
「『停止』!!」
《メール機能を停止しました》
《お困りの際は、メニューから通報機能・ブロック機能をお使い下さい》
《悪質なメールを受け取った際は、すぐに通報機能を活用下さいませ》
「……ありがとう。考えとく」
びっくりした。
整理しよう。
メッセージ機能はフレンドのみ。
メニュー機能は誰でも来るのか、ならもうしばらく停止で良い。
《メッセージリクエストをリンカ様に申請します》
《メッセージリクエストが承認されました》
《『急に何だよテメー! しかもボスとか倒しやがって!』》
《『ん? 《こんなの》お前なら楽勝だ。心配しなくていい』》
《『! そ、そっか』》
《『要件を話すぞ、リンカってもし連絡取るとしたら電話かメールどっち使う?』》
《『電話』》《『電話、だよな』》
《『なにハモらせてんだよ気持ち悪ィ!』》
ビンゴ! 気持ち良いね、思考を読むのは。
だってリンカがポチポチ文字打つの想像出来ないもの。
《『俺、しばらくメール機能停止するから。そのつもりでよろしく』》
《『……? 分かった』》
《『じゃ。ちょっと新フィールドでも探索してくる、困った事があれば泣きながら掛けてこい』》
《『しねーよバカ! すぐ追い付いてやるからな!』》
《『おう』》
《『……切れよ!』》
《『やっぱお前自分から切れないタイプ――』》
《『――うっせー!』》
《リンカ様とのメッセージを終了しました》
「……どうするかな」
今広がる光景。
始まりの街の戦闘フィールドと異なり、そこは草原ではなくジャングルだった。
大樹霊を倒して、出口みたいな所から出たんだが……マップすら無い、辛い。
とにかく進むしかない。
「虫居なくて良かっ――!?」
《グリーンスライム LEVEL20》
「……ああ、お前か」
『ピギ』
足下、踏みつけそうになったが寸前で避けた。コレまでの水色と違い、緑色に変化したソイツ。擬態色。
見ていて安心感すら覚えるよ。今やファンタジーといえばお前だもんな。
「コイツに会うの、俺が初めてなんだな」
そういえば、と思い呟く。
記念写真でも撮っておこうか。
……明日、使わせて貰うぞ。
「はいチーズ」
『ピギ』
☆
「まだ着かない」
ひたすら歩いて十数分。
何も見えない、そして辿り着かない。
遭遇したのはグリーンスライムのみ。
……一旦止まって考えよう。
「そういやアレがあった、インベントリと……」
『大樹霊の枝』だ。
アイツを倒した時に手に入れたそれ。
恐らく何かの素材アイテムなんだろうけど。
□
アイテム説明:大樹霊の枝
グリーンエルドへ行く者を阻むと言われる、
枝の1つといえど、凄まじい力を感じる。
□
「おもッ」
とりあえずインベントリから選択、取り出す。長さにして1mぐらい。太さは20㎝ぐらい……ちょっとした丸太だよこれ。
「ッ……」
とりあえずそれを持って歩いてみるが。
特になにも起きない。
なんでゲームでこんな重労働してんだろ。
ずるずると引きずるのも疲れた。
一度それを置いて、手から離し座り込む。
「……ん?」
□
アイテム説明:大樹霊の枝
グリーンエルドへ行く者を阻むと言われる、
枝の1つといえど、凄まじい力を感じる。
□
説明文をもう一度読み返す。
もしかして、これ。
『持ってるのが』ダメなのか?
「……はは、まさか――おらッ!」
とりあえず、それを投げてみる。
すると――
《大樹霊の枝を取得しました》
『帰ってきた』。
「こ、怖い!」
枝がひとりでに俺の元へ転がってくるのだ。
怖すぎる。
顔とかないから逆に不気味。
「……呪いのアイテムかよ、大樹霊。ぶっ壊してやる」
戻ってくるなら壊すしかない。
とりあえず枝を地面に出して。
「『ストレート』――正解っぽいな」
殴って見れば、その杖にHPバーが現れた。
後は削るのみ!
☆
「『同時罠設置』」
《地雷を設置しました》
《落とし穴を設置しました》
『……!』
《落とし穴が発動しました》
《地雷が発動しました》
「枝を殴るなんて人生初だな」
落とし穴の中に落ちる枝に、追撃で近くにあった地雷も落下して枝に到達。
ボカン。
枝が落とし穴にハマる光景は中々にシュールだった。中で爆発するのも。
この枝、攻撃を食らうと硬直するようで……延々と落とし穴を設置、そして同時罠設置のクールタイムが終われば地雷を追撃で設置。
そのループで、みるみる内にHPは削れていって。
今、ゼロになった。
《経験値を取得しました!》
《マップ『グリーンエルド』を取得しました!》
「……すげー」
瞬間、前にある森林達は突如として消えて。
現れたのは、真っ直ぐ続く道。
そして遠くには、蔦や光る球体で囲われた、巨大なドーム状の建造物。
見上げる程のそれ。
「……行くか!」
こんな事をされちゃったら胸が高鳴るのも仕方ない。
緑の風景を楽しみながら、俺は足を進めていった。
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