大樹霊《アルボル・アーヴァス》
☆
《
《地雷が発動しました》
アレからひたすら地雷グレネードを投げ続けた。HP残量70%。
コイツ、見た目通り『移動しない』。
だからやりたい放題である。
遠距離職はAGIとか振らないだろうから大変だろうけど、俺はほとんどAGIに振っている、回避余裕――
『オオ……オ――』
突如。
地の底からの呻き声の様なモノが聞こえ。
その大樹霊は、いきなり『姿を消す』。
あの巨大な枝も葉も、幹も全てが消えてしまって。
「えっ」
1秒、2秒、3秒。
そして――
『――――オオ、オ』
「――!?」
合計6秒の静寂の後に、その呻き声で振り返る。
気付けば後ろに居た。
触れてしまえる程に近い距離。
巨大な幹が、まるで俺を覆う様に存在していて。
その生えている枝の1つがぐにゃっと曲がり、なぎ払う様にこちらへと――
『――――!』
《落とし穴が発動しました》
「っぶね――!!」
それはまるで殴られる様に。
頭上を、直径1mはあるかってぐらいのず太い枝が横に通り過ぎる。
落とし穴ダメージで俺の残りHP90%。
……何があっても良いように、近くに落とし穴を設置しといて良かった。
ま、この穴一秒しか持たないんだけど――
『――――!』
「ッ、当たれば終わり――!!」
ひょっこりと穴から出ると、追撃で枝の振り下ろしが待っていた。
当たったら死ぬ、そう身体に念じながら横っ跳び。
「ッし――」
その枝は地面を叩き、凄まじい衝撃が俺の横で起きる。
……回避成功。
『――――』
「『高速罠設置』!」
もう一発、なぎ払いのモーション。
「回避』する。『距離』を取る。
この2つを同時にするなら――やはりコイツしかない!
《地雷を設置しました》
大樹霊の幹に手を押し当て、地雷を設置。
設置後すぐ手を離し、もう一度タッチ。
起動!
《地雷が発動しました》
「――――はッ、よし……」
その衝撃波で俺は後ろへ吹っ飛ぶ。
なぎ払ったその枝は空振り。
俺の体力は結構削れて残り70%。
ま、これ全部自分で減らしたんだけど。
罠のご利用は計画的に!
☆
《
大樹霊、インベントリ内の空瓶を総動員して残りHP40%とちょっと。
そろそろアレが来るかな。
「『同時罠設置』」
両手の手の平に空瓶を載せてスキル発動。
《地雷を設置しました》
《地雷を設置しました》
最初は慎重に1つずつ地雷グレネードを作製していたが、今はもう慣れたから2つ一気に作った。
そしてその内の1つを――投擲!
《地雷が発動しました》
『オオ……オ――』
命中。あの呻き声。
そして――『消えた』。
やはりHPを30%減らす度にあの『移動』が来る様だ。
「……『罠設置』」
ぶっちゃけアレは初見殺しで、一度喰らえば準備出来る。瞬間移動って訳じゃなく、5秒の空白があるからな。
さあ、ここで検証開始だ。
地面にそのスキルを発動。
《落とし穴を設置しました》
「『高速罠設置』」
《落とし穴を設置しました》
一応、保険で少し離れた位置にも設置。
さあ。
この大樹霊は、落とし穴に引っかかるのか?
絶対無理だろ! そう思う自分には蓋をして、行く末を見守るのだ。
一応消えた後に罠仕掛けたし、バレてはいないはず。
……。
もし引っかかったら、5年使ってないトゥイッターに投稿してやろう。
いや、絶対ないだろうけど――
《落とし穴が発動しました》
『――――オオ、オ――!?』
「……おま」
背後。
そこには、穴にハマった大樹霊が居た。
見れば穴のサイズはかなりデカくなり、直径1m程度……しかしコレまでの検証と違い、身体全てが埋まっていない。
『傾いて』いるのだ。
穴によって体勢が崩れ、そしてそのまま――
『オオオ、オ、オオオオオオオ――!?』
倒木。声にならない悲鳴。
その巨木が倒れていき、下にはウヨウヨと動く根っこの様なモノが見えてしまっている。
《落とし穴が発動しました》
そして倒れた先、横にあった落とし穴に太い枝が突っ込んで追撃。
身動きがとれないのか更にウヨウヨする根っこ。
ジタバタする大樹霊の姿がそこにある。
残りHPは大きく減って25%。
……マズいな、完全に油断した。
こ、これは。
面白すぎる――!
「わ、わな――はッ、ああクソ、『罠設置』……」
《地雷を設置しました》
「あッ――」
倒木する大樹霊に近付く訳にもいかず、地雷グレネードを作製しようとしたが。
目の前に広がる光景で思わず笑って手が震えてしまい、そのまま地雷は空瓶の中ではなく俺の脚へ――
『検証ナンバー2』
罠は手で設置後、再度自分で触れても発動する。
《地雷が発動しました》
「ミスった――ぐあッ!! クソ……覚悟しろよ」
爆発する俺の地雷。吹っ飛ぶ身体。
大樹霊はこんな『怯み』状態。手を出さない馬鹿は居ない。
なのに手を出せずに自爆してしまった。
リンカに罵られても仕方ないレベル。
こんな方法で、地雷グレネードを封じてくるとは思わなかったよ。
恐るべし大樹霊。
……なんて。
後は、消化試合だな。
約束通り、SNS用の撮影を忘れずに!
☆
《落とし穴が発動しました》
《落とし穴が発動しました》
『オオオ、オオオオ――!?』
やがて。
悲しきモンスターの定めか、自分から罠に突っ込んでいく大樹霊。
それを動画に残しながら――俺は笑って呟いた。
「やっぱり落とし穴は最高だ」
メインウェポンは地雷だが。
“リーサルウェポン”は落とし穴。
さあ、響かせろ。
そのアナウンスを――――
《フィールドボスを倒しました!》
《おめでとうございます! 新マップ・グリーンエルドへ移動出来るようになりました!》
《大樹霊の枝を取得しました》
《ダガー様が、フィールドボス・大樹霊の初討伐に成功しました!》
……アナウンス、ちょっとデカすぎない?
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