大樹霊《アルボル・アーヴァス》



大樹霊アルボル・アーヴァスLEVEL20》


《地雷が発動しました》


アレからひたすら地雷グレネードを投げ続けた。HP残量70%。

コイツ、見た目通り『移動しない』。

だからやりたい放題である。


遠距離職はAGIとか振らないだろうから大変だろうけど、俺はほとんどAGIに振っている、回避余裕――



『オオ……オ――』



突如。

地の底からの呻き声の様なモノが聞こえ。

その大樹霊は、いきなり『姿を消す』。

あの巨大な枝も葉も、幹も全てが消えてしまって。


「えっ」


1秒、2秒、3秒。

そして――


『――――オオ、オ』


「――!?」



合計6秒の静寂の後に、その呻き声で振り返る。

気付けば後ろに居た。


触れてしまえる程に近い距離。

巨大な幹が、まるで俺を覆う様に存在していて。


その生えている枝の1つがぐにゃっと曲がり、なぎ払う様にこちらへと――


『――――!』


《落とし穴が発動しました》


「っぶね――!!」


それはまるで殴られる様に。

頭上を、直径1mはあるかってぐらいのず太い枝が横に通り過ぎる。

落とし穴ダメージで俺の残りHP90%。


……何があっても良いように、近くに落とし穴を設置しといて良かった。


ま、この穴一秒しか持たないんだけど――



『――――!』


「ッ、当たれば終わり――!!」


ひょっこりと穴から出ると、追撃で枝の振り下ろしが待っていた。

当たったら死ぬ、そう身体に念じながら横っ跳び。



「ッし――」



その枝は地面を叩き、凄まじい衝撃が俺の横で起きる。

……回避成功。


『――――』


「『高速罠設置』!」


もう一発、なぎ払いのモーション。

「回避』する。『距離』を取る。

この2つを同時にするなら――やはりコイツしかない!


《地雷を設置しました》


大樹霊の幹に手を押し当て、地雷を設置。

設置後すぐ手を離し、もう一度タッチ。


起動!



《地雷が発動しました》



「――――はッ、よし……」


その衝撃波で俺は後ろへ吹っ飛ぶ。

なぎ払ったその枝は空振り。


俺の体力は結構削れて残り70%。

ま、これ全部自分で減らしたんだけど。

罠のご利用は計画的に!




大樹霊アルボル・アーヴァスLEVEL20》


大樹霊、インベントリ内の空瓶を総動員して残りHP40%とちょっと。

そろそろアレが来るかな。


「『同時罠設置』」


両手の手の平に空瓶を載せてスキル発動。


《地雷を設置しました》

《地雷を設置しました》


最初は慎重に1つずつ地雷グレネードを作製していたが、今はもう慣れたから2つ一気に作った。


そしてその内の1つを――投擲!


《地雷が発動しました》


『オオ……オ――』


命中。あの呻き声。

そして――『消えた』。

やはりHPを30%減らす度にあの『移動』が来る様だ。


「……『罠設置』」


ぶっちゃけアレは初見殺しで、一度喰らえば準備出来る。瞬間移動って訳じゃなく、5秒の空白があるからな。

さあ、ここで検証開始だ。

地面にそのスキルを発動。


《落とし穴を設置しました》


「『高速罠設置』」


《落とし穴を設置しました》



一応、保険で少し離れた位置にも設置。


さあ。

この大樹霊は、落とし穴に引っかかるのか?

絶対無理だろ! そう思う自分には蓋をして、行く末を見守るのだ。

一応消えた後に罠仕掛けたし、バレてはいないはず。


……。

もし引っかかったら、5年使ってないトゥイッターに投稿してやろう。

いや、絶対ないだろうけど――



《落とし穴が発動しました》


『――――オオ、オ――!?』

「……おま」


背後。

そこには、穴にハマった大樹霊が居た。


見れば穴のサイズはかなりデカくなり、直径1m程度……しかしコレまでの検証と違い、身体全てが埋まっていない。


『傾いて』いるのだ。

穴によって体勢が崩れ、そしてそのまま――



『オオオ、オ、オオオオオオオ――!?』



倒木。声にならない悲鳴。

その巨木が倒れていき、下にはウヨウヨと動く根っこの様なモノが見えてしまっている。


《落とし穴が発動しました》


そして倒れた先、横にあった落とし穴に太い枝が突っ込んで追撃。

身動きがとれないのか更にウヨウヨする根っこ。

ジタバタする大樹霊の姿がそこにある。



残りHPは大きく減って25%。


……マズいな、完全に油断した。


こ、これは。

面白すぎる――!



「わ、わな――はッ、ああクソ、『罠設置』……」



《地雷を設置しました》


「あッ――」


倒木する大樹霊に近付く訳にもいかず、地雷グレネードを作製しようとしたが。


目の前に広がる光景で思わず笑って手が震えてしまい、そのまま地雷は空瓶の中ではなく俺の脚へ――



『検証ナンバー2』

罠は手で設置後、再度自分で触れても発動する。



《地雷が発動しました》


「ミスった――ぐあッ!! クソ……覚悟しろよ」


爆発する俺の地雷。吹っ飛ぶ身体。

大樹霊はこんな『怯み』状態。手を出さない馬鹿は居ない。

なのに手を出せずに自爆してしまった。


リンカに罵られても仕方ないレベル。

こんな方法で、地雷グレネードを封じてくるとは思わなかったよ。

恐るべし大樹霊。



……なんて。

後は、消化試合だな。


約束通り、SNS用の撮影を忘れずに!






《落とし穴が発動しました》


《落とし穴が発動しました》


『オオオ、オオオオ――!?』



やがて。

悲しきモンスターの定めか、自分から罠に突っ込んでいく大樹霊。


それを動画に残しながら――俺は笑って呟いた。


「やっぱり落とし穴は最高だ」


メインウェポンは地雷だが。

“リーサルウェポン”は落とし穴。


さあ、響かせろ。

そのアナウンスを――――



《フィールドボスを倒しました!》

《おめでとうございます! 新マップ・グリーンエルドへ移動出来るようになりました!》

《大樹霊の枝を取得しました》





……アナウンス、ちょっとデカすぎない?



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