『地雷グレネード』


「……ふう」


闇市で検証してたらPKペナルティもゼロに。それからは喫茶店も行ったけど、一杯の珈琲も、お冷すらも飲めずに終わった。爆発したからね。


周囲の目線が痛かったから逃げました。

ちなみにペナルティは発生せず。

代わりに珈琲代300G(お冷はタダ)は消えたけど……おかげで凄いモノが出来たよ。



HPポーションに念のためMPポーション。

そして大量に買い込んだ『それ』をインベントリに入れて、いざ出発!


まずは準備運動からだな。



《アーマーウルフ LEVEL15》


『ガウッ――』

「『アックスキック』」


『ガウ……』


突進してきた銀色のオオカミの頭に、カウンターで素手戦闘スキルで得た武技、『アックスキック』を喰らわせる。

かかと落とし……英語だとそう言うらしい、知らなかった。



《経験値を取得しました》



思いの他レベル20ってのはデカくて、思っているより苦戦しなかったな。


例えばイノシシみたいなモンスター、『ワイルドデグ』とかは落とし穴の格好の餌食。麻痺罠もよく効いて封殺出来た。

スライムとか、ノーマルビットとかはもう楽勝。


ま、そんな感じで色んなモンスターを相手にする事30分ほど。


大分身体も暖まった……もう良いだろう。

いざ行かん!



《ここより先に進みますと、ボスフィールドに移動します》

《よろしいですか?》



「よろしい」



呟きながら前進。


どんどんと、景色が暗くなっていく。

草原なんてもはや消えた。

今俺が歩いているのは、例えるなら夜の樹海だ。



「虫居なくて良かった」



その鬱陶しい緑を掻き分けながら進んでいくと――



大樹霊アルボル・アーヴァスLEVEL20》


『――――』





「……アイツがボスか」



開けた場所に出たと思えば、そこに鎮座するのは巨大な木だった。

そしてよく見ると、その木の枝や幹が脈打つ様にドクンと動く。

植物なのか動物なのか。



『――――』



普通のモンスターなら顔とかあると思うんだが、コイツにはソレがない。

ただ、巨大な『木』としてその空間に存在しており――それがまた、気味悪かった。


「攻撃して良いんだよな、アレ」


システム的に言えば、そのレベル表記からしっかりモンスターだ。

しかし今の風景を客観的に見た時、悪者は俺じゃないのか?


「環境破壊は趣味じゃないが……」


仕方ない、先に進む為だ。

俺は早速――例のアレを2つ取り出す。


《アイテム説明:空瓶》


素材アイテム。

中に製作したポーションや解毒薬などを入れ、使用する事が出来るアイテム。


サイズで言えば、缶コーヒーより少し小さいぐらいのその瓶。


飲み口には蓋があり、それを開けて中のポーションなりを飲む事が出来る。生産職はこれに作った液体を入れるんだろうな。


ま、今は何も入ってないけど。

俺は空き瓶の蓋を取り、手の平の中央に飲み口をくっつける。


「『罠設置』」


《地雷を設置しました》


「……いつか修正されるかもな、コレは」


呟く俺の手からは地雷が当然の様に生成。

そしてその地雷は、瓶の中へとコツンと入る。蓋を閉める。

後は俺がいくらコイツを触っても爆発しないし、防具のポケットの中にすら入り込む。

当然普通の地雷なら即ボカンだ。

しかしこの瓶が外界との遮断を行ってくれるので、コイツが『割れない限り』は地雷は爆発しない。


何が言いたいかといえば、コレを敵に投げて瓶を割り、出てきた地雷が敵に接触、『ボカン』。

スライムみたいな柔らかいモンスターの場合は、直接じゃなく地面に放れば良い。ダメージは少し落ちるけど。



……『地雷グレネード』、これこそ俺が見つけた、地雷の有効活用方法だ。



「じゃ、早速行ってみるか――!」


その場で色々準備して。

その手に持つ地雷グレネードを、10m程先に居る大樹霊に投げた。


『――――!』


《地雷が発動しました》


ど真ん中、樹皮にそれは到達。

パリン、ボカンッと音が鳴り――大樹霊のHPを一気に2%ちょっと削った。


……うん、やっぱ強いわコレ。

今までは、近付いて素手戦闘でちょこちょこ削る、隙があれば高速罠設置……そんな攻撃しか出来なかった。


しかしこれは『遠距離攻撃』。安全圏から攻撃できる。

しかも補充も簡単。空瓶さえあれば何度も出来る。

いちいち地面に触れなくて良いのも大きい。

さらにこの空瓶、素材アイテムだからかインベントリ内に100個までスタック出来る……さらにさらにお値段一個20G。非の打ち所がないね。

罠士のメインウェポンとしてこれから活躍してもらおう!


『――――』


「ッ!」


流石にされるがままでは無かった。

その大樹霊は巨大な枝をしならせ――1mぐらいはある葉っぱを一枚飛ばしてくる。


「流石に避けれるな……『罠設置』」


《地雷を設置しました》


防具のポケットに詰め込んだ空瓶を1つ手に取り、地雷グレネード作製。



『――――』


「――余裕余裕……とッ!!」



今度は丸太みたいなのが飛んで来たが、コレだけアイツと距離が離れていたら避けるのは容易だ。

そのまま投擲!



《地雷が発動しました》



「よし」


既に大樹霊のHPは95%。

この感じで削っていこう!

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