第7話

翌日行きたくなく休もうとも思ったが

弁解のチャンスがあると思い

出社した。


会社に着きオフィスに入った。


やはり誰も話しかけてこなかった。


ヒソヒソと話しているのが見える。


「見えない所でやれよ」


と思ったが

わざと見える所でやる事に意味があるのだ。

これが他人の悪意だ。


目立つ人間の転落は普通の人達にとっては

娯楽なのである。


この日から有る事無い事噂が立った。

本当の事もあるから何も言えない。


弁解など無理だとはっきりとわかった。


プライドの高い人間ほど

打たれる事に慣れていない。

メンタルが弱いのだ。


自分より優れているかいないかで

判断を付ける。


今まで自分がしていた事が返って来ただけだが

男は気付かない。


「お前らにわかってもらわなくてもいい」


逃げるように倉庫に向かった。


倉庫に着いてすぐに、

また上司に呼ばれた。


そのまま個室に入り


「君の処分についてだが

まだ決めかねている

女性を襲ったと言うのは本当かね?」


その事を忘れていた。


「警察から連絡がきて

君の事を聞かれてね。

詳しくは教えてくれなかったが

部下達が騒いでいたんでね。」


「女性を襲うなんてしてません!

誤解です!」


はっきりと反論した。


しかし


「ホテルの前で揉めていたと聞いた。

警察も来ていたと聞いているが?」


「女性とは合意の元です!

襲ってなどいません!」


墓穴を掘った。


「確か君には

この会社に彼女がいたのではないかね?

別れ話などは聞いていないが

どうなのかね?」


答えられない。


「その彼女から君がホテル前で揉めていたと

聞いた日に連絡があってね。

会社を退職したいと言われたのだよ。

精神的問題と言っていたが…

心当たりはあるかね?」


顔が青褪めていくのが

自分でもわかった。


「何も聞いていないのかね?

とりあえず当分の間は休むように

伝えたのだが…」


冷や汗が吹き出す。

何もわからなかった。

今自分が置かれている状況が

全く飲み込めない。


何も答えられないまま


「謹慎処分とはまだならないが

全てがはっきりするまで当分は

倉庫の整理の方に回ってくれ。」


そう言われ倉庫に戻らされた。


何も手が付かなかった。

やはりすべてを見られていたとしか思えない。

彼は初めて後悔した。


もう遅いが。


それでも謝ればなんとかなると思っていた。


その日はそのまま業務が終了し

足速に帰宅した。


帰宅と同時に警察から連絡がきた。


今回の件は同意の元だったと女が認めたらしい。

メッセージのやり取りなどが証拠になり

被害届けを提出しないと言ってきた

と言う事だ。


「当たり前だ!」


苛立ちが募る。


鼻の事も事故という事になるがいいかと聞かれた。


訴えると伝えたが


現場での目撃者証言が全員


「何かに躓いて転んだだけで

故意には見えなかった」


と言っていたらしく、

立件は出来るが、

罪は、重くならないらしい。

示談の方がいいのではとすすめられた。


「民事不介入なのであとはそちらで」


と言われて


もし被害届を出す場合は

持ってくるように言われた。


「意味がわからない」


また当たり散らし

痛みが増した。


数日のうちに劇的に変化してしまった。


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