第6話

男は倉庫で一人考え込んでいた。


「なぜこうなった」

「全て上手くいっていたのに」

「どこかで間違えたか?」

「俺は悪くない」


など、よくもわからない事を

ブツブツと嘆いていた。


自業自得である。


その日は結局定時まで

倉庫で一人だった。


帰宅の準備をする為に

オフィスに戻ろうとしていると

上司に呼び止められた。


また個室に連れて行かれ


「社員の何人かが

君の仕事を無理矢理やらされた。

と証言している。

君を困らせる為にわざと

ミスをしたそうだ。」


「横領に見せかけていただけで

数字も合わせていたようだが。

その辺はこらから詳しく話を聞いていく。

君には期待していたんだがね…

まさか人にやらせた仕事を

自分の手柄にしていたとは。

何かしらの処分が降るとは思うが

とりあえず今日はもう帰ってもらって結構だ。」


反論する気すらも無くなって


「失礼します。」


と個室を後にした。


オフィスに入った瞬間

みんなからの向けられる軽蔑の目が

耐えられず逃げるように

会社を出た。


先週までは全て上手くいっていたのに

全く逆になってしまった。


ここから更に落ちていく事を男は

まだ気付いていなかった。



帰宅してからすぐに

彼女に連絡をしてみたが

やはり繋がらない。


「完全にブロックされている。」


鼻の事も忘れるほど激動の一日だったが

ここにきて痛みまでも思い出してしまった。


「くそくそくそ」


また当たり散らし痛み止めを飲んだ。


痛みが治まってきてから

彼女のアパートに向かう事にした。

アパートまでは離れているので

タクシーを捕まえようとしたが中々

捕まらない。


全て上手く行かなくなってきている。


やっと捕まえたタクシーに乗り

彼女のアパートに向かった。


ついてお金を払おうと思うと

財布を忘れた事に気がつく。


「ちょっとだけ行ってくるんで

待っててもらえませんか?」


と伝え彼女にアパートに向かった。


しかし中に人がいる様子はない。

インターフォンを押しても

応答はない。


たまたま隣の部屋の女性が帰って来たので

訪ねてみると

何日も見ていない

と言っていた。


軽くお礼を告げて

タクシーに戻った。


彼女の行きそうな所に行ってみようと思い

運転手に目的地を次々に伝えた。


どこにもいなかった。


そのままタクシーで帰宅して

部屋から財布を持って行き代金を請求すると

二万円近かった。


文句を言ったら


「あれだけ行かされたら

このくらい行きますよ!」


と逆に怒られた。


「何時間たってると思ってるんですか?」


とも言われた。

とっくに12時を超えていた。

仕方なく代金を払い帰ってもらった。


流れが完全に悪い方に向かっている。


このまま部屋に戻り寝ることにした。


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