第5話

警察署からそのまま帰宅し彼女に連絡をした。

しかし全く繋がらない。


「なんなんだよ」


と独言る。


女の方もブロックされているのか繋がらない。


鼻も痛いし、

鼻血も止まらない。


「なんで俺がこんな目に合わなきゃ行けないんだ」


一人で物に当たりまくっていた。


結局この日はどちらとも連絡が取れず終わり、

処方されていた痛み止めを飲み

そのまま眠りについた。



翌日、会社出勤すると

みんなの様子が明らかにおかしかった。


鼻の事があるからなのかと思い


「おはよう!

休み中に鼻ぶつけてさ

骨折しちゃったんだよ。」


と話しかけたが


「へぇそうなんだ」


と避けるようにみんなが離れて行った。


先輩も後輩もみんなそんな感じだった。


同期を見つけて声を掛けた


「みんなに避けられてる気がするんだけど」


と尋ねてみると


「当たり前じゃん。

ホテルに女の子を無理矢理誘って

彼氏の男に殴られたんだろ。」


別な同期が


「その近くにたまたまいた先輩が

その一部始終を見たって。

女の子が泣いて彼氏に叫んでたって。」


「その後はパトカーやら

救急車やらが来て

大騒ぎだったて。」


何を言われているのかわからなかった。

同期の男は気を失っていたから

その後に何が起きたか警察に聞いただけだった。

しかも、そんな所を先輩に見られてたなんて。


「そんな事、誰が言ってるんだ!」


頭に血が昇って怒鳴ってしまった。


「口から生まれたような

あのお喋りな先輩だよ。」


同期が応えた。


最悪だった。

あの先輩なら誰にでも言ってしまう。


「彼女がその日のうちに

上司に退職したいと伝えて来たらしいぞ。

精神的にとかって言って。

上司はお前にも連絡したらしいが出なかったから

今日聞かれるんじゃないか?」


「彼女にも見られたのかも知れないな。

まだ本当かわからないから俺たちは

話せるけど、

流石に女性社員は

お前に近づきたくないんじゃないかな。」


とだけ言って離れて行った。


頭が真っ白になった。


彼女に見られていたかも知れない。


連絡もブロックされているのか。



そのまま自分のデスクに座ろうとすると

今度は上司に呼ばれた。


「彼女の事を聞かれるのか?

それとも俺のことか?」


などと思い上司の所に向かい


「失礼します。」


と個室に入った。


まずは座るように促された。


「営業先の会社からクレームが来た。

仕入れの数と金額がずれがあると

調べ直すと

数ヶ月前から少しずつずれていたようだ。」


「どう言うことか説明して貰えるか?」


と言われ


「なんのことかわかりません」


と答えた。


それもそのはずだ。

自分では表面上の仕事しかしていなかったのだから

自分より弱そうな奴や

気の小さそうな先輩達に

上手い事を言ってやらせていたのだから。


最初の頃は一緒にやっていたが

ここ数ヶ月はプライベートが忙しく

ほとんど任せて定時で帰っていたのだ。


悪い事は一気にくる物なのだ。


「わかりませんでは

済まされないぞ?

君の名前で報告書が上がっている。

君以外の名前が書いていない以上

君に聞くしかないのだが?」


さらに追い詰められる。


「黙っていても仕方がない。

会社の方でも調べているが

まさか横領などではないだろうな?」


冷や汗が止まらない。


本当にわからないからだ。

それでも別な誰かに

自分の仕事を押し付けていたとは

言えない。

プライドの高い男は

自分の評価が何より大事なのだ。


馬鹿だ。


ここで答えなくてもいずれわかる事なのに。


「この件の調査が終わるまでは

会社の倉庫で雑用をしてもらう。

何も無ければすぐに仕事に

戻ってもらう。

他の社員にも聴き取りをしなければならないので

君は倉庫に行ってもらって大丈夫だ。」


と告げられ

退室を促された。








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