第11話 ゲーム一日目②

 「お前は、このままだと死ぬ。さあ、どうする? 土下座してお願いしたら、お前のお願いを聞いてやるよ」


 「は? ふざけないで。いい? あんたが『奴隷』であたしが『貴族』。電流のスイッチはあたしがもってる。なんであたしがあんたなんかに土下座すんの? 状況わかってる?」

 状況をわかってないのはお前だよ、朝水。お前には最初の『課題』の件も合わせて、ちゃんとツケを払ってもらうぞ。

「いいか、朝水。これがラストチャンスだ。……土下座しろ。いまならそれでお前の言うこと聞いてやる」

「脳味噌入ってないんじゃないの? なんであたしがあんたに土下座すんの? こっちは力ずくであんたに言うこと聞かせられんだから」

 よし、最後の情けはかけた。ならば後は容赦しない。徹底的にこいつを追い詰める。

 やっと全身の痙攣が治まり、僕はなんとか立ち上がり、ベッドに座り直す。朝水は相変わらず扉の前で仁王立ちしている。

「お前、僕とは別に追加の『課題』を出されてるんだろ?」

「っ……!?」

 分かりやすいな。朝水の顔が一瞬強張る。組んだ腕をより強く結ぶ。鎌をかけたつもりなんだが、どうやは正解のようだ。

「おそらく、『貴族』はペアの『奴隷』にやらせなきゃいけない、または『貴族』がしなきゃいけないノルマがあるんだろ? たぶん三日間、その日のノルマがあって、今日のノルマは『貴族』が『奴隷』を殴ること。で、ノルマ不達成で『貴族』は死ぬ」

 まあ、ノルマ不達成で『貴族』と『奴隷』が共倒れの可能性もあったがそれならそれで構わないとその可能性は考慮しなかった。

 こんなルールがあるから朝水はあんなふざけたことを抜かしたんだろう。

 素直に俺にお願いするのはプライドが許さず、結局『命令』という形を取りしかなくなった。クラスカースト最底辺にそんなに頭を下げたくなかったのか。

 今回の『課題』はヌルゲー過ぎる。ならば何か裏がある。ただ『貴族』に電流のリモコンを渡したところで、『貴族』が必ずそれを使うとは限らない。ならば、リモコンを与えることには合理的な理由がある。それにこの『課題』は『貴族』が有利過ぎる。ならばきっと『貴族』にはなんらかの負荷がかかっているはずなんだ。

「もしかしてノルマについては『奴隷』に言っちゃいけないのか? まあ、どっちでもいいや。お前の反応でこの答えが正解なのは分かったしな」

 朝水が唇を噛んでいる。そんなに悔しいか。

「さて、どうする? お前がいくらリモコンで電流を流そうが僕は耐える。何せ、激痛に耐えればお前は死んでくれんだからなっ!」

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