第10話 ゲーム一日目①
畳三枚分ほどスペース。壁と床は病的にまで白い。ベッドは鉄パイプと金属板をベースに組み上げられ、その上に申し訳程度に硬いマットが敷かれている。ブランケットなどぼろぼろの布切れが一枚。部屋にあるのはベッドとあとは壁にかけられたデジタル時計のみ。扉はあるが、外から鍵がかかる仕組みのため内側からは開けられない。トイレは一応部屋に取り付けられているが、シャワー室はない。どうやら俺は三日間、ここから一歩も出られないないらしい。
デジタル時計は12:00を示している。やることが無さすぎて寝ていたのだが、やっと昼か。
と、そこで
『はろはろー♡ みんな「独房」での生活はどうかにゃー? さてさて、それではお待ちかねの「貴族」様との面会タイムー!! 「貴族」様はペアの「奴隷」と「独房」で三時間だけ過ごしてね。その間は何をするも自由ー!! じゃあ、楽しんでねー』
部屋にはスピーカーなど見えないのにそんなふざけた声が聞こえてきた。
そして、レイユの説明が終わると『独房』の扉が開く。入った来たのは朝水だ。
朝水晴香。彼女が俺のペアにして、俺の
「姫神。アンタがあたしのペアよね?」
わかりきったことをわざわざ質問してくる。
「ああ、そうだ。僕は君のペアの『奴隷』だよ」
「ふーん、そうよね……。なら、『貴族』様のあたしはが『奴隷』のあんたを自由にしていいのよねー」
扉の前で仁王立ちする彼女が妖艶に舌舐めずりをそう呟いた。
……こいつ、頭大丈夫か?
「そうね……。こんなところに閉じ込められてもう一週間近く過ぎて、あたしストレス溜まってんのよ。ストレス発散に付き合ってちょうだい。私に殴られて」
「……え? なんでそんなことすんのさ。僕がこの『独房』で三日間を過ごせば『課題』はクリアするんだ。なら、そんなことする必要は
ビリビリビリビリッッッッッ!!!
僕の言葉を遮るように全身を電流が駆け巡る。
「がっ、あ、はっ、あっかはあ、かっ、は、はっ、はっはっ……」
ベッドの上に座っていた僕はあまりの激痛にベッドから転げ落ちた。
やばっ……。身体に力が入らない。筋肉が痙攣してる。呼吸すらもままならない。
霞む視界で朝水が手のひらサイズのリモコンを弄んでいるのを捉える。
こいつ……!!!
ぶさけんじゃねーぞっ!!!!
「いい? あたしはあんたに好きなときに電流を流せるの? ……あたしの命令、聞く気になった?」
この野郎……!!!
「……いや、だ、ね……。あん、た、なんか、の、めいれ、い、は、ぜったいに、きか、ない」
ちくしょう、舌が上手く回らねー。でもなんとか喋れている。
ビリビリビリビリビリビリッッッッッッ!!!
視界が白に染まる。
またしても電流が全身を這いずる。あまりの激痛に一瞬意識を失った。
ダメだ、身体の感覚がねー。痺れて言うことを全く聞かない。
「あんた、状況わかってる? 言うこと聞かないと永遠電流流し続けるよ?」
僕を見下すように、蔑むように、朝水は僕に言う。
ふざけんな。誰がお前なんかに従うか。
「……いや、かまわ、ないよ。えいえん、でんりゅうをながして、くれて。ただ、それは、おまえの、くびをしめり、ことにしか、ならないから」
なんとか舌だけなら動くか。
激痛で床を這いずるふりをしながら時間わ稼ぐ。そして、数分してやっと滑舌が元に戻った。
僕は床に転がりながらもなんとか言葉を紡ぐ。致死性の言葉を。
「お前は、このままだと死ぬ。さあ、どうする? 土下座してお願いしたら、お前のお願いを聞いてやるよ」
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