第7話 ペナルティの味

 翌日。

 『にゃっほー。「人気者」と「不人気者」は決まったかにゃー? まあ、君たちのことは常時観察してるから話し合いの顛末は知ってるんだけどねー』

 あれから一夜明け、午前八時。

 昨日と同じくレイユがホワイトボードをスクリーンにして映し出される。

「決まったわ。『人気者』は夜火小奈多。『不人気者』は姫神妃君よ。クラス半数の同意も得たわ」

 朝水が嬉々としてレイユに話す。

 昨日の話し合い、もとい生贄選別で僕は最後まで売れ残った。かといって誰も僕を助けようとはしなかった。僕を助ければ、他に生贄が必要になる。もしかしたらそれが自分かもしれない。なら助けないのが賢明だ。

『わかったヨー。それじゃあ「課題」クリアだね。……約束通り、「ポイント」100ptと「コイン」100枚をあげちゃうにゃ!』

 すると教室の後方にいたホワイトが夜火にタブレットを渡した。

『それを使えば所有「ポイント」の確認と、「コイン」で食料とか「アイテム」とか買えるヨー。買えるものの一覧はそのタブレットに入っている「カタログ」を見ればわかるからー。詳しい説明はホワイトに訊いてにゃー』

 とそこで区切ると、レイユは表情をいつものニヤニヤ笑いから獲物を痛ぶるような残虐的な笑みに変える。

 そして死神は宣告する。

『そんじゃまあ、約束通り、「不人気者」に選ばれた姫神妃君くんにはペナルティでーす♡ 「不人気者」に選ばれた君には「苦痛」をもって代償を払ってもらっいましょー!!』

 それに応じてホワイトが一本の銀色に輝くナイフを持って来た。

 おいおい嘘だろ、まさか……。

『二年四組のみんなには、一人一回ずつそのナイフで姫神くんを切ってもらうにゃー。切り傷の長さは一〇センチ以上! これはキミたちが選んだ結果だ、甘んじて受けろ。……あっ、そうそう。いつまでもくだくだやっててもしかたにゃいから、今から一時間いないに全員終わらせてねー。できなかったらもちろんペナルティーだヨ』

 するとレイユの頭の上にタイマーが表示される。

 60:00。その数字がだんだん減少していく。

 最初他の人の反応を伺うように周りをキョロキョロと見ていたクラスメイトたちだが、だんだん減っていく時間に焦り始める。

 そこでだ。中野がホワイトからナイフを受け取り、僕の方に歩み寄る。僕は不思議と冷静だった。

 そして

「姫神、すまん」

 そう小さくて呟き、僕の左腕の袖をたくしあげて一思いにナイフを突き刺す!

 瞬間あまりの激痛で脳が焼ける。

 鮮やかな朱色が溢れ出す。

 熱い、いや冷たい。

 刺された箇所はバーナーで炙られたかのようにひりひりする。

 痛覚が脳を支配する。

「あがァー!!!! あガァガァわーーー!!!!!」

 遅れてだ。遅れて僕は自分が叫んでいることに気づいた。

「あアァーーーーー!!!!!!!」

————————————————————

 

 中野が僕にナイフを刺したことを皮切りにクラスメイトたちが僕の肌にナイフを突き立てる。

 左腕で切れるスペースがなくなれば、次は右腕。そしてそれでも足りず腹。

 とても立ってはいられず後半から床に座り込んだ状態でペナルティを受けていた。

 脳を焦がすほどの激痛に苛まれる。

 僕が何をしたっていうんだ。

 僕の何が悪かった!!

 なんの取り柄もなく、友達いないことはそんなに悪いのか!?

 ちくっしょう!! なんでこうなったんだよ!!! なんでぼくがこんなめにあわなければならない!!!!

 ころす! ころす!! いや、ころすだけじゃたりない。じごくをみせる。

 ぼくをきりすてたやつらも、ぼくをみすてたやつらも、ぼくをみごろしにしたやつらも、そもそもこんなくだらないげーむをしくんだやつも!! ぜんいんぼくいじょうのくつうとくつじょくをあたえる!!!


 



 

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