第2話 断頭台に上る準備

 『レイユちゃんのー、簡単なルール説明ー!!』

 ふざけた掛け声と同時に、ホワイトボードの余剰スペースに次の説明が表示される。



①レイユちゃんから出題される『課題』をクリアしてね♡

②『課題』をクリアするとごほーびに『ポイント』と『コイン』をあげゾ

③『課題』をクリアできないとポイントは減っちゃうゾ。もしポイントを全損0にしたら、ミナゴロシ☆


『課題』……一週間に一つ出題されるゾ。内容はイロイロ! きっと楽しいよ!!

『ポイント』……1000pt貯めれば、みーんな現実世界に帰れるゾ。初期ポイントは100pt!

『コイン』……これを消費して、『アイテム』や食料を買えちゃうゾ

『アイテム』……『課題』クリアを助けてくれるゾ



『何か質問はあるかにゃ? レイユちゃんが答えられる範囲で答えちゃうっ! あっ、でもー、私に関する質問と、現実世界に返せーとかの抗議は受け付けないからね〜。あと、念のためにご忠告。ここでの死=現実世界での死だからね〜』

 まるで問題の解説をするくらいの気軽さでゲームマスターを名乗る女……レイユはデスゲームのルールを説明する。

 だが当然、運営レイユそれでいいかもしれないが、僕たちプレイヤーにとってはそうじゃない。そんな簡単な調子で、納得はできない。

 そもそもここが仮想空間だという話も正直リアリティーがない。

「おいっ、どういうことだよっ! デスゲームってなんだよっ!? 俺はそんなものに参加しねえぞっ!!」

「そうよっ! 早くお家に帰してよっ」

「帰せー!!」

「帰らせろー!!!」

 クラスメイトたちはホワイトボードのレイユに向かって口々抗議し始めた。

 まあ、そうなるだろう、こんな状況。なんかの冗談だと思うし、皆殺しって脅しも信じないに決まってる。

『あー、もううるさいなー。私、言ったよね? 抗議を受け付けないって。だーかーらー、人の言うこと聞かないおバカちゃんたちにはお仕置きだゾ?』

 パンっ!

 パンっ!

 スイカが内側から破裂するような小気味いい音が二回。

 クラスメイトたちは、最初その音の正体に気づかなかった。いや、気づきたくなかった。

 さっきレイユに抗議した生徒のうち二人。体格のいい短髪の男子と、制服を着崩したポニテの女子。二人の頭が内側から爆ぜたのだ。

 赤い花束が散る。

 二人は先頭の席にいたため、一番後ろのボクは幸い血飛沫を浴びずに済む。だが、近くにいた人たちは顔に制服に赤を纏う。

 誰かの悲鳴が聞こえた。いや、一人じゃなくて複数人のものか。まあ、この状況なら仕方ないな。

 だが、

『うるさいっー! これ以上うるさくするなら、みんなブッコロスヨ?』

 レイユの狂気と冷気を孕んだ一言で場が鎮めた。

『キミたちの首につけられてるそのチョーカーは爆弾だから。……無理に外そうとしない方がいいよー。シロートがテキトーに弄って内部センサーバグらせれば、身体と頭がバイバイしちゃうゾ☆ 』

 ウィンク付きでそう解説される。

 どうやら僕たちは彼女の、もしくは彼女らのデスゲームに付き合わなければならないらしい。

『話戻るけど、質問とかないよね? てかもう答えないケド。……じゃあ、さっそく最初の「課題」を発表しまーすっ!!』

 先程進行を邪魔されたせいか、レイユは若干不機嫌だった。人二人殺しておいて、若干不機嫌になる程度。常人とは感覚が違いすぎる。そこには躊躇はもちろん、快楽や愉悦もない。仕方なく殺すわけでも、楽しんで殺すでもない。道端のゴミを捨てるような気軽さで人を殺す。

『みんなー、準備はいいかなあー? 最初の「課題」発表するよー。最初の「課題」は「人気投票」!!』

 

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