第3話
「こんにちは、お嬢さん」
透明人間が、気さくに話しかけてくる。
「こちらこそよろしく。僕は
そう言いながら、彼はコートと帽子を脱いだ。なるほど、この姿ならば、透明人間というよりミイラ男っぽく見える。
「……あっちが狼男の
月球儀を手にした毛むくじゃらは、挨拶の意味で小さく頭を下げた。紹介されても何も言わないのだから、かなり無口な人物に違いない。
「それで、お嬢さんは、確か吸血鬼のはずだよね……?」
「はい、吸血鬼です!」
ニカッと歯を見せて笑う。バイト採用の決め手になった、特徴的な八重歯を誇示したのだ。
しかし、
「おやおや、かなり小柄な牙なんだね」
山本さんには、あまり受けなかったようだ。
確かに役作りとしては、山本さんのミイラ男も田崎さんの狼男も、バッチリの扮装だった。二人に比べれば、私の吸血鬼は物足りなく感じられるのだろう。
「大丈夫です。こういうアイテムも用意してきました」
鞄の中から取り出したのは、吸血鬼の牙を模した仮装用グッズ。コスプレショップで買ってきたものだ。
それを口に装着すると、より吸血鬼らしくなった。
「なるほど、つけまつげとかエクステとか、そんな感じだね」
「はい。他に着替えも用意してあるので……」
衣装は自前と言われていたので、吸血鬼のイメージに合わせて、黒いドレス持参で来ていた。更衣室がないのであれば、ここで着替えるしかないのだが……。
「ああ、そうか。じゃあ僕たちは、ちょっと席を外すよ。ドアの外で待っているから、終わったら出てきてくれ」
ミイラ男の山本さんは、私の意を汲み取ってくれて、狼男の田崎さんを連れて部屋から出ていく。
一人残された私は、急いで仮装を済ませるのだった。
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