SIDE:杏樹
先輩と連絡先、交換しちゃった。
ていうか、先輩て、なんなんだろう。
今まで注意深く行動して同級生にばれないように注意してきたっていうのに、どうして先輩には、私のこと知られっぱなしなんだろ。
ぜんぜん嫌じゃないわけ、だけど。
でも、アクション教室のことも知られたから、これで先輩に隠し事しなくて済んだわけだし……って、なんで私、安心してるんだろ。
ああもう、なんなのよ、この気持ちはっ。
私は通行の邪魔にならないように脇に寄ると、アプリを開く。
今さっき交換した、先輩のID。
友人や親のに混じった、片岡景というユーザー名。
意味もなく、その名前を指でなぞる。
先輩……。
その時、スマホがメッセージの新着を知らせる。
「っ!?」
驚くあまり、危うくスマホを落としかけたが、どうにかキャッチする。
――今日はびっくりさせてごめんな。でも、俺は杏樹の夢、応援してるってのは本心だから!
先輩からの初メッセージ。
私は文章を打ち込んでいく。
クラスメート相手にはあっさりとした文面ばかり打ち込んできたせいか、なかなか悪戦苦闘しつつ、文章を完成させる。
――ひとまず、今週までに8話まで履修していてくださいねっ!
感想をじっくり聞かせてもらいますから!
ドキドキしながら、それだけのメッセージをどうにかこうにか、打ち込んだ。
時計を確認すると、この一文を打ち込み終わるまでに、三十分がすでに経過していた。
何度も繰り返し目を通して、気持ち悪い文章になってないかをチェックしてから、恐る恐る送信する。
「ふぅ……」
下手なトレーニングよりもずっと体力を使った。
すぐに返信が届く。
――了解!
短い文章だけど、頬がゆるんだ。
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