SIDE:杏樹

 私みたいな面白みのない後輩と話したがるなんて、あの先輩、結構な変人?

 私がどうして変人と思っているような人と話したりするのか。

 やっぱり、私のフォームを綺麗だって褒めてくれたからなのかなって、振り返って思う。

 だって普通だったら、変な奴、危ない奴で終わりでしょ?

 我ながら、自分が真っ当なことをしてるとは思ってないし。

 頭のおかしい後輩に遭遇した、関わり合いにならないようにしようって言うのが一般的な反応でしょ。

 でも私に嫌がられながらも、それでも私と話したいって言ってくれる……。

 うーん。やっぱり先輩は変な人だ。

 ……先輩になら、話してもいいかなって、つい思っちゃう。

 理解してくれなくても構わない。引いたり、馬鹿にしたりせずに、話を聞いてくれるかもしれない、って。

 でもそう思いかけて、冷静になれ――そう自分に言い聞かせる。

 そこまで何の意味もなく心を許しちゃ駄目。

 だって私は先輩のことをほとんど知らないんだから。

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