第27話 三島の禁煙論
翌朝は佐伯の話にうんざりするようにして外へ飛び出した。そして仁和子に三島さんを見舞いに行きたいご都合は
追いついた彼女に景山さんとの今までの経過を説明した。景山さんに付いては、彼女は倉島と三島に依って尽力していると思っている。昔部下だった峰山の為だとは思ってないし、仁和子も峰山と景山の関係はまだ知らない。
話さないのは此の二人をサプライズで会わそうと思っていたからだが、既に景山は交渉の過程で知ってしまった。その景山さんも手ぶらでは峰山と会いにくいと思いまだ会ってない。三島と倉島も松木との成り行きが気になり、まだ仁和子には云ってない。
景山さんご自身が赴任する前のことで、骨を折ってくれるなんていい人ですね、と仁和子に言われても、曖昧な返事に終始して、病院へ着いて倉島はホッと一息ついた。
「三島さん退屈しているでしょうね糸が抜けるまではあんまり自由に歩けないから」
「だからこうして見舞ってやらないと特に病室は禁煙だから」
「アラッあの人煙草吸うなんて知らなかった」
ウッしまった。これは彼女には秘密なんだ。
「いやそんなに吸わないんだ。殆ど偶にしか吸わないんだ」
と彼を賢明に擁護すると、別に
仁和子と一緒に四人部屋に入ると、まるで示し合わせたようにやって来た二人に三島はおやっと変な顔をされた。
彼女は昨日は夜勤で今朝はどうやら三島を見舞ってから帰る予定だった。朝は夏の寝起きの太陽がまだ本格的な活動を控えていたが、それもつかの間で病院へ着く頃には汗ばんで来る。
彼女は部屋へ入ると同居の中年患者達が「新入りの盲腸患者のお陰でこの部屋も少しは華やいできた」と若い娘をチヤホヤするように迎えてくれる。
彼女は軽く会釈しながら白いワンピースの裾を揺らして三島のベットの前ヘやって来る。倉島が備え付けの丸椅子を二つ用意した。そこでメールで呼び出してる最中に出会った一件で三島に笑われてしまった。
ホテルの前の池は遮る物の無い夏の太陽が、水面にギラギラと反射させてリゾート気分にさせるのに何なのあの
仁和子は夜勤明けで自宅に戻らずに来てくれた。三島にすれば熱心に見舞いに来てくれるのは有り難いが、その根拠がお兄さんの真相に付いてなだけに手放しで喜べない。だからさっそく状況を聞かせた。
ふんふんと頷くだけで何の質問もしない。どうやら大体の処は倉島から聞かされているらしい。倉島もそうだと言う表情を見て、三島はまあそんなところだと後は代理が帰ってくるまで果報を待つしか無いと兄への関心を期待紛させた。
「それで峰山さんには内緒にしているのね」
と言いながらその景山代理のサプライズが楽しみだと仁和子も期待を膨らませている。
「それより三島さんって煙草を吸うのね」
これにはエッ! て三島は驚いている。
「そんな顔しなくてもうちの周りには結構煙草吸う人が多いから気にしてないわよ」
そう謂われて三島はホッとしたようだ。
「そうだあの事務所の佐伯さんも結構吸っているね」
三島に言わすとどうもニコチン仲間らしい。それであの施設での情報は佐伯を通じて仕入れていると解った。
「なんせどこも禁煙だらけだから煙草が吸いたい時はどうしても佐伯さんとばったりと会うんだ」
「中々みんな喋りにくそうなのが不思議だったけれど。それで布引さんや仙崎さんなんかの入居者にも詳しいのか」
肩身の狭い者同士がいつも同じ喫煙場所で顔を合わせているとどうも入居者の話に成るらしい。
「でも吸えない時はどうするの」
「オイオイ、ニコチン中毒じゃあ無いんだぜ別に吸えなくても大丈夫だそれが証拠に入院してからずっと禁煙中でも普段と変わらんだろう」
其れもそうだと倉島は納得したが、喫煙友達の佐伯さんはどうだろうと訊ねた。
「そんな変な友達じゃあない! 。まあ、でもあいつと会う時はいつも煙草を吸いながらだけどそんなヘビースモーカーではないが、それがどうかしたか?」
そこで倉島は昨日は佐伯が禁煙すると膝頭を指で小刻みに叩いているのを話した。
「それは違うだろう。だって普通の人間だってイライラすればその貧乏揺すりみたいな事はするだろう」
「でも佐伯さんの場合は少し違った」
「それは倉島さんが云うイライラする煙草の禁断症状じゃあないよ。多分やましいことが心の中で惹起しているんだろう。それを誤魔化してる時に指先が勝手に反応している」
と三島は禁煙禁酒の禁断症状は小刻みに指が揺れても叩くことは無いと断言した。
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