第4話 8歳
8歳、ついに俺は魔力に目覚め、魔法を使う事が出来るようになった。
「はぁっ!」
両手に握りしめた剣を丸太へと思い切り振り下ろす。
刃は丸太を捉え、そのままの勢いで真っ二つに叩き割った。
俺が使えるようになった魔法は
直接的に相手に何かをするような魔法ではなく、自分自身の能力を強化する事に特化した魔法だ。
この魔法が単体で強いという事はないが、近接戦を主体とする剣士を始め、射手や魔法使いでもこの魔法が使えるか使えないかで差が出ると言われる重要な魔法だ。
強化魔法を最大限に活かす為にも毎日のトレーニングは欠かせない。
他にも栄養素を意識した食事、適度な休息。必要な量の筋肉を鍛え、無駄を省く。
鏡を見ながら剣筋をチェックし、実際に物を斬ってその手ごたえや剣の指南書を参考に改善点をノートへと書き出していく。
「今日も剣のお稽古?」
「うん。いざって時の為にもしておいた方がいいだろうからね」
「パパが帰ってきたら驚いちゃうかもしれないわね」
体が成長したおかげもあってか、剣士としての腕はそれなりに伸びたように思う。
小さな村であるせいで、今の俺がどの程度の実力なのかを知る事は出来ないが、きっと平均以上の実力はある……そう思っておこう。
俺の父は殆ど家に顔を出すことが出来ない。
彼は衛兵の職についており、今は首都で城の警備を担当しているのだそうだ。
それならばこんな辺鄙な村ではなく俺達も首都へ引っ越せばいいと思うのだが、どうやら任期が決まっているらしく、来年にはここから近くの街であるヘルテイ勤務に戻るのだそうだ。
「ママ、出来れば今度は盾が欲しいな」
「あら、盾も使うつもりなの?」
「うん。そっちの方が戦いやすそうだしね」
この世界の文献では両手武器を1本担ぐか、片手に盾を持つかは著者によって評価が分かれるところだ。
盾を持つ事で強力な一撃も無効にし、その隙に一撃を叩き込めるという説と、両手武器による圧倒的な破壊力で盾ごと粉砕してしまうという説。この二つの水掛け論となっている。
魔法に関しても避けてしまえばいいだとか、弾けばいいだとか、叩っ斬ればいいだとか、防ぎきれるだとか、読んでいて少しうんざりしそうになるほどだ。
「お前もその問題に直面したか……ま、最終的に自分が納得できるやつが正解さ。ぶっちゃけ勝てればいいってのが結論だからな」
前に帰ってきた父の答えはこれだった。
色々と考えて面倒になった俺が出した答えは、ある意味でありきたりなものだった。
――いざ破壊力が必要になれば、盾を投げ捨てるなりして両手で持てばいい。
これに限る。必要ないと思えばその辺に置いておけばいい。
その為には両手剣を無理やり片手で振るえるようにならなければならない。というのが欠点だろう。しかし、その欠点をどうにか出来るのが強化魔法だ。
順当に事が進めば14歳で冒険者となる資格を取るための試験を受けられるようになる。
折角鍛えた体と技術。そして銃というものを実際に手にする為の手段として冒険者になるというのは合理的だろう。
もっとも、ドワーフの鍛冶師と出会えるか。さらにそこから銃について興味を持ってもらえるかどうかが課題ではあるのだが。
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