第22話 モモカって、誰ですか?アイドルの世界にもある、出来レースっていう言葉は、嫌な響き。でも、リアルな言葉らしい。良い方向に、祈ります。

 そのテニス部で、あるうわさが、広められてしまった。

 「ほら…あの子」

 「リュウザキさんのこと?」

 「そうそう」

 「あの子、ムナカタ君のことが、好きみたいだよ?」

 「あ、そのうわさ。私も、知ってる」

 私の恋が、いじられて。

 そのうわさが広められると、すぐ…。女子部員を中心に、別のからかいがはじまった。

 ちょっとした、すれ違いで…。

 ムナカタ君との関係も、悪くなっていった感じ。

 どうして、この世には、うわさ話っていうものがあるんだろう?

 「…でさ」

 「何?」

 「レイカには、内緒だけどさ」

 「うん」

 「ムナカタ君って、ついに、レイカを、捨てちゃったらしいよ?」

 「マジ?」

 「かわいそ」

 いじられて。

 いじられて。

 私は、どんどん、追い詰められていった。

 「…レイカも、かわいそうにね」

 「乗り換えられちゃったんだ」

 「ケータイ、みたい」

 「言うなって」

 「で、誰に乗り換え?」

 「他校の子」

 「どういう子?」

 「アイドル志望の子、だっていう」

 「SNS交際?」

 「何て子?」

 「モモカっていう名前の子、らしいよ?」

 「モモカ?」

 「うん」

 「ツインテールで、歌っているんだって」

 「ありゃ、ありゃ」

 人生って、何だか、出来レース。

 出来レースっていうのは、何かの力で、はじまる前から、勝敗が決まっているレースのことだ。

 「アイドルオーディションには、有力候補の女の子っていうのが、いたりして」

 その、モモカっていう子も、出来レースのアイドルだったり。

 ネットで、確認してみた。

 オーディションの審査員は、全部で、5名になるらしかった。

 「どうか、うちの新人を、お願いします」

 「…」

 「この金で、お願いしますよ」

 「…」

 「うちの子がステージに立てれば、お宅の事務所も、助かるんじゃないですか?」

 「…良いでしょう」

 なんてことが、ないように!

 祈ります!





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